氏人(読み)うじびと

精選版 日本国語大辞典 「氏人」の意味・読み・例文・類語

うじ‐びと うぢ‥【氏人】

〘名〙 (「うじひと」とも)
氏族の構成員。同姓を名乗り、氏の上(かみ)に率いられて氏神をまつり、相互に強い連帯意識をもつ。
万葉(8C後)一八・四一〇〇「もののふの八十氏人(うぢひと)も吉野川絶ゆることなく仕へつつ見む」
一定の神官職につかないが、氏神の祭に参集し、奉仕する人。
実隆公記‐文明八年(1476)八月二三日「抑今日賀茂社炎上、氏人卅余人死云々」

うじ‐うど うぢ‥【氏人】

〘名〙 「うじびと(氏人)」の変化した語。
神道名目類聚抄(1699)五「氏人(ウチウト)

うじ‐んど うぢ‥【氏人】

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デジタル大辞泉 「氏人」の意味・読み・例文・類語

うじ‐びと〔うぢ‐〕【氏人】

古代氏のかみに率いられるの構成員。氏の上のもと氏神祭り部民べみんなどを配下に置いて農業に従い、戦時には兵士として戦った。うじうど。うじんど。

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改訂新版 世界大百科事典 「氏人」の意味・わかりやすい解説

氏人 (うじびと)

日本古代における氏の構成員。同種のことばに,〈うから,やから〉(族)があるが,これが血縁的社会的な氏族共同体の族員をさすのに対して,〈うじびと〉は,政治制度としての氏の構成員で,氏上(うじのかみ)にひきいられる一定範囲の人々をさし,氏上とおなじ氏姓を称する。允恭天皇のとき,盟神探湯(くかたち)によって,氏姓の乱れを正したというが,実際に氏人の範囲を法的に定めたのは,664年(天智3)大氏・小氏・伴造の氏を定め,これによって670年,庚午年籍(こうごねんじやく)を作成したときからであり,これによって氏上とそれにひきいられる氏人の範囲が登録された。その後の氏人は,氏上の直系親族を中心に,若干の傍系の同族を加える程度に限定されたといってよく,これが同一の氏姓を称した。ただし,東漢(やまとのあや)氏において,坂上・書など数十氏が同族の檜前忌寸(ひのくまのいみき)を構成し,和珥(わに)氏において,小野・粟田春日などの諸氏が同系の氏族となり,氏寺・氏神の祭祀を行ったように,広い意味で氏人という語を用いることもある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「氏人」の解説

氏人
うじびと

氏を構成する人。古くは氏々人・氏氏名名人といわれ,世襲の職掌をもって朝廷に奉仕する人を意味した。氏人の称は奈良時代以後にみられ,平安時代にはおもに氏神の祭にあずかる範囲の人々をいい,さらには神職をさすようにもなった。中世以降の鎮守すなわち氏神を祭る集団は氏人ではなく氏子(うじこ)という。

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旺文社日本史事典 三訂版 「氏人」の解説

氏人
うじびと

古代,氏の一般構成員。

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世界大百科事典(旧版)内の氏人の言及

【氏子】より

…こんにち神社神道では信者に相当する総称として〈氏子〉を用いるが,狭意には各神社の慣習的な祭祀圏を〈氏子場〉ないし氏子区域と称し,その圏内の居住者を〈氏子〉,圏外からの信者を〈崇敬者〉と呼ぶ。本来,氏神と氏子の関係は古代社会における氏族集団の成員(氏人(うじびと))とその守護神(氏の神)に由来し,中世以来の氏族制社会の崩壊と郷村制社会の成立発展に即してその意味内容が変化したものである。文献上,氏族祭祀は《続日本紀》和銅7年(714)2月の条に初見があり,大倭忌寸(やまとのいみき)が〈氏上〉(族長)として神祭を命ぜられているが,記紀神話その他の古典からして,少なくとも古墳時代以来の氏族祭祀は推定できる。…

※「氏人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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