水船(読み)みずぶね

精選版 日本国語大辞典 「水船」の意味・読み・例文・類語

みず‐ぶね みづ‥【水船】

〘名〙
① 打ち込む波や船体の損傷による浸水で船内に水が充満し、沈没しそうな状態の船。
※南海紀聞(1793)「激浪欄版を砕き、水船となり」
飲料水を運送する船。水伝馬。水取船。
※石山本願寺日記‐私心記・永祿四年(1561)九月一九日「四郎次郎雇候て、水船作也」
③ 江戸時代、灘地方の酒造家が仕込用水として買う宮水(西宮の一地区から湧き出す水)を、運賃をとって運搬した水船業者仲間の船。
※魚崎酒造組合文書‐諸用留「私共年来水船渡世御蔭を以不絶積来り候処」
④ 水をたくわえておく大きな桶。水槽。また江戸時代では、銭湯の男湯女湯洗い場の境にあって、両方から汲める水槽をもいった。
※太平記(14C後)七「大なる木を以て水舟(みづフネ)を二三百打せて、水を湛置たり」
生魚を入れておく水槽。生船(いけふね)
※新撰六帖(1244頃)三「水舟に浮きてひれ振るいけ鯉の命待つ間もせはしなの世や〈藤原光俊〉」
⑥ 死体を納めるはこ。棺(かん)
※大江俊矩記‐寛政一二年(1800)四月一二日(古事類苑・礼式一九)「奉御棺、是称御水舟歟、所謂御也」
浮世草子本朝二十不孝(1686)二「卵塔の水艇(みづブネ)に腰をかけ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「水船」の意味・読み・例文・類語

みず‐ぶね〔みづ‐〕【水船】

飲料水を運ぶ船。水取り船水伝馬みずてんま
(「水槽」とも書く)
㋐水をたくわえておく大きな桶。すいそう。
「―の前に腰を据えて、しきりに水をかぶっている坊主頭」〈芥川戯作三昧
㋑生魚を入れておく容器活船いけぶね
「―に浮きてひれ振るいけごひの命まつまもせはしなの世や」〈新撰六帖・三〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の水船の言及

【海難】より

…一方,海難によって生じた財産上の損害を塡補(てんぽ)するために海上保険の制度があるが,その源流はギリシア・ローマ時代にまでさかのぼり,各種の現代的保険の母体をなすとされている。【佐藤 幸夫】
[江戸時代の海難]
 江戸時代の海難を当時の用語に従って挙げれば,破船(難破),難船(難航して船体・積荷に被害があること),膠船(座礁),水船(浸水),沈船(沈没),当逢(あたりあい)(衝突),打揚げ,行方不明等である。このほか広義には,敵艦船の攻撃・拿捕(だほ),沿岸民の占取・略奪,海賊・盗賊の襲撃・強奪,失火・自然発火による火災,不法行為による打荷(うちに)・窃盗等が含まれる。…

※「水船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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