海住山寺(読み)カイジュウセンジ

デジタル大辞泉 「海住山寺」の意味・読み・例文・類語

かいじゅうせん‐じ〔カイヂユウセン‐〕【海住山寺】

京都府木津川市加茂町例幣れいへいにある真言宗智山派の寺。山号は補陀落山ふだらくさん。天平7年(735)聖武しょうむ天皇の勅願により、良弁ろうべんが建立と伝える。承元2年(1208)貞慶じょうけいが中興。建保2年(1214)建立の五重塔は国宝。文殊堂十一面観音像・海住山寺文書などは重文。

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精選版 日本国語大辞典 「海住山寺」の意味・読み・例文・類語

かいじゅうせん‐じ カイヂュウセン‥【海住山寺】

京都府相楽郡加茂町にある真言宗智山派の寺。山号は補陀落山。天平七年(七三五聖武天皇の勅令により良弁(ろうべん)が開基し、観音寺と称した。承元元年(一二〇七)貞慶(解脱上人)が中興し、現名に改称。本尊は十一面観音鎌倉時代造立の五重塔は国宝に指定されている。

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日本歴史地名大系 「海住山寺」の解説

海住山寺
かいじゆうせんじ

[現在地名]加茂町例幣

三上さんじよう山の中腹にあり、南に広がる瓶原みかのはらを眺望できる風光明美な地にある山岳寺院。真言宗智山派。補陀落山と号し、本尊は十一面観音。本堂に向かって右手に文殊堂、その奥に本坊がある。左手には五重塔、本堂左手後方山裾に八幡・春日稲荷の祠および薬師堂が建つ。

〈京都・山城寺院神社大事典〉

〔創建と貞慶の再興〕

寺伝によれば、天平七年(七三五)奈良東大寺開山であった僧良弁が、聖武天皇の勅願によって十一面観音を本尊として藤尾山観音寺という寺を創建したのに始まるという。その後、保延三年(一一三七)に火災にあいすべてを焼失したが、承元元年(一二〇七)笠置かさぎ(現京都府笠置町)に隠棲していた南都の学僧解脱房貞慶が再興。このとき観音の浄土との意から補陀落山海住山寺と改称したという。嘉吉元年(一四四一)の「興福寺官務牒疏」には「聖武天皇天平七乙亥年勅願、良弁僧正開基也、宝亀四年癸丑三月、正一位左大臣永手公再興、寄附出水郷弐百町云、土御門帝承元二戊辰年、解脱貞慶上人再興、二世慈心上人也、鎮守恭仁神」とあり、貞慶以前に一度藤原永手によって再興されたことを記す。貞慶は鎌倉新仏教に対して南都仏教の覚醒に努めた僧で、戒律を重んじた。

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改訂新版 世界大百科事典 「海住山寺」の意味・わかりやすい解説

海住山寺 (かいじゅせんじ)

京都府木津川市の旧加茂町にあり,恭仁京(くにきよう)跡を見下ろす山上に位置する真言宗智山派の寺。補陀落山と号する。開創は735年(天平7)東大寺良弁と伝える。1207年(承元1)解脱坊貞慶が笠置から移り中興した。現存する五重塔(国宝)は,14年(建保2)に塔内に仏舎利を安置した記録があるので,このころに完成したものとみられる。裳階(もこし)付きの小さな五重塔で,内部の彩色が美しい。その傍らの文殊堂は鎌倉時代中ごろの建立とみられる。本堂内には平安時代の十一面観音立像が2体安置されており,いずれも重要文化財である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海住山寺」の意味・わかりやすい解説

海住山寺
かいじゅうせんじ

京都府木津川(きづがわ)市加茂町例幣(かもちょうれいへい)にある寺。真言宗智山(ちさん)派に属する。山号は補陀落山(ふだらくさん)。聖武(しょうむ)天皇の勅願寺で、735年(天平7)良弁(ろうべん)の創建と伝えられ、1137年(保延3)焼失したのを貞慶(じょうけい)が再興したので、彼を中興の祖と仰ぐ。その高弟覚真(かくしん)の時代に寺領、諸伽藍(がらん)も整い、寺運は隆盛に達したが、いまもなお古木に囲まれた山中にあり、巨刹(きょさつ)のおもかげが残る。境内には1214年(建保2)に建立された五重塔(国宝)をはじめ、文殊(もんじゅ)堂(国重要文化財)、本堂、薬師(やくし)堂などがあり、また本尊十一面観音(国重要文化財)、毘沙門天(びしゃもんてん)など多くの寺宝を蔵している。

[眞柴弘宗]

『工藤圭章著『海住山寺』(1968・中央公論美術出版)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「海住山寺」の意味・わかりやすい解説

海住山寺
かいじゅうせんじ

京都府南端部,木津川市にある真言宗智山派の寺。奈良時代の創建。保延3 (1137) 年火災にあい,鎌倉時代に法相宗の僧貞慶により再興された。五重塔は建保2 (1214) 年造立,吹き抜きの裳階 (もこし) をもつ他に例のない構造の塔で,内部の装飾が美しく,国宝に指定されている。

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