沽券(読み)こけん

精選版 日本国語大辞典 「沽券」の意味・読み・例文・類語

こ‐けん【沽券】

〘名〙
① 売買契約を交した際に、売主から買主に与える証文売券(うりけん)。売券状(うりけんじょう)。売券(ばいけん)沽却状沽券証文沽券状。沽券手形。
※新式目‐弘安七年(1284)五月二〇日・関東御教書「或称相伝請所、或帯沽券質券等、多以領作之由、有其聞
読本・南総里見八犬伝(1814‐42)三「しからば信乃が成長(ひととな)るまで估券(コケン)は某領かる也」
売値売価
※雑俳・川柳評万句合‐天明三(1783)満一「あんとんの向ふこけんの高ひとこ」
品位体面品格
※歌舞伎・日月星享和政談(延命院)(1878)六幕「内の沽券(コケン)町並だから、よもや乞食は客にしめえと、無駄と思って化けこんで」
[語誌](1)古辞書では「沽券」を「コケン」とも「ウリケン」ともよんでいる。
(2)沽券には物件の価格も記されていて、「物件の価格が記された証文」でもあったわけで、そこから②のように「価格」自体をも意味するようになり、さらに③の意味をも派生させたと考えられる。

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デジタル大辞泉 「沽券」の意味・読み・例文・類語

こ‐けん【×沽券/×估券】

《「沽」は売る意》
土地・山林・家屋などの売り渡しの証文。沽却状。沽券状。
人の値うち。体面。品位。
売値。
「そんなら惣地代そうぢだいで―はいくら」〈滑・膝栗毛・二〉
[類語](2名誉名聞めいぶん面目体面面子メンツ一分いちぶん声価信用信望しん信頼信任人望定評評判暖簾のれん覚え名望声望徳望人気魅力受け名声美名雷名見栄みえ面皮世間体体裁肩身

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沽券」の意味・わかりやすい解説

沽券
こけん

「估券」とも書き,売券,沽却状ともいい,文書の形式から,避文 (さりぶみ) ,去状ともいう。土地,家屋,そのほか諸権利を売却するとき,売主の発行する証文。令制では,土地売買のとき,売主が沽券を出すのではなく,その地の下級支配者である郷長などが,上級の官司 (国郡司) に解文 (げぶみ) を提出して許可をとった。平安時代中期には,売主が直接買主に沽券を渡すようになったが,沽券の様式は,なお解文の形式で書かれ,郷保 (きょうほ) の役人などが証判を加えることが多かった。平安時代末期になると,売主だけの署名か,または私的な証人が連署する沽券に変った。このような私券制に変ると,権利の証明や売買の保証のため,手継証文交付や,追奪担保文言の記入が必要となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「沽券」の意味・わかりやすい解説

沽券 (こけん)

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普及版 字通 「沽券」の読み・字形・画数・意味

【沽券】こけん

估券。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「沽券」の意味・わかりやすい解説

沽券
こけん

売券

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世界大百科事典(旧版)内の沽券の言及

【沽却】より

…売却すること。中世の土地売却証文は,一般にその冒頭を〈売渡〉〈沽却〉などの文言で書き出すので,〈売券〉〈沽券〉〈沽却状〉などという。平安時代から鎌倉時代前期には,むしろ沽券が一般的といえるが,以後しだいに売券に圧倒されていく。…

【売券】より

…不動産,主としてその上に設定された諸権利を売り渡すときに,売主から買主に渡される私的な証文をいう。中世では沽券(こけん),沽却状(こきやくじよう),近世では売渡状(うりわたしじよう),売渡証文などと称する。 奈良時代には,公田の売買は禁止され,墾田・園地・宅地の売買は許された。…

※「沽券」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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