法眼(読み)ほうげん

精選版 日本国語大辞典 「法眼」の意味・読み・例文・類語

ほう‐げん ホフ‥【法眼】

〘名〙
仏語。五眼の一つ。仏法の正理を見る智慧の目。菩薩はこれによって、一切の事物を観察して衆生を救う。法眼浄。
教行信証(1224)六「言縦尽千年寿法眼未曾開」 〔無量寿経‐下〕
今昔(1120頃か)一四「彼の律師法眼、鮮にして、手に香炉を取て、来て」
中世以後、僧侶に準じて、医師仏師、経師、画工、連歌師など法体の者に授けられた位。近世には、幕府の医師も授けられた。
古今著聞集(1254)一一「絵師大輔法眼賢慶が御弟子に」

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デジタル大辞泉 「法眼」の意味・読み・例文・類語

ほう‐げん〔ホフ‐〕【法眼】

仏語。五眼の一。諸法を見る智慧の眼。菩薩ぼさつのもつ、衆生を済度するための諸事象の真相を知るという眼。
《「法眼和尚位」の略》法印に次ぐ僧位僧綱そうごう僧都そうず相当
中世以後、僧に準じて医師・絵師・仏師・連歌師などに与えられた称号

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百科事典マイペディア 「法眼」の意味・わかりやすい解説

法眼【ほうげん】

日本僧位の一つ。僧綱(そうごう)の中級位。法眼大和尚(かしょう)位とも。僧都に授けられる位で,官位でははじめ正3位に相当。864年遍昭(へんじょう)が叙せられたのが最初。中世・近世では法印法橋(ほっきょう)と同じく僧以外の医者や絵師,連歌師などにも与えられた。
→関連項目絵仏師奥医師定慶定朝

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法眼」の意味・わかりやすい解説

法眼
ほうげん

僧位の第二階で、僧階の僧都(そうず)にあたり、法眼和尚(わじょう)位僧都という。初め僧綱(そうごう)所の役人としての定員があったけれども、のちに単なる敬称となった。とくに仏師、絵師、武家、坊官の敬称に用いられた。僧都でない凡僧に法眼位が授けられたのは869年(貞観11)の遍昭(へんじょう)(のちに僧正(そうじょう))であったといわれ、僧位の乱れは古いものであった。高野山(こうやさん)では学侶(がくりょ)70歳以上はすべて法眼位、行人(ぎょうにん)は衆議一﨟(いちろう)のみをこれに任じた。また浄土真宗にも法眼位があった。

[五来 重]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法眼」の意味・わかりやすい解説

法眼
ほうげん

(1) 仏教用語。菩薩が衆生を救うために一切の法門を照見する眼。五眼 (ごげん) の一つ。 (2) 僧位の呼称。正しくは法眼和尚位。貞観6 (864) 年法印などとともに定められた僧位で,僧都の僧綱に授けられた。のちには貴族の子息に授けられることが多くなり,俗位五位殿上人に準じる位となった。さらにその人数も増加し,次第に虚名となっていった。 (3) 中世以後医師,画師,連歌師などに授けられた位名。

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世界大百科事典(旧版)内の法眼の言及

【伝灯録】より

…北宋時代における禅の盛大化とともに,士大夫の教養書の一つとなり,禅の本の権威となって,仏祖の機縁問答を一千七百則の公案と呼ぶのは,本書に収める仏祖の数字に基づく。編者道原の伝は不明であるが,五代より北宋にかけて,江南金陵を中心に盛大となる法眼下3世の弟子の一人で,本書に立伝する宗鏡の編者延寿と同門らしく,法眼の動きを伝えることが詳しい。したがって,本書は法眼に集大成される,そのような唐末五家の実態を知るのに便利であるが,これを臨済禅中心に受け継ぐ《天聖広灯録》,雲門禅中心に受け継ぐ《建中靖国続灯録》,および再び宋代臨済禅中心の《宗門連灯》《嘉泰普灯録》の5本を合わせて,のちに《五灯会元》20巻が編まれる。…

※「法眼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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