海洋法国際会議(読み)かいようほうこくさいかいぎ(英語表記)United Nations Conference on the Law of the Sea

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋法国際会議」の意味・わかりやすい解説

海洋法国際会議
かいようほうこくさいかいぎ
United Nations Conference on the Law of the Sea

海洋の国際制度に関する条約を作成するために国際連合が開催した国際会議。国連海洋法会議ともいう。

第一次会議

国連の国際法委員会が作成した「海洋法草案」を原案にして、1958年に開催された第一次海洋法会議は、領海および接続水域に関する条約、公海に関する条約、漁業および公海の生物資源の保存に関する条約、大陸棚に関する条約を採択して画期的な成果をあげた。しかし、領海の幅の問題は合意に達することができなかった。

[高林秀雄・田中則夫]

第二次会議

1960年に開催された第二次海洋法会議は、第一次会議で合意に到達できなかった領海の幅と漁業水域の問題だけを議題にした。しかし、領海の幅を6海里とし、さらにその外側に6海里の幅で、沿岸国が漁業について排他的権利を行使する漁業水域を設定できるとする提案が僅差(きんさ)で否決され、ふたたび失敗に終わった。

[高林秀雄・田中則夫]

第三次会議

1967年の国連総会には、深海底に新しい国際制度を設立する問題が提起され、1968年から国連海底平和利用委員会がこの問題の研究を開始した。1970年の国連総会は、深海底制度だけでなく、海洋法の全分野にわたり再検討を行うための第三次海洋法会議を開催することを決定した。同会議は、1973年に第1会期を開いて運営問題を審議し、1974年の第2会期から実質問題の交渉を開始した。しかし、審議すべき問題点が多く、またとくに、深海底制度の審議に際して各国利害が対立したため交渉は難航し、9年間(11回の会期)にわたるマラソン交渉となった。1982年の第11会期でようやく国連海洋法条約の作成に成功し、同年12月10日、ジャマイカモンテゴベイの海洋法条約署名会議で、同条約を正式に採択した。条約の効力が発生したのは1994年11月である。日本は1983年(昭和58)2月に署名し、1996年6月に批准した。国連海洋法条約は、海洋法を包括的に規定した法典であって、現代の国際社会の必要に応ずるために、多くの新しい国際制度を取り入れた点に特徴がある。

[高林秀雄・田中則夫]

『小田滋著『注解国連海洋法条約 上巻』(1989・有斐閣)』『高林秀雄著『領海制度の研究』第3版(1987・有信堂高文社)』『山本草二『海洋法』(1992・三省堂)』

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