海洋保護区(読み)カイヨウホゴク(英語表記)Marine Protected Area

デジタル大辞泉 「海洋保護区」の意味・読み・例文・類語

かいよう‐ほごく〔カイヤウ‐〕【海洋保護区】

海中生物環境保護のために各国が指定した水域漁業を含めた活動の全面禁止水域から小規模の漁業、ダイビングなどを認める水域まで規制は多様。海の自然公園

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋保護区」の意味・わかりやすい解説

海洋保護区
かいようほごく
Marine Protected Area

海の生態系を保護し持続的に生態系を利用していくため、資源開発、漁業、観光などを規制した海域。略称MPA。国際的に生物多様性の保全機運が高まった1980年代から、海洋保護区を設置する動きが世界各地で活発になった。多様な海洋野生生物の生息域、珊瑚礁(さんごしょう)の周辺、魚の産卵海域、絶滅危惧(きぐ)種の生息域などが設定されている。アメリカのハワイ諸島北西~南部、オーストラリアのグレート・バリア・リーフ、エクアドルガラパゴス諸島などがよく知られている。しかし世界の海域は地形海流、生態系、歴史的・文化的利用方法などが一様でないため、国際的に統一された基準はなく、さまざまなものが存在する。2004年にクアラルンプールで開催された国際連合生物多様性条約第7回締約国会議では「海洋環境の内部またはそこに接する明確に定められた区域であって、そこにある水塊及び関連する動植物相、歴史的及び文化的特徴が、法律及び慣習を含む他の効果的な手段により保護され、それによって海域、沿岸の生物多様性が周辺よりも高いレベルで保護されている効果を有する区域」と定義。国際自然保護連合IUCN)は「生態系サービス及び文化的価値を含む自然の長期的な保全を達成するため、法律又は他の効果的な手段を通じて認識され、供用され及び管理される明確に定められた地理的空間」と定義している。2003年の主要国首脳会議(G8)は、より広域の保護を徹底するため、海洋保護区のネットワークをつくることで合意。2010年(平成22)に愛知県で開催された生物多様性条約第10回締約国会議で採択された国際合意「愛知目標」には、2020年までに世界の海域の10%を海洋保護区に指定するという数値目標が盛り込まれた。

 日本政府は2011年に初めて海洋保護区を設置し、従来からある自然公園、自然海浜保全地区、自然環境保全地域、鳥獣保護区、生息地等保護区、天然記念物の指定地、保護水面、沿岸水産資源開発区域、都道府県や漁業団体等による各種指定区域、共同漁業権区域などについて海洋保護区とよぶことを決めた。保護区では、鉱物資源の掘削や底引き網漁が許可・届け出制となり、違反すれば6か月以下の懲役または50万円以下の罰金を科される。日本政府は2012年の改定生物多様性国家戦略に、日本の領海と排他的経済水域に占める海洋保護区の比率を2020年(令和2)までに10%へ引き上げる目標を設定。2019年に、沖合にも海洋保護区を指定できるよう自然環境保全法(昭和47年法律第85号)を改正し、2020年に日本海溝の最南部および伊豆・小笠原海溝周辺、中マリアナ海嶺(かいれい)と西マリアナ海嶺周辺、西七島海嶺周辺、マリアナ海溝北部の4か所を沖合海底自然環境保全地域に指定した。これにより日本の海洋保護区の総面積は約60万平方キロメートルと、日本の管轄海域の13.3%を占めることになる。なお類似の概念に環境省が抽出を進めている「重要海域」があるが、これは生物の多様性を保全する上で、生態学的、生物学的な観点から重要な海域をさし、経済、社会、歴史、文化的な重要性は考慮しない。

[編集部 2021年3月22日]

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