水酸化アルミニウム(読み)すいさんかアルミニウム(英語表記)aluminium hydroxide

精選版 日本国語大辞典 「水酸化アルミニウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐アルミニウム スイサンクヮ‥【水酸化アルミニウム】

〘名〙 (アルミニウムはAlminium) アルミニウムの水酸化物。化学式 Al(OH)3 白色の単斜晶系結晶。媒染剤吸着剤、水浄化剤、レーキ製造などに用いられる。水礬土(すいばんど)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「水酸化アルミニウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐アルミニウム〔スイサンクワ‐〕【水酸化アルミニウム】

アルミニウム塩類にアンモニア水を加えて得られる白色のゼラチン状沈殿物。媒染剤・吸着剤などに用いる。水礬土すいばんど化学式Al(OH)3

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「水酸化アルミニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アルミニウム (すいさんかアルミニウム)
aluminium hydroxide

化学式Al(OH)3。3種の結晶形が知られている。(1)ギブス石gibbsite α-Al(OH)3。また水バン土とも呼ばれる。ボーキサイトの主成分である。実験室では,アルミン酸ナトリウムNaAlO2水溶液に二酸化炭素CO2を通じてつくる。

 2[Al(OH)4]⁻+CO2─→2Al(OH)3+H2O+CO32

80℃でアルミン酸ナトリウム溶液から再結晶できる。比重2.43,酸に溶けにくく,100℃で数時間加熱しても脱水反応が進行しない。(2)バイヤー石beyerite β-Al(OH)3。天然には産出しない。20℃においてアルミン酸ナトリウム溶液に二酸化炭素を通じ,速やかに生成させるとバイヤー石が得られる。ゆっくりと沈殿させると前記のギブス石となる。比重2.50。(3)ノルドストランド石nordstrandite アルミニウム塩溶液にアンモニア水を加えるとゲル状水酸化物を生ずる。これをエチレンジアミンエチレングリコールEDTAなどの存在で熟成させると生ずる。天然にはほとんど産出しない。以上3種の結晶では,いずれも水酸化物イオンの六方最密充てん内にアルミニウムが入り,アルミニウムには6個の酸素原子が八面体六配位型に配位している点が類似しているが,ギブス石は六方晶系,バイヤー石は三方晶系,ノルドストランド石はその中間の結晶構造をもっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化アルミニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アルミニウム
すいさんかあるみにうむ
aluminium hydroxide

アルミニウムの水酸化物。化学式Al(OH)3、式量78.0。α(アルファ)型、γ(ガンマ)型のいずれも単斜晶系の結晶。天然にはギブス石(γ型)、バイエル石(α型)として産出するほか、酸化水酸化物AlO(OH)がダイアスポア、ベーム石として産出する。アルミン酸ナトリウム水溶液に二酸化炭素を吹き込む方法や、アルミニウム塩水溶液のアンモニアまたは水酸化アルカリによる中和などで得られる(α型)。α型の比重2.49、γ型は2.40。通常は水溶液から沈殿させるとコロイド状の水和物が得られる。水にはほとんど不溶。アセトンに不溶。メチルアミンに溶ける。両性水酸化物で強酸、水酸化アルカリ溶液に溶けるが、放置しておくとしだいに溶けにくくなる。加熱すると脱水がおこり、いろいろな中間相を経て最後にはα-アルミナとなる。アルミナの製造原料となるほか、化学薬品(硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、合成ゼオライト)の原料、窯業材料、ゴム、プラスチックの填料(てんりょう)、紙用充填剤など、水酸化アルミニウムで耐火性、難燃性、白色度などを向上させるのに用いられる。また、媒染剤、制酸剤、繊維の防水にも使われる。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「水酸化アルミニウム」の解説

水酸化アルミニウム
スイサンカアルミニウム
aluminium hydroxide

Al(OH)3(78.00).天然にはギブス石Al(OH)3,ダイアスボアAlO(OH)またはAl2O3・H2Oとして産出する.アルミン酸塩水溶液に二酸化炭素を通じるとAl(OH)3の白色の結晶が得られる.密度2.42 g cm-3.水に難溶.両性水酸化物で,鉱酸にもアルカリにも溶解する.エタノールに不溶.300 ℃ で脱水して酸化アルミニウムを生じる.水和したゲルは吸着力が強い.ガスや液体の精製,クロマトグラフィーの吸着剤,乳化剤,媒染剤,製紙,繊維の防水,セラミックガラス,難燃剤,耐火物の製造,医薬品(制酸剤,収れん剤)などに用いられる.[CAS 21645-51-2:Al(OH)3][CAS 14457-84-2:AlO(OH)]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水酸化アルミニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アルミニウム
すいさんかアルミニウム
aluminum hydroxide

化学式 Al(OH)3 。なお,2Al(OH)3 は Al2O3・3H2O と形式的に書けることから,Al2O3・nH2O を総称して呼ぶこともある。通常は白色の無定形粉末として得られる。水に不溶,両性で酸およびアルカリ溶液に可溶である。水と長時間接するとゲル化する。吸着剤,イオン交換体,クロマトグラフィーでの固定剤,染色の媒染剤,ろ過剤,ガラスの製造,ゲルや乾燥ゲルとして医薬品などに使用される。天然には,ギブス石ダイアスポアとして産出する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「水酸化アルミニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アルミニウム【すいさんかアルミニウム】

化学式はAl(OH)3。比重2.43〜2.50。水,アルコールに不溶の無色粉末。両性で酸,アルカリに可溶。アルミニウム塩の水溶液にアンモニア水を加えると白色のゲル状沈殿Al(OH)3・nH2Oとして得られる。熱するとAlO(OH)を経て酸化物Al2O3となる。ゲル状のものは吸着性が強い。吸着剤,媒染剤,医薬(制酸剤)などに利用。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「水酸化アルミニウム」の解説

水酸化アルミニウム

 白色コロイド状の沈殿で,吸着剤,乳化剤,その他に使われる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android