浮世節
うきよぶし
俗曲の一種。流行唄(はやりうた)の異称として江戸時代に用いられた例もあるが、近年では立花家橘之助(たちばなやきつのすけ)(1868―1935)の音曲をさす。鑑札をもたなければ舞台へ出られなかった1886年(明治19)に関西から帰京した橘之助は、「三都音曲語り分け」として東京、京都、大阪の歌を「落語」の鑑札で演じていたところ、臨席した警官の指示で、警視庁へ「浮世節」の鑑札下付を願い出た。このときは却下されたが、1912年東京府知事に家元を認可され、ここに「浮世節」は公認の名称となった。その後は「どどいつ」「とっちりとん」をはじめ、各種流行唄の替え歌によって世相をうがった。1950年代に西川たつ(1895―1959)がこの名称を用いたこともある。
[倉田喜弘]
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うきよ‐ぶし【浮世節】
〘名〙
① 当世流行の
歌曲。
元祿(
一六八八‐一七〇四)頃の遊里や風俗などをとりあつかった
流行歌の一種。
※浮世草子・好色貝合(1687)上「色道に首だけ沈み、そそりかけてのうき世ぶし」
② 江戸時代から、主として
寄席で歌われるもので、流行歌、俗曲など、種々の音曲を取り合わせた歌曲一般の称。
※
随筆・寛天見聞記(1789‐1844)「よせと号し〈
略〉咄しに音曲を入れ
役者の声色物真似娘上るり八人芸浮世ぶしなど芸人を集て」
③ 明治二〇年頃の壮士演歌の一種。久田鬼石作の「浮世節」、鬼石学人作の「憂世武志」などがある。
④ 明治
中期に三遊派の女真打ち立花家橘之助によって
創始され、寄席でうたわれた流行歌の
一派。「
大津絵」「とっちりとん」「ほこりたたき」などが代表曲。
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浮世節【うきよぶし】
明治以後,特に寄席(よせ)で歌われた流行歌,俗曲をさす。立花家橘之助が清元節などの邦楽の歌を採り入れて創始したが,現在は行われていない。また,江戸時代にははやり歌の意であったとも考えられる。
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浮世節
うきよぶし
寄席芸能の形態名。俗曲を集大成したもので,『大津絵節』『とっちりとん』をはじめ各種の音曲を,三味線を弾きながら演じるもの。明治,大正期の女性音曲師,立花家橘之助の創始。
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デジタル大辞泉
「浮世節」の意味・読み・例文・類語
うきよ‐ぶし【浮世節】
寄席演芸の一。浄瑠璃・長唄をはじめ流行歌・俗曲などいろいろの音曲を取り合わせた三味線声曲。狭義には、明治中期に立花家橘之助が創始した流派をいう。
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うきよぶし【浮世節】
邦楽の種目。江戸時代より流行歌(はやりうた)の別名として使われた。明治の中期から大正にかけ,寄席で人気のあった女芸人,立花家橘之助(たちばなやきつのすけ)が,1900年(明治33)に浮世節家元として公認され,一流派を立てた。橘之助は《大津絵》《とっちりとん》などの俗曲に,長唄,常磐津,清元節などを巧みに織り込み,陽気でおどけた歌詞と曲調に仕上げ,三味線の曲弾きを入れた《たぬき》といった曲で芸術性を高めた妙技をみせた。
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