気候誌(読み)きこうし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「気候誌」の意味・わかりやすい解説

気候誌
きこうし

各地気候特色記述した記録。気候誌の目的は、それぞれの地域の気候を明らかにすることであり、いわゆる地理学上の発見の時代(大航海時代)に重要なものであった。その記述の方法は、気候学発展に伴い、ある地点の単なる月平均値(平年値)などによる表現から、天候や気候を構成する要素値の頻度、またその組合せ頻度、それぞれの季節における代表的な気圧配置と天候の関係、異常天候の出現と気圧配置の関係などまで考慮するようになってきた。気候誌のもつ意義から、多様な目的で利用する利用者の要求に応じられる情報をどのように正確に提供するかが、今後の気候誌の重要な課題となっている。

吉村 稔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「気候誌」の意味・わかりやすい解説

気候誌 (きこうし)
climatography

系統的気候学と共に気候学の一部を形成する。気候誌は,ある場所や地域における気候を忠実・正確に記述するもので,他の地域との比較が主たる目的となる。すなわち,気候誌においては,現象の原因やその機構についての説明よりも,現象自体の記述を主目的とする。この点,気候の普遍性あるいは法則性を究明しようとする系統的気候学とは異なる。気候学の発達史の中では,18世紀に,月平均値や年平均値といった気候観測値が整理され気候誌の芽が現れた。19世紀になると観測記録が蓄積され気候誌の全盛時代が出現した。また,〈気候は大気の平均状態である〉という定義は,この時代の気候の概念を代表するもので,気候誌の黄金時代であった。この点からも,方法論としての気候学の発達に気候誌が果たした役割は大きい。
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