法の適用に関する通則法(読み)ほうのてきようにかんするつうそくほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「法の適用に関する通則法」の意味・わかりやすい解説

法の適用に関する通則法
ほうのてきようにかんするつうそくほう

法律施行期日、法律と慣習との関係、準拠法決定適用という法の適用関係について定める法律。平成18年法律第78号。「法例」(明治31年法律第10号)にかわるものとして、2007年(平成19)1月1日に施行された。全43か条で、法律の趣旨(1条)、法律の施行期日(2条)および慣習の法的効力(3条)に関する規定に続き、残りは準拠法(適用される法律)の決定・適用に関する国際私法規定となっている。第4条から第37条までは行為能力不法行為離婚などの単位法律関係(同じように準拠法を決定すべき法的問題のグループ。たとえば離婚の可否、原因、効果などの個々の法的問題は同じ準拠法を適用すべきであるとされ、「離婚」という単位法律関係とされている)ごとの準拠法を定める各則であり、第38条以下が重国籍者・無国籍者の本国法の決定、反致(日本の国際私法ルールによれば当事者の本国法によるとされる場合に、その当事者の本国の国際私法ルールによれば、その問題についてはむしろ日本法が準拠法となるとされているときには、最終的に日本法を準拠法とする扱いをすること)、準拠法とされた外国法の適用が日本の公序に反する場合にはそれを適用しないことなどを定める補則規定となっている。家族法分野については本国を連結点特定の地の法を導き出すことのできる場所的要素。連結素ともいう)とする本国法主義基調としているが、常居所地法、最密接関係地法が準拠法とされる規定も含まれている。

 「法の適用に関する通則法」によって準拠法を決定するのは渉外的法律関係だけであるとの見解も多いが、他方、準拠法の決定問題はつねに存在し、純粋な国内事件に日本法が適用されるのも、この法律によって準拠法が日本法となるからであるとの見解も有力である。

[道垣内正人 2022年4月19日]

『櫻田嘉章・道垣内正人編著『注釈国際私法 第1、2巻』(2011・有斐閣)』『小出邦夫編著『逐条解説・法の適用に関する通則法』増補版(2014・商事法務)』『中西康他著『国際私法』第2版(2018・有斐閣)』『澤木敬郎・道垣内正人著『国際私法入門』第8版(2020・有斐閣)』

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