法学提要(読み)ほうがくていよう(英語表記)Institutiones

改訂新版 世界大百科事典 「法学提要」の意味・わかりやすい解説

法学提要 (ほうがくていよう)
Institutiones

一般には法学入門書を意味し,ローマ古典期法学者の何人かの著作があるが,その中で,私法を人,物,訴訟区分しその順序で理解しやすく叙述したガイウスの《法学提要》4巻がとりわけ重要である。ユスティニアヌス1世法典編纂に際し,ガイウスのそれをもとに,その後の法の変更を併せ考慮した《法学提要》4巻をテオフィルスおよびドロテウスに作成させ,533年学説彙纂と同時にこれに法的効力を付した。なお,今日,学説彙纂の用いたパンデクテン方式に対比して,《法学提要》にならって人,物,訴訟の区分により編纂された法典は,インスティトゥーティオーネン式と呼ばれ,19世紀初頭の代表的私法典であるオーストリア民法典,フランス民法典はともにこれに属する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法学提要」の意味・わかりやすい解説

法学提要
ほうがくていよう
Institutiones Iustiniani

ユスチニアヌス帝はビザンチン帝国の版図を拡張するとともに,当時混乱していた法律統一整備するため一大立法事業を興すにいたった。この立法事業の一部として,法学校の1年次生の学生のための教科書であって,同時に法典の効力を有するものとして編纂されたのが,『法学提要』である。 533年 11月 21日に公布され,同 12月 30日に『学説彙纂Digesta施行期日同日をもって施行された。ガイウスの私著『法学提要』を主たる資料とし,編別もこれにならって,第1巻は人の法,第2,第3巻は物の法,第4巻は訴訟の法および刑法刑事訴訟法を説いている。

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世界大百科事典(旧版)内の法学提要の言及

【ローマ法大全】より

…ビザンティン帝国(東ローマ帝国)ユスティニアヌス1世(在位527‐565)が制定発布した〈法学提要〉〈学説彙纂〉〈勅法彙纂〉および〈新勅法〉に対する総称で,ユスティニアヌス法典とよばれローマの法律および法学説が集大成されている。ビザンティン帝国における法学の復活を背景とする法学教育および裁判実務の要請に対応し,同時にローマ帝国の栄光の再興というユスティニアヌス1世自身の政治的文化的企図から,まず528年,彼は高級官僚(トリボニアヌスを含む)および若干の法学者によって構成される10名の委員会に命じて勅法の集成を行わせ,翌年完成・発布された。…

※「法学提要」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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