毛顎動物
もうがくどうぶつ
動物分類学上、一門Chaetognathaを構成する動物群。ヤムシ類で代表される海洋プランクトンである。毛顎動物という分類群の名称は、摂餌(せつじ)器官である顎毛に由来するもので、ドイツの動物学者ロイカルトが名づけたものである。全世界の海から約70種、日本近海からは約30種が記録されており、種数の少ない動物門の一つである。この動物群が学問的に知られるようになったのは1769年で、それ以来、現在に至るまでこの動物群(門)の系統的位置には多くの研究者が関心をもち、解剖、発生、組織学的な研究を通して近縁と考えられる分類群との比較を行ってきたが、その系統的位置について結論はまだ得られていない。
[永澤祥子]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
毛顎動物
もうがくどうぶつ
Chaetognatha; arrow-worm
毛顎動物門に属する動物の総称で,一般にヤムシ類と呼ばれる。体は長さ数 mmから 2cm内外で細長く,左右相称の体制をもち,頭,胴,尾の3部から成り,内部は横隔膜で区切られた3つの体腔になっている。頭部に1対の眼点とよく発達した顎毛をもち,顎毛を使って動物性プランクトンを捕食する。体側には1~2対の水平の鰭と,尾部末端に三角形状の尾鰭が1個ある。消化器系は単純で,口から続く腸は体を直走し,肛門が胴の後端に開口している。雌雄同体。特別な幼生型をもたず,直接発生をする。すべて海産で,ほとんどが浮遊生活をしており,海産プランクトンとして重要である。世界に 50種ほどが知られている。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
もうがく‐どうぶつ【毛顎動物】
〘名〙 動物の一門。体は細長い円筒形で、
体長〇・五~七センチメートル。
無色透明。頭・胴・尾の三部からなり、
真体腔は
隔膜によって三分されている。頭部
背面に一対の目があり、
側方には一〇本内外のこの動物特有の
キチン質のかたい顎毛があり、これで餌をつかまえてのみこむ。雌雄同体。胴の
両側には一~二対の鰭
(ひれ)が、尾端には一個の尾鰭がある。体の筋肉がよく発達していて、すばやく直進するのでヤムシと呼んでいる。重要な海産プランクトンの一つ。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「毛顎動物」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
もうがくどうぶつ【毛顎動物 Chaetognatha】
無脊椎動物の1動物門。ヤムシarrow wormと呼ばれる動物群で海産のプランクトンとして出現する。体長は,1~4cmくらいで細長く,頭,胴,尾の3部に分かれる。胴部から尾部にかけて1~2対の側びれがあり,尾の後端にも三角形の尾びれが水平についている。頭部の背面に1対の眼点があり,腹面に口が開く。またキチン質の顎毛が左右に7~13本あって先端が内側に曲がり,これで動物性のプランクトンをはさんで口へ運ぶ。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
世界大百科事典内の毛顎動物の言及
【動物】より
…骨格ができる場合は,生きている硬い組織で形成された内骨格で,外骨格はない。(A)血管系がないもの ヤムシ類約110種よりなる〈毛顎動物門〉は,体が左右相称で頭部,胴部,尾部の3部からなり,神経系は腹側にあり,呼吸器,排出器がない。胚の原口の位置に成体の肛門があるが,発生は触手動物に似ている。…
【ヤムシ(矢虫)】より
…毛顎動物門に属する無脊椎動物の総称(イラスト),またはそのうちの1種を指す。ヤムシ類はすべて海中で浮遊生活する。…
※「毛顎動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報