江南(中国)(読み)こうなん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江南(中国)」の意味・わかりやすい解説

江南(中国)
こうなん / チヤンナン

中国、長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))下流部の南方にある江蘇(こうそ/チヤンスー)省南部から浙江(せっこう/チョーチヤン)省北部にかけての地域をいう。その主要部分は太湖周辺のデルタ地帯で、江南デルタとよばれる。きわめて低平で、長江岸の自然堤防および海岸部の浜堤(ひんてい)よりも低く、無数の水路が縦横に走る水郷地帯をなす。米の生産性も非常に高く、古来「蘇(州)常(州)熟すれば天下足る」と称せられた穀倉地帯であるが、中国でもっとも早くワタ作の行われた地域でもあり、また養蚕業も盛んである。現在は中国第一の大都市上海(シャンハイ)、江蘇省省都の南京(ナンキン)、浙江省省都の杭州(こうしゅう/ハンチョウ)、古都蘇州(そしゅう/スーチョウ)のほか多くの工業都市や郷鎮企業(1980年以降に生まれた町村営農村企業)が発達し、中国最大の機業と電子工業の地域でもある。

 歴史的には江南は長江以南全般をいい、春秋から漢代にかけては湖北(こほく/フーペイ)省南部と湖南(こなん/フーナン)、江西(こうせい/チヤンシー)両省一帯をさしていた。唐代の江南道は四川(しせんスーチョワン)省以東福建(ふっけん/フーチエン)省までの長江南方地域全体をさし、宋(そう)代の江南は江西省以東を称した。清(しん)代初期にはいまの江蘇、安徽(あんきアンホイ)両省をあわせた地域を江南省とよび、その後2省に分かれたあとも江南と総称する慣習が残った。

[河野通博]

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