決定(生物学用語)(読み)けってい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「決定(生物学用語)」の意味・わかりやすい解説

決定(生物学用語)
けってい

生物学用語。胚(はい)発生の過程で、胚のある細胞集団(原基)が特定器官あるいは組織などに分化するよう方向づけられること。最近では広く、ある細胞または細胞群が特定の形質をもつよう方向づけられることをさすのにも使われる。多くの胚で、各部の細胞群は胚内でのそれぞれの位置にふさわしい分化(即所的分化)をするよう決定されることで調和のとれた個体が生ずる。いったん決定を受けた細胞群は、周囲の条件とはかかわりなく分化(即自的分化)する。したがって決定の時期以後である部分の欠損や、細胞群の位置の変化がある場合、調整はおこらず奇形が生ずる。細胞の運命の決定の時期、その仕組みなどの理解は発生学のみならず、癌(がん)発生の仕組みの解明ほか医学、農学にも深くかかわっている問題である。

[竹内重夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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