改訂新版 世界大百科事典 「渋沢元治」の意味・わかりやすい解説
渋沢元治 (しぶさわもとじ)
生没年:1876-1975(明治9-昭和50)
電気事業(発送電)を推進した電気行政官,電気工学者。名古屋帝国大学創設にあたり初代総長となった。埼玉県に生まれ,渋沢栄一の甥にあたる。1900年東京帝国大学電気工学科を卒業した。02年から06年まで外遊し,ドイツのジーメンス社,スイスのチューリヒ工科大学,アメリカのGE社の実習生,聴講生となった。帰国後は逓信省電気試験所に勤務し,19年から逓信省電気局技術課長となり,電気事業,電気技術の監督行政に従事した。なかでも,1909年および18-23年の水力電気調査は,基礎資源の調査としてそれまでになかった事業であり重要である。電気規格の標準化にも熱心で,1910年にはIEC(国際電気工芸委員会)の国内委員会を設立した。東京帝国大学電気工学科教授を併任し,24年から東京帝大教授専任となった。のち同工学部長,名古屋帝国大学総長となり,大学行政にも力をつくした。電気学会会長をつとめ,また日本人として初めてアメリカ電気学会副会長にも選ばれた。55年に文化功労者に選ばれた。
執筆者:高橋 雄造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報