江馬修(読み)えまなかし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江馬修」の意味・わかりやすい解説

江馬修
えまなかし
(1889―1975)

小説家。岐阜県生まれ。1916年(大正5)、青春の愛と苦悩を描いた長編小説『受難者』を発表ベストセラーとなった。関東大震災後社会主義接近、ナップ系の一員として活躍。プロレタリア運動崩壊後故郷高山へ帰り、明治維新期飛騨(ひだ)に起こった農民一揆(いっき)を描いた著者のライフワーク『山の民』(1938~40)を完成した。第二次世界大戦後は藤森成吉(せいきち)らと『人民文学』を創刊自伝『一作家の歩み』(1957)などを書いた。ほかに『暗礁』(1917)、『追放』(1926)などの長編小説がある。

[大塚 博]

『『江馬修作品集』(4巻にて中絶。1973・北溟社)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「江馬修」の解説

江馬修 えま-なかし

1889-1975 大正-昭和時代の小説家。
明治22年12月12日生まれ。江馬三枝子,のち豊田正子の夫。田山花袋(かたい)にまなび,大正5年「受難者」が評判となる。関東大震災後,人道主義から社会主義にうつり,「戦旗」に作品を発表。のち故郷の岐阜県高山にもどり,長編歴史小説「山の民」の完成に力をそそいだ。昭和50年1月23日死去。85歳。

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世界大百科事典(旧版)内の江馬修の言及

【プロレタリア文学】より

…文戦派)はしだいに色あせて見えるようになり,やがては実力派だった平林たい子,黒島伝治,細田民樹(1892‐1972)らが脱退し,その多くはナップに参加した。なお,明治・大正以来の文壇作家で大正末年から社会主義運動ないしプロレタリア文学運動に参加した作家として,藤森成吉,江口渙(きよし)(1887‐1975),江馬修(ながし)(1889‐1975),宮本百合子,細田民樹,細田源吉(1891‐1974)らがおり,彼らも結局はすべてナップに参加した。ほかに〈同伴者作家〉として広津和郎,野上弥生子,山本有三,芹沢光治良らがいた。…

※「江馬修」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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