海底谷(読み)かいていこく

精選版 日本国語大辞典 「海底谷」の意味・読み・例文・類語

かいてい‐こく【海底谷】

〘名〙 陸棚から深海底に向かって、陸棚斜面を深くV字形に刻む海谷深海谷。

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デジタル大辞泉 「海底谷」の意味・読み・例文・類語

かいてい‐こく【海底谷】

大陸斜面を刻む深い谷。主に乱泥流による浸食によってできる。広くは大陸棚にあるものもいう。海谷。

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改訂新版 世界大百科事典 「海底谷」の意味・わかりやすい解説

海底谷 (かいていこく)

海底の比較的狭く深い谷で,両側は急峻,底は連続的な傾斜を有する地形。広義には海底の谷の総称である。大陸棚を浅く刻む陸棚谷shelf channelは河川氷河の浸食した谷が沈水した溺れ谷である。大陸斜面上の谷には,谷壁が急で幅の狭いV字谷submarine canyon狭義の海底谷)と幅の広いU字谷submarine valley(海谷)とがある。前者は多少蛇行しつつ樹枝状の支谷を集め深海平たん面大洋底に達する。末端部に海底扇状地を形成し,砂泥互層,深海砂,深海チャンネルなどが存在するところから混濁流起源とされている。深海チャンネルは海底扇状地,コンチネンタルライズ深海平原などの表面を浅く刻む長い谷で,両側に自然堤防を有しており,混濁流が平たん部に到達しその流路に懸濁物を堆積しながら形成する海底谷の一種である。海谷は構造性の谷地形が混濁流の作用をうけたものと考えられる。用語の混乱がはなはだしく,海谷が広義の海底谷あるいは陸棚谷に用いられることがある。
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百科事典マイペディア 「海底谷」の意味・わかりやすい解説

海底谷【かいていこく】

大陸棚を浅く刻む〈陸棚谷〉と,大陸棚と大陸斜面を深く刻み深海に達する狭義の海底谷の2種がある。谷壁がきわめて急で幅が狭く深いものを海底峡谷という。陸棚谷は陸上で川や氷河が形成した谷が沈下した溺れ谷(おぼれだに)。海底谷は数百〜1000m刻まれ,多少蛇行(だこう)しつつ樹枝状の支谷を集める。谷頭は海岸付近または大陸斜面上部で,末端は深海平たん面や大洋底に達する。成因は,乱泥流による海底浸食などが考えられる。
→関連項目海底地形混濁流

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「海底谷」の意味・わかりやすい解説

海底谷
かいていこく
submarine canyon

海谷とも呼ぶ。比較的狭く深い海底の凹所で,急な側斜面をもち底が連続的に深くなる場所。そのほとんどは陸上の谷に似てV字谷で,蛇行し,谷壁には岩石が露出し支谷がある (例:東京海底谷,モンテレー海底谷,ハドソン海底谷,トリンコマリー海底谷) 。しかし広義には,海にみられる谷状地形として,深海扇状地を切る谷 (蛇行もするが支谷をもたず,谷壁に岩石が露出していない) ,陸棚谷 (谷が深くなく,谷の存在する海底の水深も大きくない) ,三角州前面を刻んだ谷 (例:ミシシッピ) ,深海水道 (深海にみられる起伏の小さい,支谷をあまりもたない溝状地形) などを含むこともある。海谷の成因として主として考えられているのは,谷頭に発する混濁流による浸食,海底谷に沿う堆積物の徐々に動いて起る浸食,混濁流以外の流れによる浸食,陸上で浸食された谷の沈水などである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海底谷」の意味・わかりやすい解説

海底谷
かいていこく
submarine canyon

河状に続く海底地形のうち、断面がV字状のもの。海底谷は、大陸棚上の陸上河川の延長上にも、大陸斜面より深い所にもある。大陸棚の海底谷は、海面が今日よりも低下していた氷河期に河川で侵食された峡谷が、間氷期になって海面の上昇とともに水面下に没したものである。大陸斜面以深のものは、陸性の堆積(たいせき)物が海水と混じって流下する混濁流による侵食によってできると考えられている。

[安井 正]

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世界大百科事典(旧版)内の海底谷の言及

【海底地形】より

… 大陸斜面も単調な斜面ではなく谷や平たん面(段丘)に特徴づけられている。大陸斜面上の海底谷は混濁流作用により海底で浸食された地形であると考えられる。大陸斜面上にたまった堆積物は不安定であり,何かの衝撃を受けるとなだれや地すべりを起こして斜面を下り,凹みに集中して泥流となって流れる。…

【谷】より

…地表の起伏と無関係にもとの流路を維持し,硬い岩層から成る凸部を横切って峡谷をなすものに表成谷がある。
[海底の谷]
 谷は海面下にもあり,もとは陸上にあった谷が沈水して海面下に没した海底谷または陸棚谷と,大陸棚斜面を深く刻んで深海底に達する本来の海底谷がある。東京湾,相模湾,富山湾には陸上の谷が沈水した海底谷が発達している。…

※「海底谷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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