消光(読み)しょうこう

精選版 日本国語大辞典 「消光」の意味・読み・例文・類語

しょう‐こう セウクヮウ【消光】

〘名〙
① (━する) 月日を過ごすこと。光陰をおくること。消日
※殿村篠斎宛馬琴書簡‐天保三年(1832)七月一日「蔽屋、無替事致消光候」
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「先づ先づ無事に消光罷(まか)り在り候間
鉱物を直交ポーラー偏光板)の下で観察する際、ポーラーの振動方向と鉱物内の光の振動方向とが一致して暗黒となる現象。〔英和和英地学字彙(1914)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「消光」の意味・読み・例文・類語

しょう‐こう〔セウクワウ〕【消光】

[名](スル)
月日を送ること。日を過ごすこと。消日。現在では多く、手紙文で自分側について用いる。「小生、無事消光致しております」
「空く遨遊に―するに堪えざればなり」〈織田訳・花柳春話
鉱物を偏光顕微鏡で観察するとき、上下ニコルの振動方向と、鉱物内の光の振動方向とが一致したときに、暗黒になる現象。
[類語](1過ごす送る費やす暮らす明かし暮らす明け暮れる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「消光」の意味・わかりやすい解説

消光 (しょうこう)

消光には,蛍光やリン(燐)光などのルミネセンス強度がなんらかの作用によって減少する現象と,複屈折性の結晶板を偏光方向が互いに直交している2枚の偏光子の間に置いて見るとき,結晶板を回転していくとある特定の方位視野が暗黒になる現象との二つがあり,前者クエンチングquenching,後者エクスチンクションextinctionという。

 クエンチングは,(1)発光分子の有している励起エネルギーを消光物質との衝突によって失うか,(2)消光物質との衝突によって化学反応を起こしたり,発光を起こさない分子間化合物をつくるか,(3)発光分子が,非放射遷移や分解反応などによって発光を起こさない分子状態に変わる,などの方法で起こる。したがって,他の消光物質との衝突によって誘起される場合と,赤外線照射(赤外消光)や温度上昇(熱消光または温度消光)または磁場をかけるなどの外部からの作用に基づく場合とがある。発光分子の濃度の上昇による消光を濃度消光または自己消光という。

 エクスチンクションは,結晶中での光の振動方向が一方の偏光子の偏光方向と一致するときに起こる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「消光」の意味・わかりやすい解説

消光
しょうこう
extinction

(1) リン光の消光。解燼 (かいじん) ともいわれ,リン光体に光を照射してリン光を出させておき,温度を上げるか,赤外線を当てるとリン光が急に弱くなってしまう現象をいう。 (2) 岩石標本などを調べる偏光顕微鏡で複屈折性の結晶板を観察するとき,結晶板を回転させると顕微鏡の視野の明るさが変り,特殊な位置ではまったく暗黒になる。この現象を消光という。これは,偏光顕微鏡には直交ニコルがあって,試料はその間に挿入するようになっているが,特殊な角度に結晶板を置くと,複屈折によってできた常光線と異常光線とが,直交ニコルの作用で互いに干渉して強さを打消し合う状態になるためである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「消光」の解説

消光
ショウコウ
quenching

】[別用語参照]蛍光の消光】りん光の消光:残光状態にある蛍光体に適当な赤外線を照射すると,残光の強度がいちじるしくかつ急速に減少する現象.消尽ともよばれ,暗視器に利用される.【偏光顕微鏡において,直交ニコル間の複屈折物質が,回転によりある角度で暗視野を呈する現象.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

普及版 字通 「消光」の読み・字形・画数・意味

【消光】しようこう

日を過ごす。

字通「消」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android