清平山堂話本(読み)せいへいさんどうわほん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「清平山堂話本」の意味・わかりやすい解説

清平山堂話本
せいへいさんどうわほん

中国、明(みん)代の口語短編小説集。洪楩(こうべん)編。1541~51年ごろ成立。編者蔵書家で知られた人で、その収集した宋元(そうげん)代の話本を「雨窓」「長燈(ちょうとう)」「随航」「欹枕(きちん)」「解閑」「醒夢(せいむ)」の6集、各10編にまとめ、版心(紙の折り目の部分)に「清平山堂」という洪氏の書斎名を入れて出版した。そのうち日本の内閣文庫(現国立公文書館所蔵)に残存していた15編をまとめて翻刻した書を『清平山堂話本』とよぶ。題材怪談恋愛裁判、歴史物語など多岐にわたるが、編者は出版にあたってほとんど校訂・増改の手を加えておらず、都市の盛り場で流行した講談のテキストの古い形をよくとどめ、素朴な講釈師語り口をそのまま伝えていて、宋元時代の民情をよく反映したものが多い。なお、中国でほかに14編が発見されており、そのうち「雨窓集」「欹枕集」に属する12編がまとめて『雨窓欹枕集』の名で翻刻されているが、『清平山堂話本』の称は、それらすべてを含む名称として用いられることもある。

[今西凱夫]

『入矢義高訳『清平山堂話本』(『中国文学大系25 宋元明通俗小説選』所収・1968・平凡社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「清平山堂話本」の意味・わかりやすい解説

清平山堂話本 (せいへいさんどうわほん)
Qīng píng shān táng huà běn

中国の短編小説集。明の嘉靖期(1522-66)に洪楩(こうべん)によって出版された。清平山堂は洪楩の書斎名。元来60編あったはずだが,残片をも含めて29編のみ伝わる。内容は恋愛物語,怪談,史談など多彩で,宋代の講釈師による講談の筆録,すなわち話本の形態をほぼ忠実にとどめる資料として貴重である。うち11編は同じ話が,のちの《三言》(三言二拍)などの小説集にも収められている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「清平山堂話本」の意味・わかりやすい解説

清平山堂話本
せいへいさんどうわほん
Qing-ping shan-tang hua-ben

中国,明代の短編小説集。洪べん (こうべん) の編。嘉靖 20 (1541) ~30 (1551) 年刊。洪べんは蔵書家であったという以外は経歴未詳。清平山堂はその室号。もともとは『雨窓』『長灯』『随航』『欹枕 (きちん) 』『解閑』『醒夢』の6集,各集 10編の計 60編。その後散逸し,1928年日本の内閣文庫で 15編,1933年中国で『雨窓』『欹枕』2集中の 12編,1936年中国で2編が発見され,現在計 29編が残っている。宋代以後,都市の盛り場で流行した講談のテキストを出版したいわゆる話本集の最古のもの。内容は怪談,恋愛,裁判,歴史など多岐にわたり,洗練されていないが素朴で講釈師の語り口をそのまま伝え,また当時の民情をよく反映したものが多い。

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百科事典マイペディア 「清平山堂話本」の意味・わかりやすい解説

清平山堂話本【せいへいさんどうわほん】

中国,明代の短編小説集。1541年ころ清平山堂の主人洪【べん】(こうべん)編刊。宋・元以来の〈話本〉を覆刻したもので,もと6集60編。現存29編。史伝,怪談,恋愛や裁判ものなど内容は多岐にわたり,いずれも都市市民の感情を反映する。《雨窓欹枕(きちん)集》として出版されたものは6集の中の2集。

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世界大百科事典(旧版)内の清平山堂話本の言及

【口承文芸】より

…やがてそれらは,明代になって作家の手によって文字に整理され,こうして《三国志演義》120回(羅貫中),《水滸伝》120回(施耐庵(したいあん),羅貫中),《西遊記》100回(呉承恩)の,中国の代表的な長編読物(章回小説という)が出現した。 〈勾欄〉における短編の物語を集録したものには,《京本通俗小説》《清平山堂話本》《雨窓欹枕集》《熊竜峯四種小説》などがあり,やがてはそれらが文字としても整理されて,明代の《三言二拍》《今古奇観》になって今日に残されている。明から清にかけては,とくに江南に〈陶真〉という盲目の琵琶語りの芸人が出現し,孟姜女の話や,白蛇伝の話を伝えてきた。…

※「清平山堂話本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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