流下式塩田(読み)りゅうかしきえんでん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「流下式塩田」の意味・わかりやすい解説

流下式塩田
りゅうかしきえんでん

塩田一種。日本で古くから行われた揚浜式塩田入浜式塩田に代って第2次世界大戦後に本格的に開発された方式で,1950年代から日本における塩田の主力となった。 120分の1~150分の1の緩勾配,長さ 20~25mの不透水地盤表面に散砂をおき上部から海水を流して水分を蒸発させ,下部濃縮塩水を集める。枝条架式濃縮装置を組合せることによって入浜式塩田の3倍近くの生産を行なった。海水を汲み上げたり,砂を動かしたりする労働力が不要となったため生産性の高い塩田法であったが,72年の第4次塩業整備によってイオン交換膜法製塩に全面的に取って代られ,消滅した。

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防府市歴史用語集 「流下式塩田」の解説

流下式塩田

粘土を貼ったゆるやかに傾いた流下盤[りゅうかばん]という地盤にゆっくり海水を流し、太陽熱を利用して水分を蒸発させる方式の塩田です。さらに枝条架[しじょうか]という、竹の枝を逆さにつり下げた棚の上からかん水を流して、風の力で水分を蒸発させ、この作業を繰り返してより濃度の高いかん水をとります。この太陽熱と風力を使う2つの行程を組み合わせ、少ない時間と労働力で効率よくかん水の塩分濃度が上がるようにしました。

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世界大百科事典(旧版)内の流下式塩田の言及

【塩田】より


【種類】
 古来からの製塩法を分類すると図のようになるが,このうち(6)~(13)が塩田である。ただし(17)も通常流下式塩田という。塩田は基本的には揚浜系と入浜系に分けられる。…

【塩】より

…これに加えて日露戦争の戦費調達のため1905年から塩の専売制が施行された。第2次世界大戦から戦後にかけて,深刻な塩不足の時代に見舞われたが,その後,国内塩の増産対策が進められ,1952年ころから枝条架併用の流下式塩田により,生産能力は飛躍的に増大した。しかし,生産費は輸入塩に対抗できなかったので,59年には〈塩業整備臨時措置法〉により,生産性の低い塩田を廃止し需給の均衡がはかられた。…

※「流下式塩田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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