沐猴にして冠す(読み)もっこうにしてかんす

精選版 日本国語大辞典 「沐猴にして冠す」の意味・読み・例文・類語

もっこう【沐猴】 に して冠(かん・かむり)

(項羽が、都とするのに適した関中の地を去って故郷に帰りたがったのを、ある者が所詮猿が衣冠をつけたようなもので、天下をとれる人物ではないと嘲ったという「史記‐項羽本紀」の「人言、楚人沐猴而冠耳、果然」から) 外見は立派でも内実がそれに伴わない人物のたとえ。小人物がふさわしくない任にあるたとえ。
※中華若木詩抄(1520頃)中「沐猴にして冠りすと云か」
読本椿説弓張月(1807‐11)拾遺「その智においては懼(おそ)るるに足らず。所謂沐猴(モクコウ)にして冕(カムリ)するものなり」

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デジタル大辞泉 「沐猴にして冠す」の意味・読み・例文・類語

沐猴もっこうにしてかん・かむり

《「史記項羽本紀の故事から》猿であるのに冠をかぶっている。見かけは立派だが、心が卑しく思慮分別に欠ける人物のたとえ。地位にふさわしくない小人物であることのたとえ。

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故事成語を知る辞典 「沐猴にして冠す」の解説

沐猴にして冠す

自意識ばかり強くて粗野な人物を、ばかにすることば。また、外見は立派でも、内実がそれに伴わない人物のたとえ。

[使用例] 学生には相も変らずはっぶんなど所謂いわゆるはんぶんじょくれい学問を奨励して、列国には沐猴而冠もっこうにしてかんすの滑稽なる自尊の国とひそかに冷笑される状態に到らしめた[太宰治惜別|1945]

[由来] 「史記こう紀」に出て来るエピソードから。紀元前二世紀の終わり、しん王朝が反乱によって滅亡した際のこと。反乱軍の総大将だった項羽は、文化の中心である秦王朝の都を立ち去って、故郷のの国に帰って大手柄を自慢したいと考えました。すると、ある人物が、「楚の人は『沐猴にして冠す(サルが冠をかぶった程度の田舎者だ)』と聞いていたが、その通りだな」と陰口をたたきました。それを知った項羽は、その人物を釜ゆでにして殺してしまったということです。なお、「沐猴」とは、サルのことです。

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