日本大百科全書(ニッポニカ) 「消化薬」の意味・わかりやすい解説
消化薬
しょうかやく
胃腸の消化機能を高め飲食物の消化を助ける薬剤で、胃腸障害、消化不良、食欲不振に用いられる。消化酵素製剤を主とするが、消化液の分泌を促進する胃腸機能賦活(ふかつ)剤もある。
消化酵素として医薬用に使用される酵素は、デンプン分解酵素(アミラーゼ)、タンパク分解酵素(プロテアーゼ)、脂肪分解酵素(リパーゼ)、繊維素分解酵素(セルラーゼ)である。その起源は、ジアスターゼ、パパインに代表される植物性のもの、パンクレアチンやペプシンに代表される動物性のもの、タカジアスターゼやビオジアスターゼに代表される微生物性の3種に大別される。
酵素には至適pHがある。たとえば、ジアスターゼは6.2であるが、胃液のpHは1.0と強酸性であり、ジアスターゼは胃液内では不活性であるため、制酸剤の併用を必要とする。このため耐酸性の酵素製剤が微生物を起源として開発された。サナクターゼ(至適pH約4.3)がその最初のものである。一方、膵臓(すいぞう)酵素であるパンクレアチンは、至適pH6.8~8.5とアルカリ側にある。酸性の胃で働く酵素と、アルカリ性の腸で作用する酵素をいっしょに服用することの不合理を改善するため、アルカリ性で作用する酵素に腸溶皮膜を施し、胃と腸の両方で作用するようにした製剤が開発された。これが総合消化酵素製剤とよばれるもので、消化薬の主流を占めるようになった。カプセル、錠剤および顆粒(かりゅう)剤が市販されている。市販の消化酵素製剤は、ペプシンとパンクレアチン、ジアスターゼを除き、微生物由来のものである。総合消化酵素製剤には「コンビチーム」「フェスタール」「ベリチーム」「タフマックE」「エーザイム」「ポリトーゼ」などがある。
[幸保文治]