海外巻網漁業(読み)かいがいまきあみぎょぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海外巻網漁業」の意味・わかりやすい解説

海外巻網漁業
かいがいまきあみぎょぎょう

大・中型巻網漁業のうち、太平洋中央海区、インド洋海区を操業区域として、200トン以上の船舶を使用し、周年カツオ・マグロを漁獲対象として操業するものの通称。漁業における名称表記としては「海外旋(まき)網漁業」とするのが正しいが、一般に「海外巻網漁業」の表記が通行している。

[三浦汀介]

太平洋中央海区

1982年(昭和57)の許可一斉更新時に北部太平洋海区と区分され新設された海区であり、許可隻数は1979年までは13隻(試験操業船2隻を含む)であったが、1980~1981年のカツオ一本釣りおよび北部巻網漁業からの転換により32隻となった。その後、北部太平洋海区を操業区域とし、北緯20度以南でも操業していた135トン型船が海外巻網漁業へ転換を図り、2009年(平成21)時点では35隻が許可を受けている。漁場としては、中西部太平洋諸国のミクロネシアパラオキリバスマーシャル諸島ナウルツバルフィジーソロモン諸島パプア・ニューギニアおよび公海であり、外国の排他的経済水域(EEZ)内については入漁料を支払って操業している。とくに2006年5月に19年ぶりに入漁が認められたパプア・ニューギニアは中西部太平洋のなかでも優良な漁場であり、2007年10月に行われた2国間の協議を踏まえ引き続き入漁が認められている。

 また、海外巻網漁業の主漁場である中西部太平洋では、漁船が漁場に滞在できる日数で管理する隻日数による漁獲努力量管理制度の導入や、中西部太平洋まぐろ類委員会において集魚装置を使用した操業の一定期間の禁止および操業禁止区域の設定が決定されるなど、海外巻網漁業者にとって、ますます厳しい環境となっている。このため、日本への水産物安定供給および国際競争力強化を図る必要があることから、水産庁は2008年5月23日に「大中型まき網漁業の国際競争力強化のための試験操業に関する取扱方針」を定め、資源管理に配慮しつつ、より効率的な操業を行うための試験操業が行われている。同時に、海外巻網漁業によるメバチ小型魚の混獲問題に対応するため、2008年4月に「小型魚混獲削減検討会」が設けられた。

[三浦汀介]

インド洋海区

1992年(平成4)の許可一斉更新時に新設された操業区域であり、それまでこの海区で試験操業を行ってきた10隻が、本許可へ移行した。漁獲量は、1987年以降は、ほぼ約4500トン以上で安定しており、カツオの卸売価格が1キログラム当り110~160円であったため、水揚げ金額は6~7億円台で漁労原価を上回り、漁労収支は1~1億5000万円の黒字であった。とくに価格は、カツオの国際市場が世界的な水産物需要への高まりのなかで高騰しており、2007年は年平均1キログラム当り161円であり、かつ、漁獲量も1隻平均6000トンを超えたため、水揚げ金額は10億円の大台にのった。一方、原油価格の高騰で漁労原価は上昇し、燃油費は2002年当時の約9000万円から2008年では2倍以上の約2億円を要し、その結果、漁労原価は8億2000万円となっているが、現在の経営状態は良好で、きわめて幸運な国際市況にあるものと思われる。単純計算でカツオの価格が1キログラム当り140円以下になると漁労収支は赤字となるが、今後は、この点を踏まえ高価格のカツオの国際市況を前提としない、燃油価格高騰の恒常化に対応した経営体質を整えておくことも必要となろう。

[三浦汀介]

『遠洋まぐろ延縄漁業将来展望検討委員会・全国遠洋沖合漁業信用基金協会編『遠洋まぐろ延縄漁業の将来展望に係る中間取りまとめ』(2008・全国遠洋沖合漁業信用基金協会)』『水産年鑑編集委員会編『水産年鑑2011』(2011・水産社)』

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