泉門(読み)センモン

デジタル大辞泉 「泉門」の意味・読み・例文・類語

せん‐もん【泉門】

新生児頭蓋とうがいの骨の境目で、骨化がまだ進んでいない結合組織膜の部分左右前頭骨と左右の頭頂骨とに挟まれた菱形のものを大泉門、左右の頭頂骨と後頭骨との間の三角形のものを小泉門という。成長とともに閉じる。ひよめきおどりこ顖門しんもん
黄泉国よみのくにの門。あの世への入り口

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精選版 日本国語大辞典 「泉門」の意味・読み・例文・類語

せん‐もん【泉門】

〘名〙
黄泉国(よみのくに)の門。あの世への入り口。よみど。
万葉(8C後)五・七九四・右詩序文「枕頭明鏡空懸、染筠之涙逾落 泉門一掩、無再見、嗚呼哀哉」
② 新生児の頭蓋上部、骨と骨とが未縫合のためできた部分。ひよめき。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「泉門」の意味・わかりやすい解説

泉門
せんもん

新生児では頭蓋(とうがい)を構成する頭骨の骨化が未完成で、各頭骨の隣り合う縁は離れており、その間隙(かんげき)は結合組織性膜だけでふさがれている。この部分を泉門とよぶ。とくに、頭蓋冠では泉門も大きいため、頭蓋泉門とよばれるが、これはすべて頭頂骨の周囲に存在している。頭蓋泉門には次の4種6個がある。

(1)大泉門 泉門ではもっとも大きく、2個の前頭鱗(ぜんとうりん)(将来、癒合して1個の前頭骨をつくる)と両側の頭頂骨とが合する部分にある。成人では冠状縫合と矢状縫合(しじょうほうごう)の交叉(こうさ)点に相当する。大泉門は菱(ひし)形をなし、この部分では下層にある動脈の拍動に触れることができる。触診では満1年から1年半、解剖学的には2年で閉鎖するとされている。

(2)小泉門 両側の頭頂骨と後頭骨との間にあり、成人では矢状縫合と人字縫合(ひとじほうごう)(ラムダ縫合)との交叉点にあたる。小泉門は尖端(せんたん)を前方に向けた三角形状をしているが、頭蓋の後方にあるため、後泉門ともいう。生後3か月くらいで小泉門は閉鎖するとされる。

(3)前側頭泉門 蝶形骨(ちょうけいこつ)の大翼の上縁部で前後に走る間隙が前側頭泉門で、6か月から1年で閉じる。

(4)後側頭泉門 側頭骨乳突部の上部にあたる。形は不規則で、後側頭泉門の閉鎖は1年から1年半といわれている。泉門は新生児によっては過剰にできる場合もある。

[嶋井和世]


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改訂新版 世界大百科事典 「泉門」の意味・わかりやすい解説

泉門 (せんもん)
fontanelle
fonticulus[ラテン]

古くは顖門(しんもん)といった。俗には〈ひよめき〉という。新生児の頭では扁平骨の周辺部が骨化していないため,3個または4個の骨が相会するところでは柔らかい膜様部が残り,これを泉門という。指で触れることができるばかりでなく,脈拍に一致してぴこぴこ動くのが見えるので〈おどり〉〈おどりこ〉などともいい,〈ひよめき〉もここから出た名である。泉門は4種6個あり,大泉門(左右の頭頂骨と左右の前頭骨の間のひし形の泉門)と小泉門(左右の頭頂骨と後頭骨の間の三角形の泉門)は非対性,前側頭泉門と後側頭泉門は対性である。そのうち大泉門が最も大きく,単に泉門といえばこれをさす。水頭症,髄膜炎などでは泉門の閉鎖が異常となるため,小児科臨床上,とくに大泉門の閉鎖の様子が注目される。
頭骨
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百科事典マイペディア 「泉門」の意味・わかりやすい解説

泉門【せんもん】

俗に〈ひよめき〉とも。新生児の頭蓋で骨が未完成のため,数個の骨の会合する部分に残った骨質を欠く膜様部。柔らかく,頭蓋内圧変化によって動き,脈拍に一致した起伏が見えるので,〈おどりこ〉とも呼ばれる。前頭骨と左右の頭頂骨の間にある大泉門が最大で,その他左右の頭頂骨と後頭骨の間の小泉門,側頭部のそれぞれ1対の前側頭泉門および後側頭泉門がある。いずれも生後1年半ぐらいまでには骨ができて閉鎖される。
→関連項目ビタミン過剰症

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普及版 字通 「泉門」の読み・字形・画数・意味

【泉門】せんもん

墓門。

字通「泉」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の泉門の言及

【関節】より

…しかし胎児や新生児などで,骨化が十分に進んでいない時期では,縫合も発達不十分で,隣接する骨の間には比較的大きい間隙があり,この部分は結合組織により膜状に閉鎖している。この間隙を泉門という。泉門のうち,とくに左右の頭頂骨と前頭骨の間のものは,ひし形の大きい間隙で,大泉門といわれる。…

【骨】より

…子どもの頭蓋では縫合が完成せずに,その場所が軟組織のまま残っているが,それはここでまだ骨の成長が起こりつつあるしるしである。泉門はこのような発育状態にある縫合が交差する場所である。複雑な形の骨(例えば下顎骨や椎骨)が成長する場合には,その形は必ずしも相似的に増大するものではない。…

※「泉門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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