(読み)ながす

精選版 日本国語大辞典 「流」の意味・読み・例文・類語

なが・す【流】

〘他サ五(四)〙
[一] 液体が流れるようにする。
① 水などの液体を低い方へ移動させる。流れるようにする。
※拾遺(1005‐07頃か)賀・二九一「松をのみときはと思ふに世とともにながす泉も緑なりけり〈紀貫之〉」
② 特に、血、涙、汗などをしたたらせる。
※続日本後紀‐嘉祥二年(849)三月二六日「汗流(ながシ)(お)ぢ恐(かしこ)まる」
※竹取(9C末‐10C初)「翁、女、血の涙をながしてまどへどかひなし」
③ 人や物を、液体とともに移動させる。水によって運ばせる。また、流して失う。
※万葉(8C後)七・一一七三「飛騨人の真木流(ながす)といふ丹生の川言(こと)は通へど船そ通はぬ」
※平家(13C前)四「三百余騎、一騎もながさず、むかへの岸へざとわたす」
④ からだに湯や水をかけて洗う。垢(あか)を洗い落とす。
※俳諧・花摘(1690)下「家子仕はぬもたのもしき妻〈遠水〉 白き手に流す背(せなか)をかこつらん〈岩翁〉」
⑤ (比喩的に) 電気が流れるようにする。また、電波にのせて声や音楽などをひびかせる。「音楽を流す」
[二] だんだんと移動させる。また、移動してもとの所へもどらないようにする。
① 広くゆきわたらせる。流布させる。
※竹取(9C末‐10C初)「なんぢらが君の使と名をながしつ」
※春の城(1952)〈阿川弘之〉二「情報をもう少し流して貰うように」
② 杯などを、順にめぐらせる。
※散木集注(1183)「流しつるけこのみわもり数添てさやたの早苗とりもやられず 顕注云 ながしつるとは、下臈は、酒もりをばながすと云なり。又曲水宴には盃を流して飲めば、うるはしき事にもながすといひつべし」
③ 流罪に処する。
※書紀(720)斉明四年一一月(北野本訓)「守君大石を上毛野国に、坂合部薬を尾張国に流(ナカス)
④ (自動詞的に用いて) 遊里で、家に帰らないで遊び続ける。居続けする。
洒落本・傾城買四十八手(1790)真の手「それにかう流(ナガ)して居るなぞとは」
⑤ (自動詞的に用いて) 芸人・タクシーなどが、客を求めてあちこち移動する。また、芸人などが往来で楽器の音を響かせる。
※歌舞伎・紋尽五人男(1825)四幕「おれが猿廻しで流さうぢゃアねえか」
⑥ (自動詞的に用いて) 特にこれといった目的なしに町中などを歩く。ぶらぶら行く。
※談義本・つれづれ睟か川(1783)二「十月比の水鳥のやうに、あちらへながし、こちらへ歩行(ナガシ)
⑦ 正規のやり方によらないで売り渡す。
※蛙のこえ(1952)〈大宅壮一〉処女地「出来上ったプリントを地方の常設館に比較的安い値段で流した」
[三] 物事が不成立になるようにする。また、横にそれるようにする。
① 質物を受けもどさないうちに期限が切れて、その所有権を失う。
高野山文書‐永仁七年(1299)四月二八日・ずいしゃう利銭借劵「かのせにをことしの十二月をすき候まてになしまいらせ候はすは、なかくなかしまいらせ候へし」
※浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)長町の段「其質は半年前に流した」
② 心に留めないようにする。聞き流す。
※浄瑠璃・源氏冷泉節(1710頃)上「親の名残りも身のうさも、何のままよとながせども」
③ 行くべき所へ行かなかったり、すべきことをなおざりにしたりする。
※洒落本・遊子方言(1770)発端「新が会の時にゃ、おら行(いか)なんだ。すべて此ごろは、通り者が会をながす」
④ 他にそれるようにする。目的物に当たらないように相手の攻撃をはずしたり、視線を横にそらしたりする。
御伽草子弁慶物語(室町時代小説集所収)(室町末)「たがひに、手なみの程を、見せんとて、うけつ、なかしつして」
⑤ 流産させる。また、堕胎する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※浄瑠璃・栬狩剣本地(1714)三「子はをろさうか、ながさうか」
⑥ 言いかけた謎に相手が答えることができないとき、その謎をとりさげる。また、謎を出題者にもどしてその心を解き示してもらう。
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第二「挑灯にはや釣鐘の夜か更る なかすかとくか謎の事わけ」
⑦ 全力を出さないで、手を抜いたり、らくなやり方にしたりする。「終わりの五〇メートルをながす」
※新撰大阪詞大全(1841)「ながすとは、手抜きすること」
⑧ 野球で、ながし打ちをする。「ライトへながす」

なが・れる【流】

〘自ラ下一〙 なが・る 〘自ラ下二〙
[一] たまってあふれたり、湧き出したりした液体が移動する。
① 水などの液体が自然に低い方へ移り動く。
※万葉(8C後)五・九九一「石走り激ち流留(ながるる)泊瀬川絶ゆることなくまたも来て見む」
※古今(905‐914)恋一・五三七「あふさかの関にながるるいはし水いはで心におもひこそすれ〈よみ人しらず〉」
② 特に、血・涙・汗などがしたたり落ちる。たれる。
※万葉(8C後)三・四五三「吾妹子が植ゑし梅の樹見るごとにこころ咽(む)せつつ涙し流(ながる)
※竹取(9C末‐10C初)「帰る道にてくらもちの御子、血のながるるまで調ぜさせ給ふ」
③ 雨や雪などが降る。
※万葉(8C後)五・八二二「わが園に梅の花散るひさかたの天(あめ)より雪の那何列(ナガレ)くるかも」
④ 人や物が、液体とともに動いて行く。水などに運ばれて行く。
※書紀(720)継体七年九月・歌謡「隠国(こもりく)の 泊瀬の川ゆ 那峨例(ナガレ)くる 竹の い組竹世竹」
※蜻蛉(974頃)下「かは水まさりて、人ながるといふ」
⑤ 水が移動するような感じで物事が動いて行く。水面に浮かびただようように静かに動く。また、横になびく。
※万葉(8C後)一〇・一八二一「春霞流(ながるる)なへに青柳の枝くひ持ちて鶯鳴くも」
※伊豆の踊子(1926)〈川端康成〉一「障子を明けると強い火気が流れて来た」
[二] 物事の状態、時などが移り動く。また、ある傾向や方向が示される。
① 時間・月日・年月がしだいに経過して行く。移る。
※古今(905‐914)冬・三四一「昨日といひけふとくらしてあすかがは流(ながれ)てはやき月日なりけり〈春道列樹〉」
② 次第に広まって行く。世に流布する。
※万葉(8C後)二・二二八「妹が名は千代に流(ながれ)む姫島の子松が末(うれ)に蘿(こけ)むすまでに」
※観智院本三宝絵(984)中「仏法東にながれてさかりに我国にとどまり」
※階級(1967)〈井上光晴〉四「そんな噂が流れとるなら」
③ 物事が移り変化していく。特に、杯が順々に人々の手に回る。
※源氏(1001‐14頃)行幸「かはらけあまたたびながれ、皆酔(ゑひ)になりて」
※稲熱病(1939)〈岩倉政治〉四「さうなって来ると、もう話はとめどなく天候の方へ流れて行き」
④ 生きながらえる。また、長い期間にわたる。
※古今(905‐914)恋五・七九二「水のあわの消えでうき身といひながら流て猶もたのまるる哉〈紀友則〉」
⑤ 罪を得て、流人となる。また、特別な目的もなくある土地から他の土地へと移動する。さすらう。
※蜻蛉(974頃)中「いかなるとがまさりたりけむ、てんげ人々なかるるとののしることいできて」
※人情本・春色恵の花(1836)初「此様(こん)な田舎へ流れて来ずとも」
⑥ その方に傾く。物事の状態があまり好ましくないある傾向に向かう。
文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初「其もとは沓の形ちに造ったもので厶らうが、段々簡便にながれて、今の様な麁末な製に成たものと見える」
⑦ ある考え方や感情などがその表現の底に認められる。
※東京の三十年(1917)〈田山花袋〉地理の編纂「ダンヌンチオやイブセンやビヨルンソンやハウプトマンの作を流れてゐる新しい思想は」
[三] しっかりした状態を保てないでぐらつく。また、物事が不成立になる。
① 力がはいらないでふらつく。
曾我物語(南北朝頃)一「河津が膝、すこしながれて見え候」
② 当てようとする目的物からそれる。はずれる。「刀が流れる」
③ 質物をうけ出す期限が切れて所有権がなくなる。
言国卿記‐文明一〇年(1478)九月一四日「教豊卿御代質物に入、流之処に、大沢長門守重康請出、于今所知行也」
④ ある状態が不成立になる。特に、試合、催し物などが何かの事情で行なわれなくなる。ゲームなどできまりによってその回の勝負がやり直しになることもいう。
※行人(1912‐13)〈夏目漱石〉塵労「自分と三沢との間に緒口の付き掛けた談話は是で又流(ナガ)れて仕舞った」
⑤ 実を結ばないでだめになる。また、流産する。
※細川忠興文書‐寛永七年(1630)八月二三日「中宮様御誕生の王子ながれ申す由に候」

ながし【流】

〘名〙 (動詞「ながす(流)」の連用形の名詞化)
① 流罪にすること。「島流し」
② 台所や井戸端などに設けた、ものを洗ったり、洗い水を流し捨てたりする場所。また、風呂場などでからだを洗う場所。
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)五「向ふのながしに、かの年増らしいやつが、なにかあらってゐるから」
※生(1908)〈田山花袋〉一「三助は空いた桶をがたんがたんと流しの一隅に片寄せて行った」
風呂屋で入浴する人の背などをこすり洗うこと。また、その職業の人。流し男。さんすけ。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「ながしのをとこ留桶と小をけ二つへ、湯を汲でおき、せなかをながしに来たり」
④ かまわずに放っておくこと。
※洒落本・深川新話(1779)「『大文字屋のはどうなせんした』『ナアニあいらアずっとながしさ』」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「流板(ナカシ)を砂で磨(みがく)が能(いい)
⑥ 「ながしぎ(流木)」の略。
※浮世草子・立身大福帳(1703)六「ながしの椅はざう木よりはそんなり」
⑦ 「ながしえだ(流枝)」の略。
※俳諧・新続犬筑波集(1660)一八「まりはなはいけたるえだもなかしかな〈勝春〉」
⑧ 芸人、按摩(あんま)などが、三味線などを弾いたり、笛を鳴らしたりして、客を求めて歩き回ること。また、その人。芸人が往来を歩くときに演奏する特別な三味線の曲もいう。
※歌舞伎・紋尽五人男(1825)四幕「猿の面がある。そいつは流しの道具になりさうなものだが」
※別れた妻に送る手紙(1910)〈近松秋江〉「新内の流しが通って行った」
※随筆・守貞漫稿(1837‐53)三二「流しと云は或は種々の扮を摸し或は平服にぼてかづらを着し一言の滑稽或は諧謔をなして行き過るを云」
⑩ 客や対象を求めてあちこち移動すること。また、そのような人。
※白粉とガソリン(1930)〈川端康成〉一「彼の円タクは流(ナガ)しをやらない」
※復員殺人事件(1949‐50)〈坂口安吾〉四「ああいう流しの泥棒は苦手でしてネ」
⑪ 能楽および長唄で、大鼓・小鼓や太鼓を演奏する時の手法の一つ。同種の音を連続して打つ演奏をいう。
※花伝髄脳記(1584頃)灌頂之巻「大鼓の一せい、品々あるべし。第一、なかしは何の所ぞ」
※咄本・無事志有意(1798)畳算「此かんざしは流しでおっす」
⑬ 南風をいう。
※俚言集覧(1797頃)「流し〈略〉つばなながし〈三四月の南風を云〉筍ながし〈四五月の南風を云〉是ら又すべてナガシとばかりも云」

ながれ【流】

[1] (動詞「ながれる(流)」の連用形の名詞化)
① 水などが自然に低い方へと移動すること。また、その状態やそのもの。流水や流勢。
※万葉(8C後)一〇・二〇九二「この川の 行(ながれ)の長く ありこせぬかも」
※方丈記(1212)「ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」
② 杯に残る酒のしずく。→おながれ
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「今は、みすのうちより、ながれの御かはらけ給はらばや」
③ 蝋など、とけて垂れ落ちるもの。
※歌舞伎・浮世柄比翼稲妻(鞘当)(1823)二番目序幕「蝋燭の流れや紙屑をただ遣るのは惜しい物だ」
④ 時の経過や物事の移り変わり。また、大勢の人が通りを往来するさまのたとえ。
※毛利先生(1919)〈芥川龍之介〉「すべてを押し流す『時』の流も」
※寝顔(1933)〈川端康成〉「観音へ詣でる仲見世通の人の流れは」
⑤ 血統や系統。また、技芸などの流儀・流派。
※古今(905‐914)仮名序「小野の小町は、いにしへのそとほりひめの流なり」
⑥ 質物をうけ出す期限が切れて所有権がなくなること。また、そうなった質物。
※俳諧・寛永十三年熱田万句(1636)一八「ごみ吹はらひ跡はゆふだち からげ置質のなかれのさび刀〈友重〉」
⑦ 流罪(るざい)になること。流刑(るけい)。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑧ あてもなくさすらうこと。定めない境遇。また、その者。特に、遊女や遊里をいう。「流れの者」「流れの身」
※浮世草子・好色一代女(1686)一「惣じて流(ナガ)れのこと業禿立(かぶろだち)より見ならひわざとをしへる迄もなし」
⑨ 催し物・会合・計画などがとりやめになること。中止。
※滑稽本・古朽木(1780)一「親心の因果で、勘当の段は流(ナガレ)になり」
⑩ 胎児が死んで生まれること。流産。
※新羅社服忌令(1425)「生流(ナガレ)胎内而死 百日」
⑪ 屋根の傾斜の度合。
⑫ 長く横に伸びているような地形。
※菅江真澄遊覧記(1784‐1809)楚堵賀浜風「流とは山の尾、あるは、岨などのごとくよことふをいへり、なだれといふ詞にや」
⑬ 歌舞伎の出語りなどで、山台や雛壇に居並ぶ演奏者のうち、中央の立唄・立三味線に対し左右の最末座にすわる者の称。
※雑俳・柳多留‐七二(1820)「尻目にて流へ渡すしん語り」
⑭ 会合などを終えた人々の群れ。また、主たる会合に続く会。二次会。
※物質の弾道(1929)〈岡田三郎〉「祝典宴会の流(ナガ)れらしい七八人の青年紳士が」
[2] 〘接尾〙 旗・幟(のぼり)など、細長いものを数えるのに用いる。
※平家(13C前)六「にはかに旗を七ながれつくり」

りゅう リウ【流】

[1] 〘名〙
① 水などのながれ。
※謡曲・安宅(1516頃)「面白や山水に、杯を浮かめては、流(りう)に牽かるる曲水の」 〔孟子‐梁恵王・下〕
② 芸能・学術・武術などで、その人、その家に特有の手法・様式、また、その手法・様式の系統。流儀。流派。人名、その他の語に付けて用いることもある。
※古今著聞集(1254)一五「経信の流の啄木ををしへんずる也」
③ 先祖から子孫へとつながる血縁。血統。血すじ。
※教訓抄(1233)一「曾祖父か記録を伝得て尤も嫡家の流たり」 〔北史‐白建伝〕
④ 同じなかま。連中(れんじゅう)。手合(てあい)。やから。軽侮の気持を含んで用いた。
※浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中「皆あのりうが、心中か女郎の衣装を盗むか、ろくな事は出かさず」
[2] 〘語素〙
① ((一)②から転じて) 一般的な語に付いて、そのやり方、それに似せた方式である意を表わす。
※俳諧・生玉万句(1673)序「賤も狂句をはけば、世人阿蘭陀流などさみして、かの万句の数にものぞかれぬ」 〔漢書‐芸文志〕
② 数詞、または上・中・下などの語に付いて、質や程度、段階などを表わす。「一流」「二流」「上流」「中流」など。〔世説新語‐品藻〕

る【流】

〘名〙 令制で五刑の一つ。都から離れた辺地に追放して終身帰さず、他に移ることを禁じ、監視させるもの。妻妾は同行させ、父祖子孫はその意に任せた。罪の軽重によって、伊豆・安房・常陸などに配流する遠流(おんる)、信濃・伊予などへの中流、越前・安芸などへの近流の三等があった。りゅう。→流罪
※律(718)名例「凡犯流応配者、三流倶役一年」

ながら・う ながらふ【流】

〘自ハ下二〙 ⇒ながらえる(永)(一)

なが・る【流】

〘自ラ下二〙 ⇒ながれる(流)

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デジタル大辞泉 「流」の意味・読み・例文・類語

りゅう【流】[漢字項目]

[音]リュウ(リウ)(漢) (呉) [訓]ながれる ながす
学習漢字]3年
〈リュウ〉
水がながれる。水のながれ。また、水のようにながれるもの。「流域流血流水流体流動流入溢流いつりゅう下流海流貫流寒流気流逆流急流渓流源流合流細流支流水流清流濁流長流潮流底流泥流電流奔流
水とともにながれる。「流失流氷流木漂流浮流
川などにながす。「流灯放流
伝わり広がる。「流言流行流説流俗流弊
あてどなくさすらう。「流亡流民流離
罰として遠隔地に追いやる。「流刑流竄りゅうざん
とどこおりがない。「流暢りゅうちょう流麗
わきへそれる。「流弾流用
形をなさなくなる。「流会流産
10 一派をなすもの。血筋。系統。特有のやり方。「流儀流派亜流我流嫡流風流傍流末流門流
11 仲間。たぐい。また、階層。等級。「一流女流俗流名流上流階級操觚者流そうこしゃりゅう
〈ル〉
伝わり広がる。「流布
さすらう。「流転流浪
罰として遠隔地に追いやる。「流刑流罪流人遠流おんる配流
[名のり]とも・はる
[難読]流石さすが流離さすらい流行はや流鏑馬やぶさめ

る【流】

律の五刑の一。罪人を遠隔の地に送り、他に移ることを禁じた刑。より軽く、より重い。遠流おんる安房あわ常陸ひたち佐渡隠岐おき土佐など)、中流ちゅうる信濃伊予など)、近流こんる越前安芸あきなど)の区別があった。流刑。流罪。

りゅう〔リウ〕【流】

水などの流れ。
「杯を浮かめては―にかるる曲水の」〈謡・安宅
流儀。流派。また、系統。「柳生
「かたのごとくその―をこそ学び候へ」〈謡・関寺小町
仲間。手合い。連中。軽蔑けいべつの意を込めて用いた。
「皆あの―が、心中か女郎の衣裳を盗むか、ろくなことはでかさず」〈浄・冥途の飛脚
他の語の下に付いて、それ特有のやり方、それに似せたやり方であることを表す。「自己」「西洋」「彼のやり方」
数詞、または上・中・下などの語の下に付いて、質や程度・段階などを表す。「一の店」「中

る【流/留】[漢字項目]

〈流〉⇒りゅう
〈留〉⇒りゅう

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日本歴史地名大系 「流」の解説


ながれ

磐井郡を三区分する呼称の一で、西磐井・東山ひがしやまとともに中世から用いられた。郡の南部、現花泉町と一関市南部地域をさす。文治五年(一一八九)の奥州合戦後、葛西清重は源頼朝から多くの所領を与えられたが、そのなかに磐井郡の東山・西磐井とともに高倉たかくら郡の流二四郷、二迫にのはさま七郷・三迫さんのはさま一七郷(現宮城県)が含まれていたという(奥州葛西動乱記)。高倉郡は摂関家領庄園高鞍たかくら(高倉庄)に由来する呼称だが、当時郡名として用いられたかどうかは不明。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「流」の意味・わかりやすい解説


大宝律,養老律の五刑の一種。追放刑に徒役刑が加えられた自由刑で,配所の遠近によって遠中近の3流に分たれた。徒役はおのおの1年で,それ以後は,配所の戸籍に付せられる。なお律には,このほかに特に遠処に配して,役3年という加役流の制度が定められている。律令制にあっては,流は死刑と並んで重罪とされ,その判決は太政官の議を経て,勅裁によって慎重に確定されることとなっていた。なお日本においては,上代からこの中国法系に属する流刑とは別系統の「ハライ」の一種としての「流」,あるいは新羅・百済法系に属する「流」があって,それらは文字通り孤島に囚を捨てる島流しであった。流刑は明治初期の刑法典である『仮刑律』『新律綱領』にも正刑の一つとしてその刑名があげられているが,実施には困難があり明治3 (1870) 年 11月には「流」を,通常の徒刑より長期のそれに換えて執行する旨を示した「準流法」が定められた。『改定律例』においてそれに代わり懲役刑が行われることとなった。 (→杖〈じょう〉 , 徒〈ず〉 , 笞〈ち〉 )  

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「流」の解説


流罪・流刑とも。律の五罪の一つ。死についで重いもの。この刑に処せられることを配流という。本籍地からの強制移住と現地での1年間の労役をくみあわせた刑罰で,近流(ごんる)・中流・遠流(おんる)の3等がある。「隋書」倭国伝には「流」が,また「日本書紀」天武5年(676)8月条にはすでに「三流」の別もみえるが,記紀などによれば,古来犯罪人を辺境の地または島に追放する(はふる)という刑罰が行われており,日本律の流罪は,この固有法のうえに唐律の流刑の規定を継受して成立した。中世の武家法にも継承され,鎌倉時代には遠流1種となり,夷島(蝦夷が島)・伊豆大島・陸奥などへ流し,その地の御家人に監視させた。江戸時代には「公事方(くじかた)御定書」に遠島といい,伊豆七島・薩摩・五島の島々などに流していた。流罪の刑に処せられた人を流人といい,流人と配流場所を記したものを流帳といった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「流」の解説


律令制における刑罰の一つ
律の笞 (ち) ・杖 (じよう) ・徒 (ず) ・流 (る) ・死 (し) の五刑のうち,流刑は罪の軽重により配流地が異なり,遠流 (おんる) ・中流・近流に分けられた。遠流はそのうち最も重く死刑につぐ極刑。遠流は安房 (あわ) ・常陸 (ひたち) ・佐渡・隠岐などで,死罪は罪一等を減じて遠流とされることが多かった。

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デジタル大辞泉プラス 「流」の解説

流(りゅう)〔小説〕

東山彰良の私小説的ミステリー小説。祖父殺しの真相を追う17歳の主人公の彷徨を通じ、台湾の現代史を描く。2015年刊。同年、第153回直木賞受賞。台湾出身の作家による同賞の受賞は3人目。

流〔句集〕

安東次男の句集。1996年刊行(ふらんす堂)。1997年、第12回詩歌文学館賞(俳句部門)受賞。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【中国法】より

…さらに法制の背景をなす社会構造も根本から異なっているので,もし律令という名を共通にするという理由で,両者の社会を等質とみなそうとするならば,大きな過誤に陥るおそれがある。律令格式 唐律に定める刑罰に五等あり,これを五刑と称するが古代の肉刑の五等とは異なり,笞・杖・徒・流・死をいう。笞も杖も背を鞭打つ刑であるが,竹または木をもってつくり,笞は細く杖は太い。…

【懲役】より

…すなわち,受刑者が心神喪失状態になった場合は必ず(刑事訴訟法480条),刑の執行によって著しく健康を害するおそれがあるとき,70歳以上であるとき,妊娠150日以上および出産後60日未満のとき,刑の執行によって回復不可能な不利益を生じるおそれがあるとき,祖父母または父母が70歳以上または重病ないし不具で,ほかに保護する親族がないとき,子または孫が幼年で,ほかに保護する親族がないとき,その他重大な事由があるときには,検察官の裁量によって執行停止される(482条)。監獄拘置とともに定役賦科を刑罰内容とする点が,禁錮・拘留との違いであるが,このような懲役を中心的な自由刑とした背景には,18,19世紀のヨーロッパにおいて,自由刑が死刑に取って代わった際に,浮浪者や軽罪者に強制作業を課した懲治場とガレー船漕奴刑や植民地流刑等にみられる受刑者使役の伝統のうえから,単なる施設拘禁では刑罰内容として不十分とされたことがうかがわれる。このような懲役は,18世紀の監獄改良家J.ハワードの唱えた労働をとおしての犯罪者改善という理想とともに,19世紀にも経済的意味のない空役として現実化したこらしめのための苦役をも担うものであった。…

【懲役】より

…すなわち,受刑者が心神喪失状態になった場合は必ず(刑事訴訟法480条),刑の執行によって著しく健康を害するおそれがあるとき,70歳以上であるとき,妊娠150日以上および出産後60日未満のとき,刑の執行によって回復不可能な不利益を生じるおそれがあるとき,祖父母または父母が70歳以上または重病ないし不具で,ほかに保護する親族がないとき,子または孫が幼年で,ほかに保護する親族がないとき,その他重大な事由があるときには,検察官の裁量によって執行停止される(482条)。監獄拘置とともに定役賦科を刑罰内容とする点が,禁錮・拘留との違いであるが,このような懲役を中心的な自由刑とした背景には,18,19世紀のヨーロッパにおいて,自由刑が死刑に取って代わった際に,浮浪者や軽罪者に強制作業を課した懲治場とガレー船漕奴刑や植民地流刑等にみられる受刑者使役の伝統のうえから,単なる施設拘禁では刑罰内容として不十分とされたことがうかがわれる。このような懲役は,18世紀の監獄改良家J.ハワードの唱えた労働をとおしての犯罪者改善という理想とともに,19世紀にも経済的意味のない空役として現実化したこらしめのための苦役をも担うものであった。…

【流刑】より

…労働に従事させる場合も多い。流刑に処された土地を流刑地という。日本では流罪(るざい)ということが多く,また江戸時代には離島に送る刑を遠島といった。…

※「流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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