汽水域(読み)きすいいき(英語表記)estuary

翻訳|estuary

改訂新版 世界大百科事典 「汽水域」の意味・わかりやすい解説

汽水域 (きすいいき)
estuary

川が海に注ぎ込むところには,淡水海水が混合したところができるが,これを汽水域(または河口域)という。川から流れ込む淡水の量は,集水域雨量によって不規則に変わる。一方,海水は潮の干満で規則的な上下運動をしている。そのため汽水域の水の塩分濃度は,時刻によっても,また日によっても少しずつ異なっている。汽水域にすむ生物には,塩分濃度のひじょうに広い範囲で生活できるように適応したものが多く,これを広塩性生物とよぶ。また産卵のために川から海へ下るウナギ,逆に海から川へ上るサケトゲウオなどの魚は,浸透圧調節によって生理的脱水水ぶくれの危険から身を守らねばならない。これらの魚はさまざまな塩分濃度こう配をもっている汽水域で数日~数十日もとどまり,浸透圧調節に利用している。

 川の水は,陸からの大量の粒状有機物と栄養塩を含んでいて,汽水域付近の水の流れが緩やかになったところで堆積する。そのため,汽水域は生物の種類も量も豊富であるが,底生動物は流速の最も大きい河口の中央付近では,海底が不安定であるため,むしろ種類は少なく,小型で生活史の短い少数の種が優占しており,流速の比較的小さい周辺域が種類も量も最も豊富である。クルマエビ科のエビは汽水域に定着し,成長するにつれて海へ散っていく。これも豊富な餌のある汽水域を利用した生活史である。

 汽水域は川の流れと海水の上下運動があるため,動物プランクトンや底生動物の浮遊幼生など移動性の動物は,流されてしまわないでそこにとどまるための習性をもたなければならない。その一つが,汽水域の上層の淡水層と下層の海水層の間を,1日に2度往復し,上層では淡水とともに海へ流され,満潮時に汽水域にできる塩水くさびにのって,再び汽水域にもどってくるやり方である。エビなどが分布を海へ広げる場合には,満ち潮のときは海底にもぐり,引き潮のとき潮にのって海へ広がっていく。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ダイビング用語集 「汽水域」の解説

汽水域

淡水と海水がまじりあっている状態を汽水といい、河口や湧き水のある海中など塩水・淡水の両方から構成されている水域を汽水域と呼ぶ。独特の生物が見られる特異な場所でもある。

出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報

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