気圧計(読み)きあつけい

精選版 日本国語大辞典 「気圧計」の意味・読み・例文・類語

きあつ‐けい【気圧計】

〘名〙 大気の圧力を測る装置。気象観測用のものは晴雨計ともいう。水銀気圧計金属気圧計など。バロメーター気圧表。

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デジタル大辞泉 「気圧計」の意味・読み・例文・類語

きあつ‐けい【気圧計】

気圧を測る装置。水銀気圧計アネロイド気圧計などがある。晴雨計ともよばれる。バロメーター。

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改訂新版 世界大百科事典 「気圧計」の意味・わかりやすい解説

気圧計 (きあつけい)

気圧を測定する器械で,英語ではバロメーターbarometerという。気圧の変化と天候は関連が深く,晴雨計と呼ばれたこともあった。〈気圧〉はわれわれを取り囲んでいる大気がおよぼす自然の圧力で,その場所から大気の上限まで延びている単位面積当りの鉛直な気柱の重量に等しい。よく使われている気圧計は水銀気圧計とアネロイド気圧計である。水銀気圧計は正確なため広く使用されている。その原理はトリチェリによって発見され1643年に行われたトリチェリの実験として知られている。つまり気圧とつり合う圧力を水銀柱によって作り出し,その高さを測定することによって水銀柱の圧力,すなわち気圧を算出している。このときの気圧をP,水銀の密度をρ,その場所の重力の加速度をg,水銀柱の高さをhとすれば,

 Pρgh

から求めることができる。このように,水銀気圧計はそれ自身で気圧を測定することのできる唯一の気圧計である。水銀気圧計の中で一般的なものはフォルタン気圧計である。これは1800年ごろフランスの測器製作者フォルタンNicolas Fortin(1750-1831)によって改良されたものである。このほかに水銀気圧計には,フォルタン気圧計とは異なり,水銀溜めの水銀面を象牙針に合わせずに直接水銀柱の高さを測定できるステーション型気圧計,ステーション型気圧計を常に鉛直を保つようにして船舶で使用できるようにしたマリン型気圧計などがある。

 アネロイド気圧計はイタリアのビディL.Vidie(1805-66)が1843年に考案し,44年に特許を取った気圧計で,気圧を金属製の空ごう(盒)で受け,気圧の変化につれて空ごうが変形するのを拡大して表示するように作られたものである(図)。目盛は水銀気圧計と比較して定める。空ごうの変形や拡大機構または温度の変化による誤差を防ぐ方法などにさまざまな工夫が行われているので,アネロイド気圧計にはいろいろな型式がある。アネロイドaneroidというのは,水銀気圧計とちがって,“液体を用いない”という意味である。

 測定地点の高度が高くなれば気圧は低くなる。他の地点のデータと比較するためには,海面上の値に換算する必要がある(海面更正)。逆にある地点の気圧がわかれば,その地点の高度が求められる。この原理を利用したのが気圧高度計であり,航空機などで使用されている。

 特殊な気圧計には次のようなものがある。気圧の微少な変動を測定するための気圧計を微気圧計と呼び,空ごうを使用するスタトスコープはこの代表例である。液体の沸点が気圧により変動することを利用し,沸点を測定することにより気圧を求める沸点気圧計hypsometerもあり,ラジオゾンデやロケットの気圧計など特殊な分野で使用されている。

 気圧計はふつう建物の中に置いてあるので,その測定には注意を要する場合がある。風が強いときには,一般に,風上側の壁にすきまがあるときには建物の内部の圧力は気圧より高くなり,側面や風下側の壁にすきまがあると内圧は低くなる。また高層ビルで冷房をしているときには低い階の室内の圧力は気圧より高くなり,暖房をしているときにはその逆になる。正確な気圧を必要とするときには気圧計を気密箱に入れ,その箱を戸外パイプで連結するなどの工夫が必要になってくる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「気圧計」の意味・わかりやすい解説

気圧計
きあつけい

気圧を測定する際に用いられる計器。気圧の変化は天気と密接な関係があるので、普通の気圧計は晴雨計ともよばれる。古くから用いられているものは、トリチェリの真空を利用した水銀気圧計と、排気した金属容器の、外気圧に応じた変形を測る方式とに大別される。後者は、液体を使用しないとの意味からアネロイド気圧計ともいう。水銀気圧計での測定には細心の注意がいる。気圧計を小さい部屋あるいは収容箱に入れて、水銀とスケールの温度が急に変化しないようにし、鉛直に固定する。測定の際は、まず軽く指でたたいて水銀面を安定させ、スケールのゼロ点をあわせ、水銀柱の上面の高さを読み取る。目盛りはヘクトパスカルのものが普通であるが、ミリメートルやインチ目盛りもある。温度補正をして0℃での高さに引き直し、次に標準重力(加速度980.665センチメートル・毎秒・毎秒)での値に補正する。これは現地気圧ともよばれる。ゼロ点あわせのいらないステーション型、船上での動揺にも耐えるマリン型、水銀柱の高さを電気抵抗に変換する方式など、いろいろくふうした器械もある。スプルングの気圧計は、水銀の重量を天秤(てんびん)で測り、これを連続して記録する。精密ではあるが製作や保守に難点があるので、しだいに使用されないようになった。アネロイド気圧計には、指針が示す目盛りを読み取る指示型のほかに、感部の動きを記録ペンに伝えて、連続したグラフのように描く自記気圧計がある。いずれも、バイメタルで自動的に温度補正がなされる。その示度は、あらかじめ現地気圧にあわせておく。近年実用化されつつある振動式気圧計は、アネロイド型の感部の変化を互いに逆方向の力に分けて、二つの水晶振動子に加える。水晶の発振周波数の差は気圧の変化に比例するから、周波数をカウントすれば気圧がわかる。真空ケースに金属製円筒を入れ、これを圧電素子で振動させる方式もある。アネロイド気圧計は測定が簡単なため広く用いられるが、測定精度は、一般には水銀気圧計に及ばない。精度を保つには、ときどき水銀気圧計による値と比較し、修正するとよい。微気圧計は、気圧の変化を拡大して記録する。ドラム缶のような密閉容器にごく細い穴をあけると、外気圧が急に変化しても容器内の気圧はしばらく変わらない。この内圧を油に浮かべた浮きに導く。気圧変化に応じた浮きの上下の動きを拡大すると、1000分の1ヘクトパスカルくらいの変化まで記録できる。

[篠原武次]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「気圧計」の意味・わかりやすい解説

気圧計
きあつけい
barometer

気圧を測定する器械。気圧は大気の圧力を示すもので,気圧の変化は天気とも密接な関係があるため,晴雨計とも呼ばれていた。気圧計の歴史は古く,水銀気圧計の原型を生む実験はイタリアのエバンジェリスタ・トリチェリが 1643年に行なった。トリチェリは日ごとに水銀の高さが変化することを観察し,それが空気の重さの変化によるものとの結論を導きだした。測定方式の違いにより,気圧計には次のものがある。(1) フォルタン気圧計 気圧変動による水銀柱の高さを読み取る。(2) アネロイド気圧計 空盒(くうごう)が気圧の変化で伸縮するのを利用し,回転軸などを介して自記記録させる。(3) 円筒振動式気圧計 円筒の振動周波数の変化を検出して気圧を求める。(4) シリコン振動式気圧計 シリコン振動子の検出をして気圧を求める。(5) 電気式気圧計(静電容量型) 静電容量の変化を検出し気圧を求める。日本の気象庁が気圧の観測に使用している測器は,電気式気圧計(静電容量型)である。気圧計のセンサはシリコン基板に真空部を形成させたものである。大気圧の変化に伴い真空部上下の電極間に変異が生じ,その静電容量のわずかな変化を電気信号で得る構造となっている。

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百科事典マイペディア 「気圧計」の意味・わかりやすい解説

気圧計【きあつけい】

バロメーター,晴雨計とも。気圧を測る装置。水銀気圧計アネロイド気圧計が代表的。最近はデジタル記録のできる気圧計が開発されている。
→関連項目圧力計

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