法系(読み)ほうけい(英語表記)legal systems
familles de droit[フランス]
Rechtskreise[ドイツ]

精選版 日本国語大辞典 「法系」の意味・読み・例文・類語

ほう‐けい【法系】

〘名〙
[一] (ハフ:) 異国家間または異民族間に、継受によって形成される法の系統。英米法系、大陸法系、ドイツ法系など。〔現代語解説(1924‐25)〕
[二] (ホフ:) 仏教で各宗派の系統。
空華日用工夫略集‐康暦二年(1380)四月三日「法系瓜葛之義、於是乎在矣」

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デジタル大辞泉 「法系」の意味・読み・例文・類語

ほう‐けい【法系】

(ハフ‐) 法律発生・継受に着目して分けられる法の系統。ローマ法系・英米法系・大陸法系など。
(ホフ‐) 仏教の各宗派の系統。

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改訂新版 世界大百科事典 「法系」の意味・わかりやすい解説

法系 (ほうけい)
legal systems
familles de droit[フランス]
Rechtskreise[ドイツ]

同族的法秩序から構成されるグループをいう。現在世界にはきわめて多数の法秩序があり,それら相互間には無数の異同がある。しかし共通な法様式を形成する要素に注目し,かつ,非本質的な相違を度外視して分類すれば,数個の母法秩序Mutterrechtsordnungおよびそれぞれの娘法秩序Tochterrechtsordnungから成る諸グループが得られる。これらが法系であり,法圏とか法族ともいわれる。法系の分類は19世紀以来試みられてきたが,当初進化論の影響下に〈人種〉を基準にした分類が一般的であった。しかし異なる人種間にもひんぱんに〈法の継受〉が行われており,最近ダビドRené Davidは,法技術とイデオロギーを基準として,ロマン・ゲルマン法族,コモン・ロー法族,社会主義法族および哲学的・宗教的諸法(日本法はこれに属する)の4法族に分類した。次いでツバイゲルトKonrad Zweigert(1911-96)とケッツHein Kötzは基準をさらに多元化して,(1)法秩序の歴史的な由来と発展,(2)その法秩序に支配的な,特殊な法学的思考方法,(3)とくに特徴的な法的諸制度,(4)法源の性質とその解釈および(5)イデオロギーをもって法秩序ないし法圏の独特な様式を形成する要素とみなし,これを基準にして,ロマン,ドイツ,北欧,コモン・ロー,社会主義,極東(日本法はこれに属する),イスラムヒンドゥーの8法圏に分類した。しかし,いかなる基準による法系分類も絶対的なものではありえない。たとえば社会主義下の中国法は極東法圏に入らず,日本の民法はドイツ法的基礎の上にフランス法の影響も受け,株式会社に関する法や独禁法はアメリカ法をモデルにしたという混血的な法である。このように法系の分類は時間的にも事項的にも相対的であるから,ダビドやツバイゲルトらの分類も再検討の必要があり,とくに研究の目的や対象によっては,別個の分類がなされるベき余地がある。それだけに,基本的な法系分類を提示すべき課題は,今後とも比較法学に課せられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法系」の意味・わかりやすい解説

法系
ほうけい

甲国から乙国に法が継受された場合、両国の間に「法系」の関係があるといい、甲国を母法国、乙国を子法国という。古代ローマ法を継受したヨーロッパ大陸法はローマ法系に属し、近代以後この大陸法を継受した日本やトルコはローマ法系ないし大陸法系に属する。大陸法系はさらにドイツ法系、フランス法系などに分かれる。ロシア法も概して大陸法系に属していたが、ロシア革命によって新たな法性格が加わり、ソビエト法を継受した諸国によって、社会主義法系という新たな法系が生じた。イギリス法は元来ゲルマン法系に属するが、独自の発展を示し、アメリカや旧植民地などに継受されてコモン・ロー法系(英米法系)を形成している。イスラム圏はイスラム法系を形成している。インドや中国は独自の法体制をもっていたが、近代においては西洋諸国の法系の支配を受けつつある。日本は律令(りつりょう)制の導入によって中国法系を受け入れ、土着性と中国性の対立と妥協の歴史をたどったが、明治以後は大陸法系に属し、第二次世界大戦後は英米法系の部分的影響をも受けている。

[長尾龍一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法系」の意味・わかりやすい解説

法系
ほうけい

世界に存する多数の法秩序を一定の基準に従って,その親縁関係に応じ分類した場合,同一の系統に属するもの。非技術的な概念の法圏を法系と同義に用いることもある。法系の分類法は学者によって異なるが,元来相対的なものであり,ある国の法の各部門が相異なる法系に分類されることもあれば,ある国の法が時代によって別個の法系に属することもある。英米法系 (イギリス法系) と大陸法系 (ローマ法系) は今日の国際社会の基本的法系とされるが,分類上からも他に若干の法系が存在している。

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