浮沈(読み)うきしずむ

精選版 日本国語大辞典 「浮沈」の意味・読み・例文・類語

うき‐しず・む ‥しづむ【浮沈】

〘自マ四〙
① 波の動きなどにつれて、浮いたり沈んだりする。
古今(905‐914)物名・四二七「かづけども浪のなかにはさぐられで風吹くごとにうきしづむたま紀貫之〉」
② (「浮き」と「憂き」をかけて) 嘆き悲しむ。嘆き苦しむ。涙などの縁語
※元真集(966頃か)「きみこふとわれぞなかれていはるべきなみだのかはのうきしづみつつ」
③ (比喩的に) 栄えたり衰えたりする。
※光経集(1230頃か)「うきしつむ後のうき世をおもひしれこころのほかの心やはある」

うき‐しずみ ‥しづみ【浮沈】

〘名〙
① 浮いたり沈んだりすること。〔文明本節用集(室町中)〕
② 栄えたり衰えたりすること。ふちん。栄枯盛衰
太平記(14C後)二「塩ならぬ海にこがれ行く、身を浮舟の浮沈(うきシヅ)み」
③ 陽気になったり、しおれたりすること。また、表情表現起伏があること。
歌謡・松の葉(1703)歌音声「序破急のくらゐ、うきしづみ、乙甲(をっかん)けやけからぬやうに心をつくべし」

ふ‐ちん【浮沈】

〘名〙
① 浮いたり沈んだりすること。うきしずみ。
古事記(712)序「海水に浮沈して、神祇身を滌ぐに呈れき」 〔梁武帝‐逸民詩〕
② 栄えることと衰えること。盛衰人生の移り変わり。世の中の変遷。うきしずみ。
菅家文草(900頃)三・秋「涯分浮沈更問誰、秋来暗倍客居悲」
平治(1220頃か)上「便宜候はば、当家の浮沈をも試むべし」 〔司馬遷‐報任少卿書〕

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デジタル大辞泉 「浮沈」の意味・読み・例文・類語

ふ‐ちん【浮沈】

[名](スル)
浮いたり沈んだりすること。うきしずみ。
愛欲の海に―しながら」〈倉田出家とその弟子
栄えることと衰えること。うきしずみ。「会社浮沈にかかわる重大事」
[類語]浮き沈み消長起伏栄枯盛衰七転び八起き存亡

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普及版 字通 「浮沈」の読み・字形・画数・意味

【浮沈】ふちん

浮き沈みする。〔淮南子、要略〕故にを言ひて事を言はざれば、則ち以て世と沈すること無く、事を言ひてを言はざれば、則ち以て息すること無し。

字通「浮」の項目を見る

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デジタル大辞泉プラス 「浮沈」の解説

浮沈

池波正太郎の時代小説。1989年刊行。「剣客商売」シリーズ最終巻。

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