浜千鳥(読み)はまちどり

精選版 日本国語大辞典 「浜千鳥」の意味・読み・例文・類語

はま‐ちどり【浜千鳥】

[1] 〘名〙 浜辺にいるちどり。浜つ千鳥。《季・冬》
※是貞親王歌合(893)「はまちどり秋としなれば朝霧に方まどはして鳴かぬ日ぞなき〈壬生忠岑〉」
[2] 「あと」にかかる。浜にいるちどりが、砂の上を歩いてつけた足跡の意。
※清慎公集(970頃)「いつしかと明て見たれば浜千鳥跡あることに跡の無哉」
[3] 沖縄の舞踊曲。浜辺の宿りに親を忍ぶなど旅情哀愁を歌う。踊りは浜辺に飛び交う千鳥の姿を表現する。囃子詞からチジュヤーともいう。
[語誌](1)記紀歌謡には、「浜つ千鳥」の例があるが、「万葉集」には、「浜つ千鳥」も「浜千鳥」も見られない。しかし、「千鳥」の例は見られ、その多くは、「佐保川」に鳴く鳥として詠まれている。
(2)古今集時代には,(一)の挙例の壬生忠岑の歌のように、上代に見られた「浜つ千鳥」が一語化されて「浜千鳥」となる。ところが、「古今集」に収められた「浜千鳥」の歌は、中国古代の黄帝時代に蒼頡(そうけつ)が鳥の足跡を見て漢字を作ったという故事を踏まえて詠まれた「忘られん時しのべとぞはま千鳥ゆくへも知らぬ跡をとどむる〈よみ人しらず〉」(雑下)一首であり、以後しばらくその影響下に「浜千鳥」が詠まれ、砂浜についた足跡を筆跡や手紙に見立てたり、千鳥が砂浜を踏む意の「踏み」と、手紙の意の「文(ふみ)」とを掛けたりする。
(3)新古今集時代になると、「白浪羽打かはし浜千鳥かなしき物は夜の一声源重之〉」〔新古今‐冬〕のように、純粋な冬の景物として詠まれるようになる。

はんま‐ちどり【浜千鳥】

〘名〙 「はまちどり(浜千鳥)」の変化した語。
※虎明本狂言・千鳥(室町末‐近世初)「はんまちどりの友よぶこゑはと、拍子にかかっておほせられひ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「浜千鳥」の意味・読み・例文・類語

はま‐ちどり【浜千鳥】

浜辺にいる千鳥。 冬》
[類語]千鳥

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「浜千鳥」の解説

はまちどり【浜千鳥】

岩手の日本酒。酒名は、陸中海岸に舞う千鳥の美しい風情にあやかり命名純米大吟醸酒、大吟醸酒純米吟醸酒、吟醸酒、純米酒、本醸造酒がある。全体的に味わいは辛口。平成2、10、13、17、18、20、24~26年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。原料米は山田錦、吟ぎんが、美山錦など。仕込み水は仙磐山の伏流水。蔵元の「浜千鳥」は大正12年(1923)創業。所在地は釜石市小川町。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「浜千鳥」の解説

浜千鳥〔曲名〕

日本の唱歌の題名。作詞:鹿島鳴秋、作曲:弘田龍太郎。発表年は1919年。2007年、文化庁と日本PTA全国協議会により「日本の歌百選」に選定された。

浜千鳥〔菓子〕

石川県金沢市、石川屋本舗が製造・販売する銘菓。豆粉を使った洲浜の中に粒餡を入れくるみを添えたもの。

浜千鳥〔日本酒〕

岩手県、株式会社浜千鳥の製造する日本酒。純米大吟醸酒、純米酒、本醸造酒などがある。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android