沈鐘(読み)ちんしょう(英語表記)Die versunkene Glocke

精選版 日本国語大辞典 「沈鐘」の意味・読み・例文・類語

ちん‐しょう【沈鐘】

[1] 〘名〙 湖や沼の底に沈んでいるという伝説上の鐘。→沈鐘伝説
[2] (原題Die versunkene Glocke) 戯曲。五幕。ハウプトマン作。一八九六年成立、ベルリン初演。鐘造り師ハインリヒと山の妖精ラウテンデラインとの愛の喜びと悲しみを描いて、自然のままの作品をつくろうとする作者苦悩象徴日本では、大正七年(一九一八芸術座が初演。

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デジタル大辞泉 「沈鐘」の意味・読み・例文・類語

ちんしょう【沈鐘】[戯曲]

《原題、〈ドイツDie versunkene Glockeハウプトマンの童話詩劇。5幕。1896年初演。鐘造り師と山の妖精との悲恋を描く象徴劇。

ちん‐しょう【沈鐘】

沼や湖の底に沈んでいるという伝説上の鐘。その鐘の由来とか、水中から鐘の音が聞こえるという伝説は世界各地にあり、日本の「鐘が淵」という地名もこの伝説に基づくといわれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「沈鐘」の意味・わかりやすい解説

沈鐘
ちんしょう
Die versunkene Glocke

ドイツの劇作家ハウプトマンの戯曲。1896年発表。自然主義者として登場したハウプトマンが、新ロマン主義的な新しい作風を示したメルヘン劇。シュレージエンの山の精たちを調伏するために鐘造り師ハインリヒの鋳た鐘は、この魔物たちによって湖底に沈められ、彼も負傷するが、妖精(ようせい)のような山の乙女ラウテンデラインに介抱される。野性の乙女はハインリヒを愛するようになり、村人に連れ戻された彼の後を追って人里にくる。ハインリヒは妻マグダを捨てて乙女と山に入り、牧師の説得にも耳を貸さず「日の神」のための鐘をつくろうとするが、わが子に妻が湖に身を投げたことを聞かされ、また村に戻る。乙女はその間に水の精の妻になってしまう。彼はこの乙女の養母である妖婆に彼女との再会を頼み、命と引き換えに乙女の接吻(せっぷん)を受け、太陽を仰ぎながら死ぬ。

 日本では非常に愛好され、泉鏡花などにも影響を与えたが、現在ドイツではほとんど評価されていない。ハウプトマンの場合、芸術家をテーマとし、道具立ての多いこの象徴劇より、写実的な作品のほうが優れている。

[岩淵達治]

『秋山英夫訳『沈鐘』(『ノーベル賞文学全集19』所収・1972・主婦の友社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沈鐘」の意味・わかりやすい解説

沈鐘
ちんしょう
Die versunkene Glocke

ドイツの劇作家ゲルハルト・ハウプトマンの戯曲。5幕。 1896年 12月初演。妖精の少女に魅せられた鐘づくりの名人を中心に,芸術家と自然の神秘的な力の対立を描く。作者自身「童話劇」と名づけた,ロマンチックな色彩が濃い戯曲。日本では,泉鏡花と登張竹風が翻訳して有名。

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