水晶時計(読み)スイショウドケイ

デジタル大辞泉 「水晶時計」の意味・読み・例文・類語

すいしょう‐どけい〔スイシヤウ‐〕【水晶時計】

水晶発振器の安定した周波数を利用した時計。誤差がきわめて少なく、かつては天文台標準時計放送局の時報に利用。簡単なものはクオーツ時計として腕時計に利用される。電子時計

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精選版 日本国語大辞典 「水晶時計」の意味・読み・例文・類語

すいしょう‐どけい スイシャウ‥【水晶時計】

〘名〙 水晶板の安定したピエゾ振動に制御されて動く精密時計。誤差は一日につき 5×10-11 秒程度で、放送局の時報などから小型の腕時計まで広く用いられている。クォーツ時計

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水晶時計」の意味・わかりやすい解説

水晶時計
すいしょうどけい

水晶の弾性振動と圧電効果を利用した振動子を時間標準に使用している時計。クォーツ時計ともいう。無線通信の発達過程で安定した周波数(振動数)を得るため水晶発振器、水晶振動子の研究が行われたが、1927年アメリカのマリソンWarren A. Marisonはこの水晶発振器を利用した時計を発明した。一方、1933年(昭和8)古賀逸策(いっさく)の、Rカットとよばれる振動数が温度変化に事実上影響されない振動子の発見は、安定した振動源として水晶発振器の地位確立に大きく貢献した。その後、トランジスタ集積回路の発明などエレクトロニクスの急速な進歩によって小型化、低電力化され、1969年末にはついに水晶腕時計が市場に現れた。水晶時計は、今日では標準時計の地位をしだいに原子時計に奪われてはいるものの、高精度が容易に得られ、量産に適していることから、短期間のうちに時計製品の大半を占めるに至った。高精度のものは1日の誤差が0.001秒程度から、一般市販品は1日0.01~1秒の精度である。

 水晶時計の構造中、重要なものに水晶発振部がある。これは振動子に電圧を加え、弾性振動をおこさせ、その固有振動数の振動電圧を取り出すと同時に、その一部を増幅して振動子に戻し、その振動を継続させる働きをもつ装置である。水晶振動子は、水晶の結晶軸からの切出し方、形状、寸法によって振動数、温度特性が決まる。時計に使用されている振動数範囲は8キロヘルツ~8メガヘルツであり、これらはそのままでは利用できないので分周回路によって電子的に必要な振動数まで逓降(ていこう)する。駆動回路はこれらを波形整形、電力増幅し、電気エネルギーを機械的な運動に変える変換部の同期モーターに送る。モーターの回転は歯車によって時針、分針に伝えられる。全電子時計とよばれる、表示部に液晶または発光ダイオードを用いた時計では、分周回路と協同して、秒・分・時などの信号を得るカウンター回路、信号を解読してわかりやすい、たとえば数字の形とするデコーダー回路、およびセグメントに電圧を加えたり切ったりするドライバー回路によって時刻の表示が行われる。

[元持邦之]

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改訂新版 世界大百科事典 「水晶時計」の意味・わかりやすい解説

水晶時計 (すいしょうどけい)
quartz clock(watch)

クォーツ時計ともいう。きわめて正確な一定周波数の電気振動を発生させる水晶発振器で運行を制御する時計。原子時計に次ぐ精度をもち,腕時計の普及品で月差15秒以内,最高級品では年差数秒である。時刻表示方式はアナログ式とディジタル式の2種類に大別されるが,その両方を複合した時計もある。主要な部分がすべて電子化されたディジタル時計では,ストップウォッチアラーム,カレンダー,さらにはゲームなどの付加機能をもつものも多い。

 アナログ式の水晶時計の場合,その基本部分は,水晶振動子と,発振回路・分周回路・駆動回路を組み込んだLSIで構成されている。固有の周波数をもつ水晶振動子は,LSIの発振回路によって振動が持続される。この振動の周波数は通常腕時計で3万2768Hz,置時計や掛時計などのクロックで419万4304Hzであり,この周波数を分周回路によって駆動用モーターを動かすのに適当な周波数(腕時計では1Hz)まで低減する。次にこれを駆動回路によって1秒ごとに向きが逆転する電気信号に変えてモーターに送り,この信号でモーターが瞬間的に回転すると同時にすべての歯車が回り,時・分・秒針が1秒だけ進む。ディジタル式も分周回路まではだいたいアナログ式と同じであるが,分周回路と駆動回路の間に計数回路と数字形成回路が組み込まれている点が異なる。計数回路は1秒が60回で1分,1分が60回で1時間,1時間が12回で1/2日の計算をつかさどる部分で,この計算は二進法で行われ,これを十進数として表示するためのものが数字形成回路である。その信号を駆動回路によって,例えば32Hzの交流に変えて液晶板に送り時刻を表示させるのである。

 腕時計用の水晶振動子は,とくに,小型,低電力,ショックに強い,温度変化に対する周波数変化が小さいなどの特性が必要で,これらの要件を満たすため,温度誤差が最小になるような水晶片のカット,フォトエッチングによる成形,C-MOS回路の採用などが実行されている。水晶振動子の形状は腕時計用が音叉型,クロック用は凸レンズ型である。駆動用モーターには連続運転と間欠運転のものとがあり,後者はステップモーターと呼ばれ,1回に180度ずつ動くものが一般的である。
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百科事典マイペディア 「水晶時計」の意味・わかりやすい解説

水晶時計【すいしょうどけい】

クォーツ時計ともいう。きわめて正確な一定周波数の電気振動を発生させる水晶発振器で運行を制御し,原子時計に次ぐ精度をもつ。時刻表示方式にはアナログ式,デジタル式,複合式がある。主要部分がすべて電子化されたデジタル時計にはストップウォッチ,アラーム,カレンダーや電卓,高度計,ゲームなどの機能をもつものが多い。
→関連項目置時計音叉時計掛時計機械時計クォーツ時計振子時計

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水晶時計」の意味・わかりやすい解説

水晶時計
すいしょうどけい
quartz chronometer

水晶発振器を利用した時計。水晶発振器の安定な周波数を分周回路で下げて時刻信号とし,これで同期電動機を回して針を動かしたり,または計数回路で計数して表示装置に示して時刻を表わす。水晶振動子を恒温槽に入れるなど,特に安定化をはかったものは非常に高精度 ( 10-11 程度) で,標準時計として使用される。やや簡易な構造のものが,クォーツ時計の名でつくられている。

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世界大百科事典(旧版)内の水晶時計の言及

【時計】より

… 日本の近代的時計製造は明治10年前後に端を発し,長い間アメリカ製・スイス製時計の模倣時代が続くが,第2次大戦後急速に進展して独自の製品を開発し,品質,数量とも時計王国といわれたスイスを上回るまでに成長した。ことに水晶時計では69年にアナログ式腕時計が発売されて以来世界の時計産業をリードし続けている。 なお,機械時計の歴史上もっとも有名な時計師はパリに工房をもったブレゲーAbraham Louis Bréguet(1747‐1823)である。…

※「水晶時計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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