永・長・存(読み)ながらえる

精選版 日本国語大辞典 「永・長・存」の意味・読み・例文・類語

ながら・える ながらへる【永・長・存】

〘自ア下一(ハ下一)〙 ながら・ふ 〘自ハ下二〙 (動詞「ながる(流)」に、反復、継続を表わす助動詞「ふ」が付いて下二段化したもの)
[一] (流) 流れるように落ち続く。静かに降り続く。
万葉(8C後)八・一四二〇「沫雪かはだれに零(ふ)ると見るまでに流倍(ながらヘ)散るは何の花そも」
[二] 時間が経過する意を表わす。
① 同じ状態が続く。長くとどまる。
※万葉(8C後)一九・四一六〇「天地の 遠き始めよ 世の中は 常無きものと 語り継ぎ 奈我良倍(ナガラヘ)来れ」
源氏(1001‐14頃)若菜上「数ならぬかたにても、ながらへし都を捨てて、かしこに沈み居しをだに」
生命が存続する。長生きする。
※万葉(8C後)八・一六六二「沫雪の消(け)ぬべきものを今までに流経(ながらへ)ぬるは妹にあはむとそ」
説経節・説経苅萱(1631)下「かひなきいのちなからへて、せんなき事とおぼしめし」
③ 出家するのを延び延びにして俗界に居続ける。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「ある世にかはらむ御ありさまのうしろめたさによりてこそながらふれ」
[補注](1)(二)は、(一)とは別語であるとも考えられるが、「万葉集」の一六六二や二三四五に見られる「流経(ながらへ)」の表記は、(一)から(二)への転移を思わせる。後に、「なが」を長の意と考え、永・存などの字をあてるようになったものか。
(2)室町時代頃からヤ行にも活用した。→ながらゆ(永)

ながら・ゆ【永・長・存】

〘自ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の「ながらふ」から転じて、室町時代頃から用いられた語) =ながらえる(永)
※コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)一「ナニト シテカ ブジニワ nagarayubeqizo(ナガラユベキゾ)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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