(読み)いずみ(英語表記)spring

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精選版 日本国語大辞典 「泉」の意味・読み・例文・類語

いず‐み いづ‥【泉】

[1] 〘名〙
① (「出水」の意) 地中からわき出てくる水。また、そのわき出る場所。《季・夏》
※書紀(720)持統七年一一月(北野本訓)「試みに近江の益須郡の醴泉(こさけのイツミ)を飲ましめたまふ」
※俳諧・都曲(1690)上「結ぶより早(はや)歯にひびく泉かな〈芭蕉〉」
② (①を比喩的に用いて) ものごとの出てくるもと。源泉。
※くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉五「人生の苦限を救ふのは愛(ラヴ)の霊泉(イヅミ)だと初めて気が附いた」
③ 「いずみどの(泉殿)」の略。
讚岐典侍(1108頃)下「堀河のいづみ、人々見んとありしを」
④ (死の世界を「黄泉(こうせん)」というところから) 死者の行く世界。よみのくに。黄泉。
※車屋本謡曲・松山鏡(1539頃)「往事渺茫としてすべて夢ににたり。旧遊零落して半(なかば)(イズミ)に帰す」
[2]
[一] 横浜市の行政区の一つ。昭和六一年(一九八六)戸塚区から分離成立。市南西部、境川支流の和泉川東岸にある。相模鉄道いずみ野線が通じ、通勤住宅地として発展。
[二] 仙台市の行政区の一つ。平成元年(一九八九)成立。市北西部、七北田(ななきた)川流域にある。旧泉市域。商業・住宅地域。

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デジタル大辞泉 「泉」の意味・読み・例文・類語

せん【泉】[漢字項目]

[音]セン(漢) [訓]いずみ
学習漢字]6年
地中からわき出る水。いずみ。「泉水温泉渓泉源泉鉱泉神泉清泉盗泉飛泉噴泉湧泉ゆうせん・ようせん
温泉のこと。「泉質塩泉間欠泉単純泉
あの世。「泉下黄泉こうせん
穴あき銭。「泉貨刀泉
和泉いずみ国。「泉州
[名のり]み・みず・みぞ・もと
[難読]和泉いずみ黄泉よみ

いず‐み〔いづ‐〕【泉】

《「出水いずみ」の意》地下水が自然に地表にわき出る所。また、そのわき出た水。湧泉ゆうせん 夏》「―への道おくれゆく安けさよ/波郷
物事が出てくるもと。源泉。「希望の」「知識の
[補説]作品名別項。→
[類語]湧き水清水岩清水泉水噴水オアシス井戸掘り抜き井戸

いずみ【泉】[絵画]

《原題、〈フランスLa Sourceアングルの絵画。カンバスに油彩。縦163センチ、横80センチ。泉の擬人像である女性が水瓶から水を注ぐ姿を描いた作品。新古典主義絵画における裸婦像の傑作の一とされる。パリ、オルセー美術館所蔵。

いずみ【泉】[横浜市の区]

横浜市の区名。昭和61年(1986)戸塚区から分区。

いずみ【泉】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「泉」姓の人物
泉鏡花いずみきょうか

いずみ【泉】[仙台市の区]

仙台市北部の区名。住宅地。もと泉市で、昭和63年(1988)仙台市に編入、翌年区となる。

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改訂新版 世界大百科事典 「泉」の意味・わかりやすい解説

泉 (いずみ)
spring

地下水が自然に地表へ湧出したもので,湧泉ともいう。湧出形態によって次の三つに分類できる。(1)逬出(へいしゆつ)泉 岩の裂け目や崖からほとばしり出るもので,日本ではこれを走井(はしりい)と称した。山岳地帯に多く,場所によっては瀑布を懸ける。富士山麓白糸の滝が代表。(2)池状泉 釜,壺,湧壺とも称した。盆状のくぼんだ底から湧出し,水をたたえるもので,富士山麓の山中湖北西にある忍野八海(おしのはつかい)が有名。(3)湿地泉 どことなく水がしみ出し湿地状をなすもので,扇状地などの長い斜面の基底部で地下水面が地表に達したところにみられる。

 泉の湧出量は地下水が涵養される地域の大きさ,雨量,帯水層の透水性などに関係する。湧出量の大きな泉はカルスト地域の溶食洞,火山山麓,溶岩台地の末端部やその中へ刻まれた谷中にみられる。南フランスのボークルーズ泉はカルスト泉karst springで,湧出量は豪雨後には120m3/sに達するが,乾期には6m3/sになり,平均は18m3/sであるという。火山地帯の大湧泉は透水性の火山角レキ岩や溶岩に覆われた砂れき層から湧出するものが多く,アメリカ合衆国アイダホ州のスネーク川に沿う75km区間の総湧出量は142m3/sに達する。東洋一と称せられる静岡県田方郡の柿田川湧水は15m3/sである。日本では湧水を利用したマス類やアユ類の大規模養殖が,岩手山麓,那須山系,アルプス山系,富士山麓,伊吹山麓,阿蘇山麓,霧島山系などで行われている。間欠的に湧出する間欠泉は,広島県帝釈峡の一杯水のようなサイフォン型と,洞穴からあふれ出すオーバーフロー型の2種がある。間欠沸騰泉は沸騰温度の熱水と水蒸気の混合物を周期的に噴出し,アイスランド,アメリカ合衆国のイェローストーン国立公園,ニュージーランド北島のものが有名である。日本にもかつて宮城県の鬼首(おにこうべ)に吹上間欠泉が存在した。砂漠地帯の泉はオアシスと呼ばれ,深井戸が掘られるまでは唯一の生活空間であった。ユーゴスラビアのカルスト地域には連続した河川系がなく,泉が唯一の水源になっている。なお,泉水の化学成分は通過地中の状態で変化し,溶解成分が1g/l以上の場合に鉱泉,水温が25℃以上の場合に温泉と呼んでいる。
執筆者:

播磨国風土記》の,国占めの標示のために杖を立てたところ泉が湧き出たという記事が語り示すように,集落や田畑を作るうえで,泉をはじめ井戸,川,池などの給水源の確保は不可欠な要件であった。集落の草分けの家の立地をみると,水量の多い泉や川,池,井戸が近くに控えていることが多く,他の家々はその水を分けてもらうために従属的立場におかれるということさえもしばしばみられた。奄美地方では,集落から遠く離れた暗河(くらごう)と呼ぶ鍾乳洞内の地下水を,厳しい規則を設けて利用した。水場は神の支配地であり,水神や井の神などと呼んでこれを祭り,新年の若水も古くからの水場から迎えるところが多い。各地に伝わる,弘法大師などの宗教者が水が不足する土地の者のためにその杖を地に突き刺して水を出してやったといういわゆる弘法清水伝説も,いかに人びとが水に苦しんでいたかを語っている。水場はまた,人びとの日常的交流の場でもあり,とくに温泉は古代から宴の場として利用されてきた。
執筆者:

《礼記(らいき)》月令篇には,泉が活動を開始する仲冬,すなわち冬11月,天子は百官に命じて井泉を祭らせるとある。また唐叔虞(とうしゆくぐ)を祭る太原の晋祠など,泉のそばに神祠の設けられることが多く,《太平経》は後漢の于吉が泉のほとりで授かったという神書に由来する。このように中国人はこんこんと湧き出る泉に不思議な生命力をみとめ,神秘視した。大宛を攻めた李広利が佩刀(はいとう)で山をつき,疎勒(そろく)を攻めた耿恭(こうきよう)が涸(か)れ井戸にむかって祈り,仏図澄(ぶつとちよう)が呪文をとなえ,慧遠(えおん)が杖で土を掘ったところ,いずれも泉が湧き出したと伝えられる。あるいはまた孔子が断じて飲もうとはしなかったという〈盗泉〉,廉潔の士をも貪欲ならしめるという広州石門の〈貪泉〉などは,人間と感応し,人間の性格を変える力があると信ぜられたのである。飲茶の風習がおこると,各地に名泉がもとめられ,たとえば陸羽の《茶経》には廬山の〈水簾飛泉〉が天下第一と称せられている。
執筆者:

自然に水が湧き出る泉は,井戸を掘る技術が未発達であった時代には特に神聖視された。水が清め,病を治すという考えは古代インドのベーダをはじめ各所に見られる。フランスのグリジーやサン・ソブール,イタリアのフォルリ等の泉は新石器時代・青銅器時代から治療に使われた跡があるとされる。1858年聖母マリアが顕れたとされる南フランスのルルドの泉も,特に8月15日聖母の被昇天祭には病気の平癒を願う巡礼者でにぎわう。ギリシア・ローマ神話では自然の力を表す樹木,川,泉は,ゼウスまたはオケアノスを父とし,母なる大地から生まれたニンフたちが守るとされた。ローマでは,フォルムの端でウェスタ神殿に近い泉を女神ユトゥルナの住家として敬い,1月11日には泉を仕事のうえで使う職種の人々を中心に,ユトゥルナリア祭が祝われた。ユトゥルナはニンフの一人として鍛冶の神ウルカヌスを祝う8月23日のウルカナリア祭にも,穀物を火事から守るように祈願された。古典詩ではユピテルの愛人となって泉の支配権を得たとも,ヤヌスと結ばれてローマの泉の神たるフォンス,またはフォントゥスを生んだともされる。ユトゥルナはまた,女性の安産の神でもあり,雨乞いの際にも祈られた。J.G.フレーザーもネミ女神の聖森に湧くエゲリアの泉が病を治し安産を得させる水の精であったことを挙げている。ケルトの信仰にも泉の崇拝があったことはシャルトル等古く建てられたキリスト教会が泉の跡であったことからも推定される。沐浴による〈みそぎ〉を重視するイスラムでは,モスクは多く泉の上に建てられる。都市や庭園に泉を配する伝統はカルデアにまでさかのぼるが,パウサニアスは前2世紀のコリントスの泉水を描いている。大プリニウスは,アグリッパ帝がローマに700の泉と105の噴水を作らせたと述べている。人工のこうした泉はヨーロッパでは多くの場合区別し,例えば英語ではスプリングに対して,ファウンテンfountainといい分ける。
井戸 →
執筆者:

泉 (いずみ)

宮城県中部,仙台市の北西部に位置する旧市。1955年七北田(ななきた)村と根白石(ねのしろいし)村が合体して泉村となり,57年町制,71年市制。88年に仙台市に編入され,89年には泉区となった。西部の泉ヶ岳(1175m)より発する七北田川流域を占める。中・上流域は農山村で,中流以下は水田地帯となり,自然堤防上では市街向けの野菜栽培も盛んである。中心集落の七北田は陸羽街道沿いの旧宿場で街村として発達し,現在でも商店が最も密集している。旧泉市が大きな変貌をみせ始めたのは,仙台・泉両市にまたがる丘陵地に大規模住宅団地が造成された1960年代からで,以後も100ha以上の団地が次々と造成された。泉ヶ岳は仙台市民のハイキングコースとして親しまれている。
執筆者:

泉(熊本) (いずみ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「泉」の意味・わかりやすい解説


いずみ

熊本県中南部,八代市東部を占める旧村域。九州山地の中にある。西流する氷川上流域の下岳 (しもだけ) 村,柿迫 (かきざこ) 村,栗木 (くりぎ) 村の3村と,南流する川辺川上流域の久連子 (くれこ) 村,椎原 (しいばる) 村,樅木 (もみぎ) 村,仁田尾 (にたお) 村,葉木 (はぎ) 村の5村,いわゆる五家荘とが合体し,1954年泉村として成立。 2005年八代市,坂本村,千丁町,町,東陽村の5市町村と合体して八代市となった。山地が広く,茶,ソバ,シイタケを産し,ヤマメを養殖。栴檀轟瀑 (せんだんとどろばく) ,久連子峡などの渓谷美と原生林が有名。平家落人伝説の地として知られ,伝説館や資料館がある。五木五家荘県立自然公園と,一部は九州中央山地国定公園に属する。


いずみ
spring

湧泉 (ゆうせん) ともいう。地下水が地表に集中的に湧出する天然露頭。湧出口が河川水や湖沼の水でおおわれている場合でも,上記と同様の湧出状況が確認できれば,湧泉とみなされる (例:河底泉,湖底泉) 。集中的に湧出する湧水口が明瞭に認められないが,一定範囲の地域にわたり地下水が地表面に拡散して現出する場合は,泉と区別して表面浸出 surface effluent seepageという。高所に降った雨が地下にしみこみ,透水層中を低所に向って流れ,その帯水層が地表に露水するところで泉となる。


いずみ

福島県南東部,いわき市南部にある地区。旧町名。 1954年近隣町村と合体して磐城市となり,66年からいわき市の一部。 JR常磐線泉駅前地区は,都市計画により商店街が形成されている。小名浜の西の玄関口として交通の便に恵まれ,住宅地域となっている。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「泉」の解説

正式社名「泉株式会社」。英文社名「IZUMI-COSMO COMPANY, LIMITED」。建設業。昭和22年(1947)「株式会社泉商会」設立。同38年(1963)現在の社名に変更。本社は大阪市北区中之島。化成品専門商社。映像用スクリーン・テント用膜材・カーシート用原糸などを販売。ほかに集塵機用フィルターなど。

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デジタル大辞泉プラス 「泉」の解説

泉〔絵画〕

フランスの画家ドミニク・アングルの絵画(1820-1856)。原題《La source》。泉の擬人像である女性が水瓶から水を注ぐ姿を描いた作品。新古典主義絵画における裸婦像の傑作の一つとされる。パリ、オルセー美術館所蔵。

泉〔映画〕

1956年公開の日本映画。岸田国士の小説を原作とする。監督:小林正樹、脚色:松山善三。出演:佐分利信、有馬稲子、佐田啓二、渡辺文雄、内田良平、桂木洋子ほか。

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百科事典マイペディア 「泉」の意味・わかりやすい解説

泉【いずみ】

湧泉とも。地表に自然に地下水がわき出る所。地下水の自然の露頭。わき出た水を湧水という。地表からしみこんだ水が透水層,割れ目を流下し,山麓,扇状地末端,崖の中腹,窪地(くぼち)などからわき出る場合が多い。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ばね】より

…スプリング,発条ともいう。ばねは〈跳ね〉に由来。力を加えると弾性変形することによってエネルギーを吸収・蓄積し,力を解放すると吸収したエネルギーを放出して元の形に復元する性質をもつものの総称。狭義には上の性質を利用した機械要素をいう。 獲物を捕らえるために若木の幹を使って作ったわなや弓は,人類の最初のばねの利用の一つと考えられている。中世になると,織機,ろくろ,粉ひき機などには,ばねの復元力を利用して戻りの動きを得ようとするくふうが見られ,この場合も木の棒のばね力を利用していた。…

【春】より

…冬から夏への漸移期にあたる季節をいう。春の時期は時代や国または地域により異なる。古代中国では立春(太陽の黄経が315゜になる日)から立夏(同45゜)の前日までを春と呼んだ。現在の分け方は西欧流のもので,北半球では春分(同0゜)から夏至(同90゜)の前日までである。慣習上は,北半球では3,4,5月,南半球では9,10,11月が春である。春の気候的特徴は,季節の進行にともなう気温の急上昇である。実際の天候推移に基づいて区分した自然季節の春の期間は地域によりまちまちである。…

【池】より

…平安時代には作庭技術を記した《作庭記》が,寝殿の前に築く池の位置,規模,築造法などを詳しく述べている。《紫式部日記絵巻》《年中行事絵巻》などによって平安時代寝殿造の大池泉がうかがわれ,そこには多く船遊奏楽が描かれている。鎌倉・室町時代になると,前代に比して池はやや小規模となり,また禅宗寺院の方丈庭には中国宋・元の山水画からの影響もあって,巧緻な枯山水風の池が現れた。…

【オアシス】より

…中央アジア,西アジア,北アフリカに多く,アラビア語ではワーハwāḥa。最も典型的な例が,地下水の湧出している泉の形態であるため,日本では泉地という訳語がよく用いられるが,しかしその形態は泉とは限らず多様であり,むしろ沃地(肥沃な土地の意)の訳語のほうが適切である。
[地理的概観]
 淡水の存在形態に応じて,オアシスには次のような種類がある。…

※「泉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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