すい‐ば【水馬】
〘名〙
①
乗馬で水を渡る術。また、その馬。馬を
水中に乗り入れ、馬の脚の立たなくなった所で馬を離れて泳がせ、馬の脚の立つ所にきて再びその背に乗る術。
江戸幕府の
年中行事の
一つになり、
隅田川で毎年六月に行なわれるこの
行事には
将軍が臨席した。《季・夏》
※神伝流游書(17C前か)「水馬と言ひても別に些細はこれ無きものなり。馬は人を便りにするものなれば水練未熟にて取り扱かひ致すべきものに非ず」
② 軽快な舟。特に陰暦五月五日の
競渡に用いる
小舟。
※
俳諧・増山の井(1663)五月「競渡 鳬車 水馬〈略〉南方越の国人は此競渡の舟のかろくはやきを飛鳬といへり。又鳬車とも水馬共いへり」
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デジタル大辞泉
「水馬」の意味・読み・例文・類語
すい‐ば【水馬】
馬に乗って水を渡る術。馬を水中に乗り入れ、馬の脚の立たなくなった所で鞍壺から離れて泳がせ、馬の脚の立つ所で再び鞍壺にまたがるもの。江戸幕府の年中行事の一つになり、将軍臨席のもと隅田川などで毎年6月に行われた。
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水馬
すいば
馬術のうち、河川や海浜を渡河する際の乗御法で、武装水馬と裸馬水馬とがある。馬は生来遊泳の能力があるが、陸上生活が主体であるため、水中に乗り入れることを恐れ嫌うことが多く、そのために平素から水に馴致(じゅんち)させる訓練を必要とした。江戸時代の水馬の研究は幼稚で、騎手が水練の上手であることが、水馬の必須(ひっす)条件とされ、馬の脚が立たなくなる深みに入れば、騎手は馬の一側に降りて、ともに泳ぐべしと教え、また馬の浮力を増加させるために、馬に浮袋(うきぶくろ)・浮襷(うきたすき)・浮沓(うきくつ)などを着用することが考案された(小堀常春(こぼりつねはる)『水馬千金篇(せんきんへん)』など)。江戸幕府は水馬奨励のため、毎年夏6月、隅田川などで諸士の騎馬川渡(きばかわわた)しを催し、将軍の御覧に供したりした。
[渡邉一郎]
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