浅草紙(読み)あさくさがみ

精選版 日本国語大辞典 「浅草紙」の意味・読み・例文・類語

あさくさ‐がみ【浅草紙】

〘名〙 粗末な紙を材料にした、下等なすきかえし紙。落とし紙などに使う。江戸時代浅草山谷あたりから産出されたところからいう。
※俳諧・誹枕(1680)中「浅草紙塵ぞ金山江戸の春〈友里〉」

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デジタル大辞泉 「浅草紙」の意味・読み・例文・類語

あさくさ‐がみ【浅草紙】

古紙・ぼろきれなどを材料にしてき返した下等の紙。落とし紙や鼻紙などに用いる。元禄年間(1688~1704)に浅草の山谷さんや辺りで多く製造されたところからいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浅草紙」の意味・わかりやすい解説

浅草紙
あさくさがみ

江戸時代に、江戸・浅草山谷(さんや)付近で生産された雑用紙。故紙原料とした漉(す)き返し紙で、普通は色が黒く、黒保(くろほう)とよばれて鼻紙や落し紙に広く使われた。また、漉き返す前に石灰水で蒸解し直したものは色が白く、白保(しろほう)と称して低級本の用紙にも使用された。佐藤信淵(のぶひろ)の『経済要録』(1827)に、「江戸近在の民は、抄(すき)返し紙を製すること、毎年十万両に及ぶ」とあるように、れっきとした製紙産業の一つであった。庶民の日常生活に欠かせないものであったため、江戸時代の川柳などにもよく出てくる。明治以後この地が繁華街となるにつれて、製紙業は周辺の地に分散移転したが、さらに洋式の機械製紙が地方で盛んになるにつれ、手漉きの零細業者はしだいに転廃業して跡を絶った。しかし浅草紙の名は、形や産地が変わってもなお長く庶民に親しまれている。

[町田誠之]

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改訂新版 世界大百科事典 「浅草紙」の意味・わかりやすい解説

浅草紙 (あさくさがみ)

廃紙をすき返してつくった,ねずみ色の最下等のちり紙。江戸時代に浅草地区でつくられたのでこの名がある。
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百科事典マイペディア 「浅草紙」の意味・わかりやすい解説

浅草紙【あさくさがみ】

廃紙をすき返して作った,ねずみ色の最下等のちり紙。江戸時代に浅草地区で作られたのでこの名がある。バージンパルプからつくられるティッシュペーパー,トイレット用ロール紙の普及により,現在ほとんど見られなくなった。

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デジタル大辞泉プラス 「浅草紙」の解説

浅草紙

東京都の浅草・山谷・千住などの地区で、江戸期に生産された和紙。古紙を溶かして漉きなおした粗悪な再生紙であったが、庶民の日用紙として多く用いられた。

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