化学辞典 第2版 「混成電極電位」の解説
混成電極電位
コンセイデンキョクデンイ
mixed electrode potential
混成電位ともいう．いくつかの異なる電極反応が同一の電極面上で同時に起こっており，かつ電極-溶液界面を通して正味の電流が流れていない場合，その電極の示す電極電位を混成電極電位，あるいは単に混成電位という．この場合，電流ゼロの条件は，電極反応の平衡状態には対応せず，その電極面で進行するすべての電極反応に伴う部分電流の総和がゼロに等しいという条件に対応する．したがって，混成電極電位は単純電極の平衡電極電位とは本質的に異なるものである．とくに金属の酸溶解あるいは腐食の研究に重要な概念である．たとえば，鉄の酸への溶解を考えると，これは次に示すアノード反応とカソード反応からなる．
Fe → Fe2＋ ＋ 2e，2H＋ ＋ 2e → H2
この系を外部電源を用いて分極し，上の二つの反応の電流-電位関係(部分分極曲線)が分離して求められたとすると，上の二つの部分電流が等しくなる電極電位，すなわち混成電極電位と，その速度(すなわち，腐食速度)が求められる．これが腐食速度の電気化学的推定法である．
出典 森北出版「化学辞典（第2版）」化学辞典 第2版について 情報