河海抄(読み)かかいしょう

精選版 日本国語大辞典 「河海抄」の意味・読み・例文・類語

かかいしょう カカイセウ【河海抄】

源氏物語」の注釈書。二〇巻。四辻善成著。貞治元年(一三六二)頃の成立とされる。祖師善行、先師丹波忠守の説を基礎旧説を集め、語句の解釈重点をおいて自説を述べたもの。将軍足利義詮の命により撰した。初期の「源氏物語」研究集大成

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デジタル大辞泉 「河海抄」の意味・読み・例文・類語

かかいしょう〔カカイセウ〕【河海抄】

南北朝時代源氏物語の注釈書。20巻。四辻善成よつつじよしなり著。貞治6年(1367)ごろ成立。語句の解釈を重点とし、自説を示したもの。初期の源氏物語研究の集大成。

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百科事典マイペディア 「河海抄」の意味・わかりやすい解説

河海抄【かかいしょう】

南北朝時代の《源氏物語》注釈。四辻善成(よつつじよしなり)著。20巻。貞治年間(1362年―1368年),将軍足利義詮(よしあきら)の命により成る。平安末期以来の《源氏物語》研究の成果を集成し,著者見解を加えたもの。序に続いて,紫式部と〈源氏〉著作の由来などについて概説し,その後主に,語句の解釈,典拠有職故実準拠の指摘をする。初期の研究を公正な態度で集成した画期的な大著であり,後世の注釈に大きな影響を及ぼした。
→関連項目花鳥余情太后御記

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改訂新版 世界大百科事典 「河海抄」の意味・わかりやすい解説

河海抄 (かかいしょう)

南北朝時代の《源氏物語》注釈。20巻。著者は四辻(よつつじ)(源)善成。将軍足利義詮(よしあきら)の命により,貞治年間(1362-68)に成る。平安末期以来の《源氏物語》研究の成果を集成し,著者の見解をも加味して一書となしたもの。内容は,語句の解釈,出典調査,および有職故実,準拠の指摘を主とし,巻頭料簡〉の項において《源氏物語》とその作者紫式部についての概説を述べる。厳正で奇矯に走らず,以後の《源氏物語》研究に大きな影響を及ぼした。本居宣長も源氏物語注釈書中の第一に挙げている。数多くの文献を駆使した故実・準拠の探究は,《源氏物語》の読解に資するところが大きい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「河海抄」の意味・わかりやすい解説

河海抄
かかいしょう

『源氏物語』の注釈書。四辻善成(よつつじよしなり)著。貞治年間(1362~1368)ころに、室町幕府2代将軍足利義詮(よしあきら)の命によって成った。前代までの諸注釈を批判的に統合しつつ、豊富な引用書を駆使した考証により成った本書は、『源氏物語』研究初期の集大成的注釈書といえる。『源氏物語』古注釈史においても画期的な著書であり、その後の注釈に大きな影響を及ぼした。源光行(みつゆき)・親行(ちかゆき)親子の写本である河内(かわち)本と、藤原定家の写本である青表紙本の両方に注目している点、また、『源氏物語』が典拠とした先例や史実を明らかにしようとする姿勢が強く見られる点も本書の特徴である。著者の四辻善成は南北朝時代の和学者であり、順徳天皇の皇子善統(よしむね)親王の孫。後年、『河海抄』に載せなかった秘説を『珊瑚秘抄(さんごひしょう)』で著している。

[吉井美弥子]

『吉森佳奈子著『『河海抄』の『源氏物語』』(2003・和泉書院)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「河海抄」の解説

河海抄
かかいしょう

南北朝期の「源氏物語」注釈書。20巻。1360年代初頭,のちの従一位左大臣四辻善成(よつつじよしなり)が将軍足利義詮(よしあきら)の命により著す。本文に「物語博士源惟良撰」とあるが,光源氏の乳兄弟の惟光と腹心の家臣良清の名から作ったもの。書名は「和漢朗詠集」の「河海不厭細流,故能成其深」から,諸説を集めた意による。初期の代表的源氏注釈書で,引用された文献には,今日すでに散逸したものも少なくない。巻頭に「源氏物語」の成立事情・準拠・諸本・紫式部伝のほか,後代和歌への影響が解説される。玉上琢弥編「紫明抄・河海抄」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「河海抄」の解説

河海抄
かかいしょう

室町前期,四辻善成 (よつつじよしなり) の『源氏物語』注釈書
貞治 (じようじ) 年間(1362〜68)の成立。20巻。藤原定家の『源氏物語奥入』,素寂の『紫明抄』などの諸説をとり入れ,それ以前の考証的関心から語句解釈の方面に移る。後世の『源氏物語』研究に大きな影響を与えた。

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世界大百科事典(旧版)内の河海抄の言及

【花鳥余情】より

…古くは〈かちょうよせい〉とも呼ばれた。四辻善成の《河海抄(かかいしよう)》のあとをうけて,その遺漏を補い,誤りを正すことを意図した書。《源氏物語》のみならず広く和漢の学に通じ,当代一の学者であった兼良の学識を反映した著作であるが,《河海抄》が出典,準拠など考証を主としているのに対し,本書は煩瑣な考証は控え,《源氏物語》の本文に即した文意,歌意の説明,文脈の解明に重きを置く。…

【源氏物語】より

…京都ではこのころ了悟の《幻中類林》が出て独自の主張を試み,やや下って長慶天皇の辞書《仙源抄》が成り,碩学花山院長親も名高い。四辻善成(よつつじよしなり)(1326‐1402)の《河海(かかい)抄》は博引旁証,注釈の基礎を築いた。室町時代には,一条兼良の《花鳥余情》は鑑賞や語法面に新機軸を開き,宗祇およびその周辺の連歌師たちもそれぞれ業績を残している。…

※「河海抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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