江尻(読み)えじり

精選版 日本国語大辞典 「江尻」の意味・読み・例文・類語

えじり【江尻】

静岡市清水区の地名。江戸時代東海道宿場町として繁栄。武田信玄築城の江尻城があった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「江尻」の意味・読み・例文・類語

えじり【江尻】

静岡県静岡市の地名。もと東海道五十三次の宿駅。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「江尻」の解説

江尻
えじり

ともえ川河口部の東岸をいう。平安時代には東海道高橋たかはし宿の浦浜、また巴川西岸にあった国府の外港入江いりえ浦への渡場として機能したと思われる。鎌倉時代後期以降になると、入江浦に替わって当地の津(江尻津)が巴川河口部の湊として隆盛となり、また高橋に替わって東海道の宿駅としても機能するようになった。戦国時代には江尻城が築かれ、近世には東海道の江尻宿として発展する。なお近世の江尻宿は古代・中世の江尻の中心地からは若干東方に移動していると考えられる。

古代における巴川の下流域と河口部は現在と大きく異なり、入江が内陸奥深く入り込む地形で、北の廬原いおはら郡と南の有度うど郡は巴川とその周辺の湿地帯によって遮られ、交流は舟運によっていたものと考えられる。それ故、古代・中世の東海道は近世と異なり、駿河府中から瀬名川せながわ(現静岡市)、高橋を経て興津清見おきつきよみ関に通じていた(「駿河志料」によると近世この道は北街道とよばれた)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

百科事典マイペディア 「江尻」の意味・わかりやすい解説

江尻【えじり】

駿河国庵原(いはら)郡の地名。中世には江尻宿・江尻津みえ,近世には江尻宿として東海道の宿駅であった。現在の静岡県静岡市(旧清水市)の中心部にあたる。《吾妻鏡》文治3年(1187年)7月18日条によると,江尻に渡船があったことが知られる。1223年には《海道(かいどう)記》の筆者が江尻の浦に至っており,当時小規模ながら宿駅の機能をもっていたと推測される。1376年駿河国内にある鎌倉円覚(えんがく)寺荘園年貢が江尻から積み出されており,今川氏の支配下にあってしだいに水陸の交通の要衝としての地位を高めていった。武田氏が駿河に侵入したのち,巴(ともえ)川を外堀に利用した江尻城が築かれ,武田一族の穴山信君(のぶきみ)(梅雪(ばいせつ))がこの地を城下町として整備した。1601年東海道の宿駅に指定されたが,江尻津がもっていた湊としての機能は巴川河口付近に建設された清水湊に移された。江戸時代の江尻宿には複数の町が存在し,各町に町頭(まちがしら)が置かれて町政にあたった。《東海道宿村大概帳》によれば,宿内町並みは東西13町余,人口は隣接する加宿(かしゅく)6村を含め6498人,家数は1340軒で,本陣2軒,脇本陣3軒,旅籠(はたご)屋40軒があった。江戸中期には江尻木綿の産地となっている。1924年1月に入江町,同年2月に清水市に編入された。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「江尻」の意味・わかりやすい解説

江尻 (えじり)

駿河国(静岡県)の宿場町。南北朝時代にはすでに伊勢方面との海上交通に従事する者が存在,1376年(天授2・永和2)の今川範国の書状によれば,江尻より駿河国内にある鎌倉円覚寺の荘園の年貢が送り出され,江尻は年貢その他物資の集散地であった。1532年(天文1)今川氏輝は江尻に商人宿および諸役を免除し,三度市を認めた。ついで今川義元・氏真は廻船の諸役を免除,江尻を宿場町・湊町として保護した。武田氏の駿河侵入後,巴川の蛇行を利用して外堀とした江尻城が築かれ,城下町が整えられ城主穴山信君(梅雪)は江尻を起点に興津・蒲原を経て甲州に通じる伝馬制を実施,南甲州から駿河の領国経営の中心とした。1601年(慶長6)東海道の宿駅に指定され,それまで江尻が持っていた湊の機能は巴川河口の南下,駿府城下町の形成と同時に行われた新しい清水湊の建設によって失われ,江尻は以後宿場町となった。江尻宿は志茂・仲・魚町の3町を中心とし,本陣・脇本陣・旅籠屋が集中,問屋場は魚町にあった。中心部から東へ伝馬町・鍛冶町・鋳物師町・本郷町・辻町が町並みを形成,西に入江町が続いた。各町に町頭がおかれ町政にあたった。《東海道宿村大概帳》によれば町並み13町余,人口は隣接の加宿6村をふくめて6498,家数1340,本陣2,脇本陣3,旅籠屋40である。江戸時代中期から周辺農村の和紙をはじめ諸物資の集散地,江尻木綿の産地となった。1924年入江町,同年清水市制施行により清水市に,2003年に静岡市となった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江尻」の意味・わかりやすい解説

江尻
えじり

静岡市清水区(しみずく)南部の地区。もとは静岡県清水市の中心地区の一つ。巴川(ともえがわ)下流域に位置し、大半が旧浜堤(ひんてい)の地形をなし、緩やかに南に下る。中世、港町(江尻湊(みなと))、宿場町(江尻宿)として発展。戦国大名今川氏支配下に駿府(すんぷ)の外港町。その後武田信玄(しんげん)は江尻城を築造、城下町を形成。近世には東海道の宿場町として発展した。

[川崎文昭]

『『清水市郷土研究第三輯 江尻』(1938・清水市)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

事典・日本の観光資源 「江尻」の解説

江尻

(静岡県静岡市清水区)
東海道五十三次」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android