決・抉・刳(読み)しゃくる

精選版 日本国語大辞典 「決・抉・刳」の意味・読み・例文・類語

しゃく・る【決・抉・刳】

(「さくる(決)」の変化した語)
[1] 〘他ラ五(四)〙
① 中がくぼむようにえぐる。すくいとる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② すくうようにして上下前後左右にゆする。
浄瑠璃神霊矢口渡(1770)一「押せどしゃくれど、動ばこそ」
③ あけるために戸をすくうように動かす。戸をすくうようにしてあける。
※浄瑠璃・心中天の網島(1720)下「車戸の明くるを人や聞付んと、しゃくって明くればしゃくって響き」
④ 顎(あご)を下からすくうように動かして示す。→顎でしゃくる
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「お政が『彼方(あっち)へ』と顋(あご)でしゃくる」
⑤ うまいことを言って人の気持を動かす。そそのかす。扇動する。おだてる。
※雑俳・柳多留‐五(1770)「文使あるいはいさめまたしゃくり」
⑥ 操縦する。あやつる。
初年兵江木の死(1920)〈細田民樹〉五「乗ってゐる初年兵が韁(たづな)でしゃくると、『ふ、ふ、ふ』と鼻を鳴らした」
[2] 〘自ラ下二〙 ⇒しゃくれる(決)

さくり【決・抉・刳】

〘名〙 (動詞「さくる(決)」の連用形の名詞化)
① 掘ること。また、掘った所。特に、鍬で土を打ち返した所。また、その溝。うね。
※行宗集(1140頃)「山里のさくりの上にしりかけて小稲(をしね)こく間に雨ぞ降りぬる」
流鏑馬(やぶさめ)笠懸(かさがけ)などの騎射(うまゆみ)のとき、馬を走らせるために馬場に設けた埒(らち)の間の道筋
※宇槐雑抄‐保延三年(1137)九月二四日「今日騎射馬决浅馬頻走上」
③ 馬などが通ったあとに、地面にできるくぼみ。また、その足跡
※光悦本謡曲・殺生石(1503頃)「身を何となすのの原に顕はれ出しを狩人の、追つまくつつさくりにつけて」
敷居(しきい)鴨居(かもい)などに設けた戸をすべらせる溝。〔日葡辞書(1603‐04)〕

さく・る【決・抉・刳】

[1] 〘他ラ四〙
① 溝などを掘る。掘って穴をあける。くりぬく。しゃくる。
書紀(720)仁徳一一年四月(前田本訓)「羣臣、共に視て横源(よこしまのうなかみ)を決(サクリ)て海に通(かよ)はせて逆流(さかふるこみ)を塞ぎて田宅(なりところ)を全せよ」
② 前へすくうようにして上げる。しゃくう。しゃくる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
[2] 〘自ラ四〙 堤防などが切れてくずれる。決壊する。

しゃく・れる【決・抉・刳】

〘自ラ下一〙 しゃく・る 〘自ラ下二〙 中ほどがへこんでいる。
※永日小品(1909)〈夏目漱石〉下宿「鼻のしゃくれた、顎と頬の尖った、鋭い顔の女」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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