民間薬
みんかんやく
民間療法で使用される薬物をいう。民間薬はその土地にある動・植・鉱物が利用されるため、民族や地域によって独特なものが多い。したがって、これらの薬物を調査すること(比較民族薬物学)は、新資源の開発のみならず、民族間の歴史的、文化的関係を知るうえでも役だつものである。民間薬は、一般に単味(薬物一種類)で使用されることを特色とするが、なかには、古くから複合処方で用いられてきたものもある。また、漢方をはじめとする伝統医学で使用される薬物でも、民間療法で用いられる場合には、やはり民間薬とよぶことができる。保健薬としての「人参(にんじん)」や「枸杞子(くこし)」などはその例である。民間薬のなかには優れたものも多く、ジギタリス、ベラドンナなど、近代医学に貢献しているものも少なくない。
[難波恒雄・御影雅幸]
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民間薬
みんかんやく
医師の診断,処方,指示を経ないで,医療効果があるとして一般民間で広く使われている薬物。漢方薬と民間薬として使用される生薬には共通のものがあるが,後者は,たとえばゲンノショウコ,ハブソウ,クコのように,単味,単剤で用いられるものが多い。特殊な伝承的な使用法としては,薬湯 (浴剤) ,腰湯 (座浴) ,薬酒 (くこ酒,まむし酒,梅酒,松葉酒) ,黒焼 (梅干しの黒焼など) の類がある。
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みんかん‐やく【民間薬】
〘名〙 民間療法に用いられる薬。症状により処方して使用する漢方薬に対し単剤で用いる。ゲンノショウコ、センブリ、ドクダミなど、草根木皮を多く用い、経験的で理論はない。
※くすり公害(1971)〈高橋晄正〉くすり・ヘドロ「インドで民間薬として使われていた植物から取り出したものがある」
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デジタル大辞泉
「民間薬」の意味・読み・例文・類語
みんかん‐やく【民間薬】
医薬品として公認されていないが、民間で薬として使われているものの総称。
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みんかんやく【民間薬】
一般大衆が医師の指導によらず,みずからの判断で用いる民間伝承の薬物をいう。世界各地に知られ,呪術的に用いられるものや,各時代に医師が使用していたもののうち,有効で処方が簡単なものが民間に流布したものなど,いろいろな起源をもつものが含まれている。代表的なものに,アフリカのヨヒンベ皮(催淫薬),北アメリカのインディアンが用いたカスカラサグラダ(緩下剤),南アメリカのインカで用いられたコカ葉,イギリスのジギタリスなどがある。
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世界大百科事典内の民間薬の言及
【漢方薬】より
…漢方という言葉は,江戸時代に,オランダから伝えられた医学を蘭方と呼んだのに対して,従来中国より学んで日本に同化した医学の呼称として造られた。漢方薬に類似する用語に和漢薬,皇漢薬,民間薬などがあり,商業上はこれらを総括して漢方薬と呼ぶことがあるが,それぞれ,厳密には異なる内容を意味する。たとえば,ゲンノショウコ,ドクダミ等は広く日本の民間で用いられているが,使用法は漢方の場合とまったく異なるので通常,漢方薬には含めず,民間薬として区分する。…
【生薬】より
…また医薬品として利用されるものは,成分製剤原料であるとの考え方からdrug materialという言葉もよく使われる。 生薬に関連する日本語の用語として薬用植物,薬草,漢方薬,民間薬,和漢薬などがある。薬用植物と薬草はほぼ同意義に使われるが,薬用植物中には薬木(やくぼく)も,またアメリカでは抗生物質を生産する放線菌なども含めている。…
【薬用植物】より
…さらに,分離した単一物質の類似化合物を合成化学的に製造し,各種試験を経た後に医薬品とされることもある。日本では抗生物質製剤や,合成医薬品を開発し,製造する技術を有する一方,伝統的な和漢薬(生薬)が市場にあふれ,漢方的にもまた,民間薬的にも使える状況にある。また漢方製剤には合成医薬品などと同様に保険薬としての取扱いを受けるものもある。…
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