永仁の徳政令(読み)エイニンノトクセイレイ

デジタル大辞泉 「永仁の徳政令」の意味・読み・例文・類語

えいにん‐の‐とくせいれい【永仁の徳政令】

永仁5年(1297)鎌倉幕府が出した徳政令質入れ売却した所領御家人無償返却させた。

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精選版 日本国語大辞典 「永仁の徳政令」の意味・読み・例文・類語

えいにん【永仁】 の 徳政令(とくせいれい)

永仁五年(一二九七)鎌倉幕府が発布した徳政令。御家人が売却したり質に入れ流した所領を無償で取り戻すことを認め、また債権債務についての訴訟の非受理、及び越訴制の廃止を決めた法令。関東御徳政。関東御事書法。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「永仁の徳政令」の解説

永仁の徳政令
えいにんのとくせいれい

1297年(永仁5)3月に鎌倉幕府が制定し,関東御徳政といわれた3カ条の法令。内容は次のとおり。(1)越訴(おっそ)の停止。(2)御家人所領の売買・質入れの禁止。これまでの売却・質流れ所領は,無償で取り戻すことができる。ただし,買得安堵状を下付されたものと20年を経過した所領は取り戻せない。非御家人や侍身分以下の者の買得地には,この但書条項を適用しない。(3)債務の不履行など債権債務に関する訴訟はいっさいうけつけない。質物を入れることは禁止しない。以上の立法の背景には,貨幣経済にまきこまれて窮乏し,所領を手離す御家人の激増がある。翌年には97年以前の売却・質流れ所領の無償取戻し令は存続させたうえで売買・質入れ禁止令を撤廃,債権債務訴訟が再開されていることも,御家人の窮乏の深刻さを示す。同時に越訴も復活したが,その背景には専制化する北条氏得宗家の権力と御家人勢力の対抗関係があったらしい。徳政令ははじめてではなかったが,社会の反応はすばやかった。徳政による取戻しを避けるため,売券と同時に譲状が作られるようになる。また取戻し令(徳政令)が出ても,この売買には適用されないという文言(徳政担保文言)を売券に記すことも多くなった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「永仁の徳政令」の意味・わかりやすい解説

永仁の徳政令
えいにんのとくせいれい

鎌倉幕府が御家人の経済的救済のため,永仁5 (1297) 年3月に発布した土地無償取戻し令。このときの徳政令は現在3ヵ条が伝えられている。 (1) 越訴 (おっそ) を停止し,徳政令によって訴訟がふえるのを防止する。 (2) 以後,所領の質入れ,売買を認めない。以前,売却した所領は売主が無償で取戻すことができる。ただし,幕府公認のもの,20年以上経過したものを除く。これも買い主が御家人の場合で,非御家人や凡下の場合は 20年以上経過していても売主が取戻すことができる。 (3) 金銭貸借についての訴訟は今後受付けない。しかし,これによって御家人はかえって金融の道を閉ざされることになったので,翌年所領の質入れ,売買は再び合法性を認められた。ただし,永仁5年徳政令以前における質券売買地の無償取戻しは引続き有効とされた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「永仁の徳政令」の意味・わかりやすい解説

永仁の徳政令
えいにんのとくせいれい

1297年(永仁5)3月鎌倉幕府が制定した御家人(ごけにん)所領取り戻しを中心とする法。御家人所領の売買、質入れを禁止し、すでに売却済み、質流れの所領については、買得安堵状(ばいとくあんどじょう)が下付されたものと買得後20か年を超過したものを除いて、本主に返還することを定めた。また、買主が非御家人、凡下(ぼんげ)である場合には、20か年以上を経過した所領についても売主による取り戻しを認めた。なお同時に「越訴(おっそ)」(再審制)の廃止と金銭貸借訴訟の不受理が規定され、3か条あわせて当時「徳政」とよばれた。翌年2月3か条はすべて撤回されたが、1297年以前の売却、質流れ地の取り戻しについては再確認された。

[近藤成一]

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旺文社日本史事典 三訂版 「永仁の徳政令」の解説

永仁の徳政令
えいにんのとくせいれい

1297(永仁5)年,鎌倉幕府が発布した御家人の債権・債務の破棄令
その内容は,(1)越訴の禁止,(2)御家人所領の売却・入質の禁止。すでに売却した所領に関しては,買得者が御家人で買得後20か年を過ぎているものは取りもどせないが,買得者が非御家人・凡下 (ぼんげ) の場合は年紀を問わず無償で返却,(3)以後,幕府は御家人を相手にした金銭貸借関係の訴訟はいっさい受理しない,という3カ条よりなる。元寇後貧窮した御家人の救済が目的であったが,かえって経済界の混乱を招き,第(2)条は翌年廃止された。

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