永楽銭(読み)えいらくせん

精選版 日本国語大辞典 「永楽銭」の意味・読み・例文・類語

えいらく‐せん【永楽銭】

〘名〙
※中古日本治乱記(1602)七(古事類苑・泉貨一)「永楽銭渡于日本事」
紋所の名。永楽銭の表面図柄にしたもの。水野越前守家紋でもあったところから、水野家銭(みずのけぜに)とも称した。
浄瑠璃薩摩歌(1711頃)鑓じるし「永楽銭のかごじるし、黒鳥の末ひろはすはう長門のはぎの殿」

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デジタル大辞泉 「永楽銭」の意味・読み・例文・類語

えいらく‐せん【永楽銭】

中国永楽帝時代鋳造された銅貨。「永楽通宝」の文字を鋳出している。室町時代に輸入され、江戸初期にかけて標準的貨幣として流通した。永楽通宝。永楽。永。
紋章の一。1をかたどったもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「永楽銭」の意味・わかりやすい解説

永楽銭
えいらくせん

中国の貨幣、永楽通宝のこと。明(みん)の成祖(せいそ)の治世、永楽年間(1403~24)に鋳造された銅銭。「永楽」「永銭」「永」ともいう。足利義満(あしかがよしみつ)のころからわが国に多く輸入され、室町時代から江戸初期にかけて標準貨幣として重んぜられた。戦国時代に後北条(ごほうじょう)氏をはじめ関東の大名が永楽銭を貨幣使用の基準としたことなどにより、関東地方でとくに珍重された。江戸時代初めに幕府は金1両の比価を永楽銭1貫文、鐚銭(びたせん)4貫文と公定したが、1608年(慶長13)永楽銭の使用を禁止した(禁止の年には異説もある)。永楽銭には、日本および明でつくられた模造銭がある。また豊臣(とよとみ)秀吉は賞賜用に金銀の永楽通宝をつくったというが、明らかではない。

[百瀬今朝雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「永楽銭」の意味・わかりやすい解説

永楽銭
えいらくせん

永楽帝(在位 1402~24)が永楽9(1411)年に鋳造を始めた銅銭。正しくは永楽通宝と称し,日本では永楽銭,永銭,永などと略称した。大小 5種類あり,足利義政がたびたび明に請うて永楽銭を求めたので,日本に多量に輸入され,広く流通した。室町時代には質のよさから標準的通貨として珍重され,特に北条氏が永楽銭のみを本位貨幣として用いることにしたので,関東地方ではこれを標準にした永高制が成立し,大量の永楽銭が流通した。豊臣秀吉は永楽銭を模して,永楽金銀銭を鋳造したこともある。慶長9(1604)年,鐚銭(びたせん)4対永楽銭 1という比率が定められたが,交換をめぐって紛争が続発したので,同 13年に使用が禁止された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「永楽銭」の解説

永楽銭
えいらくせん

室町時代に最も流通した明の銅銭永楽通宝
永楽・永銭・永ともいう。中国,明の成祖永楽帝の1411年に鋳造が開始され,日明貿易により間もなく伝来し,標準貨幣となり私鋳銭も出た。特に関東諸大名(後北条・武田氏など)に重用され貢納・物価の基準となった。江戸時代,幕府により通用が禁止され,寛永通宝の鋳造によりしだいに姿を消した。

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世界大百科事典(旧版)内の永楽銭の言及

【永高】より

…中世後期に永楽銭(永楽通宝)を基準として算定した年貢収納高で,関東特有の現象である。永積,永盛,永別などの呼称もある。…

【永楽通宝】より

…日本へも大量に輸入された。【稲葉 一郎】
[永楽銭の輸入と流通]
 1401年(応永8)最初の遣明使に従い入明した仲芳中正は楷書をよくし,成祖の命で永楽通宝の銭文を書いたと伝える。明では諸国の朝貢船の進貢物に対し頒賜物があり,また積載した貨物を買い上げたが,頒賜物の中に銅銭があり,買上物の代価に銅銭をあてた。…

【銭相場】より

…ついで760年(天平宝字4)発行の金貨開基勝宝は1枚をもって同年発行の太平元宝(銀貨)10枚,また太平元宝1枚は同年発行の万年通宝(銅貨)10枚に相当するという交換割合が規定された。江戸時代に入って,幕府は1608年(慶長13)12月,永楽銭1貫文=鐚銭(びたせん)4貫文=金1両とし,翌年には金銀銭貨の比価を金1両=銀50匁=永楽銭1貫文=京銭(鐚銭と同義語)4貫文とした。1700年(元禄13)11月には金1両=銀60匁=銭4貫文と改定され,これが幕府の法定相場として幕末まで維持された。…

※「永楽銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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