浮上(読み)うきあがる

精選版 日本国語大辞典 「浮上」の意味・読み・例文・類語

うき‐あが・る【浮上】

〘自ラ五(四)〙
① 人や物が、底の方から液体表面に出てくる。浮かび上がる。
愚管抄(1220)五「入海してける程に、宗盛は水練をする者にて、うきあがりうきあがりして」
② 隠れていたものごとが表に現われる。浮かび上がる。
草枕(1906)〈夏目漱石〉七「まともに、照らす灯影(ほかげ)を浴びたる時でなくては、男とも女とも声は掛けられぬ。〈略〉が、輪廓は少しく浮き上がる」
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉一〇「突然妙な事が己の記憶から浮き上がった」
下地地面などから離れて上に持ち上がる。
※夜の寝覚(1045‐68頃)二「心ちのいみじくおぼさるれば、うち臥し給へるも、ただうきあがるやうにおぼえつつ」
※御身(1921)〈横光利一〉五「枕の下へ手を入れて彼女の頭を浮き上らせると」
④ 苦しい状態から抜け出る。運が開ける。浮かび上がる。
※あらくれ(1915)〈徳田秋声〉九二「世のなかが景気づいて来たにつれて、お島たちは自分たちの浮揚るのは、何の造作もなささうに思へてゐた」
気持がふわつく。うきうきする。
※山の鍛冶屋(1926)〈宮嶋資夫〉三「その日のことを考へると竹の心は軽々と浮き上った」
⑥ ある集団の中で、まわりの者との接触が薄れる。遊離する。周囲となじまず孤立する。
故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉六「さうなると機関はまた大衆から浮き上った街頭分子だけといふ事になる」

うかび‐あが・る【浮上】

〘自ラ五(四)〙
① 物が底の方から表面に出てくる。物が水中から水面に上がってくる。浮かび出る。
※高野本平家(13C前)一「此度泥犁(ないり)に沈みなば、多生曠劫をば隔つとも、うかひあからん事かたし」
※大津順吉(1912)〈志賀直哉〉二「泥水に浮び上った錦魚(きんぎょ)の心持であった」
② 隠れていた物事がわかるようになる。
(イ) 意識に出てくる。思い出される。
※碑文(1923)〈横光利一〉「突然一人の頭の中へカンナの予言が浮び上った」
(ロ) 物事が外面に現われる。はっきりしてくる。また、注目されるようになる。「容疑者が浮かび上がる」
※明暗(1916)〈夏目漱石〉一一一「彼女は肉の上に浮び上ったその微笑が何の象徴(シンボル)であるかを殆んど知らなかった」
③ 苦しい状態からぬけ出る。運が開ける。また、立身出世する。
※日葡辞書(1603‐04)「ツミヨリ vcabiagaru(ウカビアガル)

うかみ‐あが・る【浮上】

〘自ラ四〙
※羅葡日辞書(1595)「Emergo〈略〉ミヅノ ナカ ヨリ vcami(ウカミ) agaru(アガル)
※浮世草子・世間娘容気(1717)三「玄宗へ妾奉公に出し、それより一家一門うかみあがりて」

ふ‐じょう ‥ジャウ【浮上】

〘名〙
① 水の中から浮かびあがること。
※海の柩(1970)〈吉村昭〉一「凪いだ沖の海面に艦影が浮上した」
② 表面に現われ出ること。また、悪い状況から良い状況になること。
※にんげん動物園(1981)〈中島梓〉一〇三「もう優勝戦線はおろか、Aクラス浮上もない」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「浮上」の意味・読み・例文・類語

ふ‐じょう〔‐ジヤウ〕【浮上】

[名](スル)
水中から水面に浮かび上がること。「潜水艦が浮上する」
隠れていたものや目立たなかったものが表面に現れること。また、成績などが下位から上位になること。「課題が浮上する」「リーグ首位に浮上する」
[類語]浮揚浮かび上がる浮かぶ浮く浮き上がる浮かべる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android