水生菌類(読み)すいせいきんるい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水生菌類」の意味・わかりやすい解説

水生菌類
すいせいきんるい

水中にすむ腐生菌、寄生菌の総称。その多くは腐生菌であって、水中での物質循環のうえで重要な働きをしている。寄生菌の宿主は魚貝類、昆虫、被子植物、藻類、他の菌類菌糸などである。海水中には豊富な有機物に伴って腐生菌が広く分布し、細菌類、コウボキン類などには普遍種がみられる。このほか、接合菌類、子嚢(しのう)菌類、不完全菌類などの水生菌類もある。また、4000メートル以上の深さにまでツボカビ類、卵菌類が存在している。淡水河川湖沼にもこれらの菌類は多く分布するが、渓流に沈んだ落ち葉などに生ずる不完全菌類の分生子(無性的な胞子の一種)は、テトラポット型に分岐していて水面の泡に群がるため、水泡菌とよばれる。都市の廃水中には細菌類やケカビ仲間、フシミズカビ類、不完全菌類のフザリウム仲間などがみられ、廃水菌といわれる。水生菌の種類と分布は、水温溶存酸素、有機物の種類と季節的増減、菌類間の競争などによって自然に変動する。

[寺川博典]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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