(読み)すむ

精選版 日本国語大辞典 「済」の意味・読み・例文・類語

す・む【済】

[1] 〘自マ五(四)〙
① 物事が終わる。完了する。できあがる。成る。物事が決着する。かたづく。
徒然草(1331頃)一三七「車どものらうがはしさもすみぬれば」
※虎明本狂言・文荷(室町末‐近世初)「たがひに其やうにいふてはすむ事があるまひ」
セルロイドの塔(1959)〈三浦朱門〉一「飯はすんだ?」
② 物事が十分に行なわれる。十分まにあう。足りる。
※虎明本狂言・右近左近(室町末‐近世初)「某がでてすむ事ならはでふが」
※良寛歌(1835頃)「君と我れ僅(わづか)の米ですむだらば両くゎん坊と人は言ふらむ」
③ 借り物、借金などがすっかり返される。返済が完了する。
※御湯殿上日記‐永祿五年(1562)八月一日「ふな木の御れう所三千疋まいる。これにてなかはし御とりつきの御色なをしの御かりものすむ」
④ 気持の上で満足する。気持がはれる。気にいる。納得する。
※玉塵抄(1563)二二「使はもちいるとよむか、しむるとよむか、さなければ心がすまぬぞ」
仮名草子仁勢物語(1639‐40頃)上「喜びて待つに、度々嘘なりければ『君来むと鳴きて夜毎に狐とも狸とも身をなしつつや寝ん』と云けれど、男すまぬかほなりけり」
他人に対して義理がたつ。申しわけがたつ。ふつう、否定反語を意味することばを伴って、他人に対して、許しをこい、あやまる際に用いる。
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)二「コレすまねへぞすまねへぞ。あんなごまのはいに、やどをかすからにゃアこなたもうはまへを取だろふ」
坑夫(1908)〈夏目漱石〉「『や、済(ス)まない』と云ひながら、何の苦もなく一番上の奴を取って頬張っちまった」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒すめる(済)

すま・す【済】

〘他サ五(四)〙
① そのことをなしおえる。済むようにする。はたす。
※随筆・槐記‐享保九年(1724)四月二九日「其方拾芥抄を見られたるや、尽く済されたるやと尋ぬ」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「明日の支度はもう済して仕舞ったものを」
② (他の動詞の連用形について) そのことをうまくなしとげる。まんまとそのことに成功する。→澄ます
曾我物語(南北朝頃)二「継母は訴へすましぬるよと嬉しくて」
史記抄(1477)一五「欽若が上の 厭兵ことを知すまいて」
③ 借りを返す。返済する。返金する。
塵芥集(1536)九五条「しちにかき入候しよたい、余人にたんかうせしめ、永代うり、かのしやくせんをすまし候に付ては、是非にをよはす」
④ その場はそれでよいことにしておく。まにあわせる。
※滑稽本・古今百馬鹿(1814)上「コレ他人まぜずならすましもせうが、他(ひと)さまが聴いてござるに、へぼといはれては了簡がならねへ」

な・す【済】

〘他サ四〙
① 税・課役・料金など、支払わなければならないものを、残らず支払う。完納する。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「我れ一身のみして、而も堪へて済(ナシ)(はた)さむや」
※宇治拾遺(1221頃)七「なすべき物のさたなどいひさたして、四五日ばかりありてのぼりぬ」
② 特に、借りたものを返す。
日葡辞書(1603‐04)「ヲイモノヲ nasu(ナス)
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)初「先の世に借りたをなすか今貸すかいづれ報ひのありと思へば」

す・める【済】

〘他マ下一〙 す・む 〘他マ下二〙
① ものごとを終わらせる。完了させる。決着をつける。済ます。
※羅葡日辞書(1595)「Decisio〈略〉クジヲ sumuru(スムル) コト ナリ」
② 気持を十分に満足させる。気持をはらす。納得させる。多く自動詞的に納得するの意で用いられる。
洒落本・陽台遺編(1757頃)秘戯篇「どふもすめぬ事が」
歌舞伎お染久松色読販(1813)中幕「『アイアイ』トすめぬ顔して、猫をさすって居る」

すみ【済】

〘名〙 (動詞「すむ(済)」の連用形の名詞化)
① 終わること。すむこと。すんだこと。
② 借りたものをすっかり返すこと。

すま・せる【済】

〘他サ下一〙 =すます(済)①③④「朝食を済ませる」「返済をすませる」

なし【済】

〘名〙 (動詞「なす(済)」の連用形の名詞化) 済(な)すこと。かえすこと。返済。

ずみ【済】

〘語素〙 名詞に付いて、その事がすんでしまったことの意を表わす。「検査済」「契約済」「支払い済」など。

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デジタル大辞泉 「済」の意味・読み・例文・類語

さい【済〔濟〕】[漢字項目]

[音]サイ(呉) セイ(漢) [訓]すむ すます すくう なす
学習漢字]6年
〈サイ〉
助ける。すくう。「済世さいせい済度済民救済共済経済けいざい
しあげる。すます。「皆済既済決済返済弁済未済
〈セイ〉多くそろってりっぱなさま。「多士済済
[補説]の「済済」は「さいさい」とも読む。
[名のり]お・かた・さだ・すみ・ただ・とおる・なり・なる・まさ・ます・やす・よし・わたる
[難読]し崩し

せい【済/歳】[漢字項目]

〈済〉⇒さい
〈歳〉⇒さい

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「済」の解説


せい

「宋書」倭国伝に記される倭の五王の1人。5世紀半ば頃の王で,興(こう)と武(ぶ)の父。2番目の珍(ちん)との続柄が記されていないことから,系譜のうえでつながらない可能性がある。名前からは積極的な根拠がないが,記紀系譜との比較からみて允恭天皇である可能性が強い。反正(はんぜい)天皇とする説もある。443年,中国南朝の宋に遣使して太祖文帝から安東将軍号を与えられた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「済」の解説

せい

倭王済(わおう-せい)

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旺文社日本史事典 三訂版 「済」の解説


せい

5世紀に中国南朝に朝貢した倭の五王の一人
『日本書紀』にみえる允恭 (いんぎょう) 天皇にあてることにほとんど異論がない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「済」の意味・わかりやすい解説


せい

倭の五王」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【倭の五王】より

…讃の死後,弟の珍が立ち,438年,使者を派遣して国書を送った。珍はこの国書の中で,使持節・都督倭百済新羅任那秦韓慕韓六国諸軍事・安東大将軍・倭国王と自称して,この官爵号を授けて欲しいと願い出た。しかし,この希望はかなえられず,安東将軍・倭国王に任じられるにとどまった。…

※「済」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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