精選版 日本国語大辞典 「海溝」の意味・読み・例文・類語
かい‐こう【海溝】
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細長い溝状の海底地形で,最深部の水深が6000mを超えるものをいう。かつてはこのような地形のすべてを海溝と呼んだが,近年はこのうち海底プレートが屈曲して陸の下へ斜めに沈み込んでいるために生じた地形だけを海溝と呼ぶ。
ほとんどの海溝は太平洋の周囲にある(図1)。地形の断面はやや非対称のV字形で,上縁の幅は100km以内である(図2)。大洋底から最深部までの深さは3~4kmあり,一般に年齢の古い海底に接する海溝ほど最深部も深い傾向がある。海溝底は混濁流堆積物に満たされて平たんであることも多く,その場合,最深部の水深は見かけ上浅くなっている。
海側斜面のこう配は平均4度以下であるが,途中に海溝軸にほぼ平行に,幅約2km,深さ数百m,長さ100kmの溝がいくつか見られる。このくぼみは海底の屈曲がもたらす張力によって生じた断層地形だと思われる。海溝の海側を上りつめたところは,さらに外側の海底よりも500~1000m浅く海溝周縁隆起帯(マージナル・スウェルmarginal swell)と呼ばれているが,これも海底の屈曲に伴うふくれ上がりだとされている。この地形は幅200~500kmにわたる,ごくゆるい傾斜のものである。海溝陸側斜面は海側に比べて傾斜も急で,平均6度を超え,起伏に富んでいる。途中に深海テラスおよびベンチと呼ばれる棚状の地形が見られることも多く,二つのテラス間が堆積物で埋まって深海平たん面と呼ばれる平らな地形をつくっている所もある。陸側斜面には沈み込む海底側からはがれた堆積物が下から押しつけられている所(南海トラフなど)と,海側の沈み込みによって陸側の先端が削りとられて沈降している所(マリアナ海溝など)がある。
海溝軸に沿ってかなり活発な地震活動があり,陸の下へ斜めに傾く深発地震面が明瞭に描ける所も多い。地殻熱流量は海溝軸またはそのやや陸側で海底平均値より低い値を示す。重力のフリーエア異常は海溝に沿って負で,その絶対値は最深部か,少し陸側で最大である。しかし,海溝の地下でも地殻の厚さは通常の海底とほとんど違いはないことが知られているので,海溝地形はアイソスタシー(静的な地殻均衡)によってではなく,海底の沈み込みという動的な現象によって形成されたものであることがわかる。海溝の陸側100~400km以上離れて海溝とほぼ平行に活火山の列が存在するが,アレウト(アリューシャン)列島,日本列島,マリアナ諸島,トンガ諸島のように背後にさらに縁海をもつ島弧をつくる所と,中南米西岸のように大陸縁に火山が並ぶ場合との2通りがある。なお,細長い深い溝状の海底地形でも,明らかに沈み込み以外の原因(例えばトランスフォーム断層)だけでできたものは海溝とは呼ばない(例えば大西洋中部のロマンシュRomanche断裂帯(最深部の水深7800m)はかつては海溝と呼ばれた)。一方,明らかに沈み込みによって生じた地形でも最深部の水深が6000m以浅の時は海溝とよばず,トラフtroughとして一括する習慣である(例えば南海トラフ,駿河トラフ)。
測鉛による測深を行っていた時代には,たまたま見つけた海溝内の深部に,海淵(かいえん)deepと名づけ,チャレンジャー海淵などの固有名詞を用いたこともあった。しかし,音響測深の普及とともに,海溝は細長い溝であることがはっきりしたので,一点一点の深さ比べは,ほとんど学問的な意味を失い,海淵という語もほとんど使われなくなった。
→サブダクション帯
執筆者:小林 和男
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
大陸斜面と大洋底との境界付近にある細長い凹地。深さ6000メートル以上、長さ1000~4000キロメートル、幅100キロメートル程度のものが多い。海溝の両斜面は比較的急で、陸側の傾斜角は大洋側より大きい。地球上には27の海溝があるが、大部分太平洋の周縁部に分布している。海溝の陸側には、日本列島のような弧状列島や、南アメリカ大陸のアンデスのような大山脈が並行しており、地形が険しく、地震や火山の活動が盛んな地域となっている。海洋底拡大説によれば、海溝は海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む所で、それに伴ってさまざまな変動活動を生じると考えられている。
[勝又 護]
(小林和男 東京大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
… 海穴hole海底の小さな凹み。 海溝trench長く狭くとくに非常に深くかつ非対称な海底の凹みで,比較的急峻な斜面を有する。 海谷valleysubmarine valley―比較的浅く幅広い凹みで,その底はふつう連続的な傾斜を示す。…
…陸上戦闘で敵の火砲や機関銃の射撃から兵員,兵器などを防護するため,大地に掘削した穴,または通路をいう。攻撃,防御いずれの場合も用いられるが,兵力が劣勢の場合,または時間をかせぐ防御の場合には必須の手段である。戦線が流動的でなく固着した場合は,敵味方双方で構築するので,第1次大戦の西部戦線のような塹壕戦となる。【近藤 新治】…
…この種の広大な面積の発掘調査に対し,特定の問題解決のための情報入手を目的として,遺跡のなかの最適の部分で最小限の面積を対象に実施する発掘調査を部分発掘と呼ぶことがある。部分発掘では,対象地点に溝(トレンチtrench)状に掘削部を設定して発掘を進める,トレンチ発掘またはトレンチ調査と呼ぶ方法をとることが多い。 通常の遺跡では,発掘調査は表土の排土から始まり,遺構・遺物の検出へと進んでいく。…
…陸地と海洋の割合は前者で49.0%:51.0%,後者で9.4%:90.6%となり,前者の陸半球には全陸地の約84%が含まれる。
[海の深さ]
世界の海洋の深度は,平均約4000mであるが,世界で最も深い記録は,太平洋のマリアナ海溝にあり,1万0920mにも達する。一般に海面から約200mの深さまでは陸地の延長とみられ,大陸棚と呼ばれる(図2)。…
…海洋プレートは中央海嶺とは反対側の縁辺で大陸プレートとぶつかりアセノスフェアの中へ沈み込んでいく。 ぶつかるプレート境界(サブダクション帯,沈み込み帯と呼ぶ)では深くて両側に急斜面をもつ細長い凹みである海溝が生じる。沈み込んだプレートはアセノスフェア深部で溶融し,ふたたびアセノスフェアになる。…
※「海溝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...
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