法度(読み)はっと

精選版 日本国語大辞典 「法度」の意味・読み・例文・類語

はっ‐と【法度】

〘名〙
① おきて。さだめ。法律。法。
※玉葉‐承安二年(1172)正月二日「彼者専礼義、故足員数、是者不法度、何必定其数
仮名草子浮世物語(1665頃)二「威勢の強きを頼みて万の法度(ハット)を軽しめ、乱りがはしく公義を侮り」 〔書経‐大禹謨〕
② 法として禁ずること。禁令。禁制。さしとめ。
※虎明本狂言・花折新発意(室町末‐近世初)「法度じゃ程に、そとからもみせぬと云」
浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)五「御家来の外出入の者は、一人も夜るとめらるる事は堅き御法度(ごハット)にて」
③ 法にてらして処罰すること。刑。とが。しおき。
御伽草子二十四孝(室町末)王衰「父の王義、不慮の事によりて、帝王よりはっとに行はれ、死けるを恨みて」

はっ‐とう【法度】

洒落本浮世四時(1784)「のぞきははっとふだ」

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デジタル大辞泉 「法度」の意味・読み・例文・類語

はっ‐と【法度】

禁じられていること。してはならない事柄。「酒の席で仕事の話は御法度だよ」
おきて。法。特に、中世・近世における法令。江戸幕府が制定した武家諸法度禁中並公家諸法度など。
[類語](1禁止禁制禁断禁令禁遏きんあつ禁圧厳禁無用差し止め駄目だめ禁忌禁ずる取り締まる制する/(2法律法典法網のりほう法令法規法制国法公法典範条令条規禁令ロー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法度」の意味・わかりやすい解説

法度
はっと

中世・近世において法令を意味する語。戦国時代に、肥後(熊本県)相良(さがら)家にみられるように、分国法典を何々法度とよぶものがあったが、江戸幕府が禁中並公家諸法度(きんちゅうならびにくげしょはっと)(禁中并公家中諸法度)、武家諸法度という法令を制定してより、法令、ことに基本的な法令を法度とよぶことが行われるようになった。武家諸法度のように重要なものは、老中将軍裁許を経て制定した。普通の法令は法度の名を帯びることなく、庶民に触れられるものは触書(ふれがき)、奉行(ぶぎょう)などの役人に対するものは達(たっし)の形式で発せられた。何々法度とよばれるもののなかには、のちに付名したものもあるから、注意しなければならない。たとえば、諸士法度とよばれるものは「条々」として制定されたもので、後人がこれに「諸士法度」という名称を与えたのである。

石井良助

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改訂新版 世界大百科事典 「法度」の意味・わかりやすい解説

法度 (はっと)

法も度も〈のり〉(法則,規則)の意で,おきて,さだめ,法を意味する言葉。鎌倉幕府はもちろんのこと室町幕府も戦国時代に至るまで,みずからの制定法を〈法度〉と称した例はない。もちろん〈法度〉という言葉自体は中世を通じて使用されているが,この場合も公権力の制定法をさすのではなく,〈おきて〉〈さだめ〉などの意で用いられている。この〈法度〉が公権力の制定法をさす称呼として一般的に現れるのは,戦国大名の個別法令である分国法においてであり,やがてこれが江戸幕府にも継承され,武家諸法度のように制定法の名称として定着した。この法度と称された法は,禁法・禁令的性格が強かったためか,その後,法度という語には禁制を意味する用例がみられ,江戸時代には一般的用語として禁止,さらには刑罰を意味する語としても使用されるに至った。
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普及版 字通 「法度」の読み・字形・画数・意味

【法度】ほう(はふ)ど

法律と制度。漢・賈誼〔過秦論、上〕是の時に當り、君之れを佐(たす)け、に法度を立て、を務め、守戰の備へを修め、外衡(れんかう)して侯を鬪はしむ。

字通「法」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「法度」の意味・わかりやすい解説

法度【はっと】

中世・近世の法規。戦国大名の分国法において公権力の制定法を意味する呼称となる。江戸時代は武家諸法度禁中並公家諸法度寺院法度等が有名。江戸中期以後は法度を〈禁制〉の意味にも用いるようになった。
→関連項目掟書

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法度」の意味・わかりやすい解説

法度
はっと

法制史にみえるもので,法令を意味する。戦国時代の分国法において,法典名として,「式目」「壁書」などと並んで用いられた。『相良氏法度』『甲州法度』『結城氏新法度』『吉川氏法度』などは,特に有名である。江戸幕府は,この分国法の例にならい,その中心的法典を,『武家諸法度』『禁中並公家諸法度』と命名した。

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