渋柿(読み)しぶがき

精選版 日本国語大辞典 「渋柿」の意味・読み・例文・類語

しぶ‐がき【渋柿】

[1] 〘名〙 (「しぶかき」とも)
① 熟柿になってはじめて甘く、それまでは渋い味のするカキ。果実のタンニン細胞内の渋味物質が不溶性物質にかわらない種類。さわし柿や干柿にして食べ、また柿渋をとる。会津身不知(あいずみしらず)西条、葉隠(はがくし)、平核無(ひらたねなし)、四溝(よつみぞ)などが知られる。《季・秋》 〔塵芥(1510‐50頃)〕
※虎明本狂言・成上り(室町末‐近世初)「しぶかきがじゅくしになりまする」
② (①を食べた時のさまから) 気むずかしいこと、面白くないことにたとえていう。
咄本・無事志有意(1798)星「渋柿(シブガキ)のよふな面のを何だと聞たら」
③ (渋のぬけないことにかけて) 上達しないこと。また、あかぬけないこと。また、その人。
[2] 俳句雑誌。大正四年(一九一五)二月、松根東洋城創刊主宰。俳句は写生以外にあり、芭蕉を宗とし、俳諧を道とするという、人間修行としての俳諧道を提唱する。

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デジタル大辞泉 「渋柿」の意味・読み・例文・類語

しぶ‐がき【渋柿】

《古くは「しぶかき」とも》実が赤く熟しても渋みの抜けない柿。さわし柿干し柿にして食用、また、柿渋原料とする。 秋》「―の滅法生りし愚かさよ/たかし
[補説]書名別項。→渋柿
[類語]富有柿次郎柿平核無甘百目黒柿甘柿

しぶがき【渋柿】[書名]

日本の俳句雑誌。大正4年(1915)、松根東洋城の主宰により創刊。昭和27年(1952)から昭和51年(1976)までは門下の野村喜舟が主宰。以後主宰者を変更しながら現在まで刊行が続く。

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改訂新版 世界大百科事典 「渋柿」の意味・わかりやすい解説

渋柿 (しぶがき)

鎌倉時代の説話書状4種を収録した一種の教訓書。編者未詳。応仁(1467-69)以降,室町時代末ごろの成立。(1)明恵上人伝,(2)文覚上人消息(将軍源頼家あて,正治2年(1200)正月ごろ),(3)(源)頼朝佐々木被下状(近江守護佐々木定綱あて,建久2年(1191)閏12月28日),(4)(北条)泰時御消息(子息六波羅北方探題北条時氏あて,安貞2-寛喜2年(1228-30)正月17日)の4種。(1)は明恵上人伝より泰時関係説話を抄録したもの。(2)~(4)はいずれも書状の中に治世修身の心得を懇切に説く。(1)(2)は単行の写本があるが,(3)(4)は本書に限られ,内容も信頼すべき貴重なものである。ことに(3)は《吾妻鏡》の逸文である。編者の意図は京・鎌倉の朝幕関係の中で生まれた治政の要道となるものを収録したのであろう。万治(1658-61)ごろの刊本に(1)の中の明恵の言葉をとって《詞不可疑(しぶがき)》と命名したが,難解なため《渋柿》の名で行われ,《群書類従》がその名で収録したため定着したが,もとは無題か。良写本がなく,字句に若干後代の改変があろう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「渋柿」の意味・わかりやすい解説

渋柿
しぶがき

1巻。編者,成立年代未詳。次の4つを収める。 (1) 『明恵上人伝』 明恵の伝記と,彼と鎌倉幕府の執権北条泰時とのエピソードを記したもの。 (2) 『文覚上人消息』 文覚が将軍源頼朝にあてた書状。 (3) 『頼朝佐々木被下状』 建久2 (1191) 年閏 12月 28日付,頼朝が佐々木定綱にあてた書状。定綱の子定重の死を弔ったもの。 (4) 『泰時御消息』 北条泰時が京都六波羅在住の子時氏にあてた書状。武士としての心構えを説いたもの。『群書類従』所収。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「渋柿」の意味・わかりやすい解説

渋柿
しぶがき

「明恵上人(みょうえしょうにん)伝」「文覚(もんがく)上人消息」「頼朝佐々木被下状(よりともささきにくださるるのじょう)」「泰時(やすとき)御消息」の4編を収める教訓書。1巻。編者、成立年代ともに不明。『群書類従』に収められている。書名は、本書の内容と無関係で、明恵上人伝中の「聖賢の詞不可疑(しふかぎ)」云々(うんぬん)とあるによる。明恵伝は、明恵と北条泰時との逸事を記したもので、明恵の仏教者としての高潔な人格を説き、文覚消息は源頼家(よりいえ)に奉った書状で治国の要道を説き、頼朝状は、子を失った臣佐々木定綱(さだつな)への教喩(きょうゆ)を内容とし、泰時消息は武士の心構えを説いている。

[森田 悌]

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世界大百科事典(旧版)内の渋柿の言及

【カキ(柿)】より


[品種]
 品種数はすこぶる多く800以上といわれ,果実の形状も大きさも変化に富んでいるが,営利栽培に適するものは多くない。甘柿と渋柿に大別され,さらに渋の抜けかたにより,完全甘柿と不完全甘柿,完全渋柿と不完全渋柿に分けられる(表参照)。ただし不完全渋柿である平核無(ひらたねなし)にはふつう種子がないので果肉に褐斑がなく,品質が優秀で渋柿の代表品種となっている。…

【柿渋】より

…渋柿から得られる防腐性の液で塗料,染料に用いられる。製法は渋みの強い柿を臼でつき,それを樽詰めにして,冷暗所に蓋をして静置すると,発酵し泡立つ。…

※「渋柿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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